目次
- メンタルケアには4つの種類がある
- ラインケアの役割や職場のストレスの要因は?
- 心理的安全性を高める方法と意外と知らないストレスの基本
2021.08.06
新型コロナウイルスの流行により、人との接触が大きく抑えられることになった昨今。リモートワークが長期化しているなかで、企業はより一層、従業員へのメンタルヘルス対策が求められるようになりました。
そんな状況下で「メンタルヘルスを意識した職場環境の作り方を知りたい」「部下がストレスで悩んでしまっていないか不安」という人事担当者や管理職の方も少なくないのでは?
株式会社カイラボ代表取締役の井上洋市朗先生は、若手社員定着率向上支援や管理職・OJT担当者向け研修に携わる、メンタルヘルスケアのプロフェッショナルです。早期離職を防止し、人材を育て上げる能力を高めるため、知っておくべきメンタルヘルスケアの基本を本記事で押さえましょう!
メンタルヘルスケアには「リスクの回避」という目的もありました。
先生は生じうるリスクとして以下の例を提示します。
・訴訟リスク
・人手不足リスク
・評判低下のリスク(不買運動、採用への影響など)
「メンタルヘルス対策、何から始めればいいの?」基礎から学べる研修プラン
精神障害の労災請求件数は平成27年度の1515件から右肩上がりに増加し、令和元年度には2060件に達しています。これだけ仕事を原因として精神障害を訴える人が増えているということは、社員のメンタルにおけるリスクが時代とともに高まっているということでもあります。
では、ラインケアはプレゼンティズム、アブセンティズムや各種リスクに対処するにあたってどのような役割を発揮するのでしょうか?
先生はそのポイントを4つにまとめます。
・早期発見・早期対処
・部下からの相談対応
・職場の現状把握・改善
・職場復帰のサポート
この中でも特にやってほしいこととして先生は以下の2つをピックアップしました。
・メンタルダウンの未然防止
・部下の不調の早期発見
メンタルダウンの未然防止ですべきこととして筆頭に挙げられるのが「相談しやすい環境づくり」です。あなたの職場は、そもそも上司や人事に相談しにくい環境になっていませんか? その点を顧みたうえで職場のストレス要因低減に取り組むことが重要です。職場のストレスは「NIOSH職業性ストレスモデル」において9種類に分類されます。
1.職場環境
2.役割上の葛藤、不明瞭さ
3.人間関係、対人責任制
4.仕事のコントロール
5.仕事の量的負荷と変動制
6.仕事の将来性不安
7.仕事の要求に対する認識
8.不十分な技術活用
9.交代制勤務
仕事の性質に左右される「9.交代制勤務」を除いて、「1~8番はおそらく多くの職場が該当するんじゃないかと思います」と先生。自分の職場であればどれが当てはまりそうか、ぜひ目星をつけてみてください。まずは、ストレス要因があるかもしれないという視点で職場を見直すことで、今まで見えていなかった問題がきっと見えてくるはずです。
ちなみにチューリッヒ生命が2018年に行った「ビジネスパーソンが抱えるストレスに関する調査」では仕事のストレス要因ランキングは以下の表の通りでした。
人間関係がトップ2となっています。ほかの調査でも人間関係は大きなウェイトを占めがちだと井上先生は話します。あくまで平均ではありますが、こういった統計も参考にしながら職場環境を振り返りましょう。
先生はここで一つのキーワードを伝授しました。それは、「心理的安全性」。一人ひとりが恐怖や不安を感じることなく、安心して発言・行動できる状態を意味する言葉です。上司の意見に反対しても評価が落ちない、と感じられるならばその職場には一定の心理的安全性が確保されているといえるでしょう。心理的安全性の高い職場は相談がしやすく、「早期発見・早期対応」につながります。
心理的安全性を高める手段として、先生からは以下の例が示されました。
・仕事を実行の機会でなく、学習の機会と捉える
・自分が間違うということを認める
・好奇心を形にし、積極的に質問する
管理職や人事のみなさんができるのは、一人一人の違いを受容し、話に耳を傾けることです。メンタルの問題の相談内容は、相談者自身も具体的に話せないということも多いと井上先生は話します。そんなときも難色を示さず、認めて受け止めることが心理的安全性につながるのです。
ここで基本に立ち返って「そもそもストレスって何なのか」について考えてみましょう。
「ストレスはない方が良い」と考えている方はいませんか? ヤーキーズ=ドットソンの法則では、ストレス/不安が適切なレベルにあるとき、生産性や効率が高まるとされています。
例えば納期はストレスを生じさせますが、納期がなければ仕事はなかなか進まないということには多くの方が首肯するでしょう。また、うれしい出来事もストレスとなりえます。例えば、社会再適応評価尺度では結婚は失業・解雇以上のストレス値となっているのです。
ストレスは悪者ではなく、“上手に付き合うことで味方にもなってくれる相手”だということを胸に刻んでおきましょう。
本記事で紹介する井上先生の授業の内容は以上です。メンタルケアの基本についてしっかりと押さえられましたか? 実際の授業はまだまだ続きます。気になる方はぜひ、録画授業を視聴してみてください。
文=宮田文机
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管理職が行うメンタルヘルスケアを「ラインケア」といいます。まずはその目的と必要性といった基本知識を仕入れましょう。
「職場には4種類のメンタルケアがあるといわれているんです」と井上先生は以下のスライドを呼び出しました。
「セルフケア」「ラインケア」「事業場内産業保健スタッフによるケア」「事業外資源によるケア」。それぞれの違いは関わる人物で、本日テーマとなるのは「管理職が職場や部下に対して行う」ラインケアです。
「では、そもそもなぜメンタルヘルスケアを行うのでしょうか」と井上先生は問題提起し、以下の2つの目的を提示します。
・生産性の維持低下防止
・リスク回避
仕事の生産性を下げる要因には「プレゼンティズム」「アブセンティズム」の2つが存在します。前者は会社に出社し仕事に従事しつつも健康の問題を抱えている状態。この状態では、本人のパフォーマンスを100%発揮できません。後者は仕事を休業している状態です。
「よくメンタルヘルスの問題というと、アブセンティズムが思い浮かべられることが多い」と井上先生。しかし、昨今プレゼンティズムへの注目が高まってきているそうです。
そして、プレゼンティズムの問題は以下の10個に分類されています。
(1)アレルギー
(2)関節炎
(3)喘息
(4)首や腰の痛み
(5)呼吸系の疾患
(6)うつ
(7)糖尿病
(8)偏頭痛
(9)循環器系疾患
(10)胃腸の疾患
日本人はプレゼンティズムを抱えながら仕事をしている人も多いと井上先生は語ります。だからこそ、管理者側が意識してケアしていく必要があるということですね。