目次
- 人間はある働きかけには自動反応してしまう性質がある
- カチッサー効果が発動する条件とは?
- 返報性をビジネスで活かす具体例
2020.07.27
さまざまな領域のプロフェッショナルが、皆さんにおすすめの本を紹介する「いまこそ読みたい書籍」シリーズ。
今回は一般社団法人日本マインドリーディング協会理事の岸正龍先生が、こころの動きを解き明かす一冊を解説します。
本書で取り上げられるカチッサー効果のボタンは、6つあります。
1、返報性
2、希少性
3、権威
4、コミットメントと一貫性
5、好意
6、社会的証明
この6つのきっかけを与えられると、ひとは無意識に行動してしまうということです。本書はこの6つをそれぞれの章で解説しているので、一冊読むのが難しい方は、自分の気になる章だけ読むこともできます。
今回の授業では、ひとつめの「返報性」について紹介します。返報性とは、受け取ったものは返さなければならないと感じる性質のことです。
具体的な説明のために、本書ではデニス・リーガン博士のある実験が挙げられています。実験では、美術鑑賞中の被験者に対し、同行者が飲み物を差し入れした場合とそうでない場合の2パターンを検証します。
美術鑑賞後、被験者に『アルバイトである商品を売っているので買ってほしい』とお願いすると、飲み物を差し入れした場合のほうが、この商品を買う確率が格段に上がったそうです。しかも、その金額は差し入れされた飲み物よりも高額でも同じく、かつ差し入れした人物への好意は購入意欲と関連性がなかったということです。
つまり、人は何かをもらった時点でカチッサーが発動し、その後お願いされたらやらなければ、と感じてしまうのです。返報性は『受けた恩は返したくなる性質』とも言い換えられます。
それでは、独学をしたことを定着するためにはどんなことをすればいいでしょうか。
返報性は自動反応であり、返報性のない人間はいません。逆に言えば、返報性を利用される可能性もあるということです。
「何かをすれば必ず返ってくるだろう」と思いながら行動すると、相手には必要以上のプレッシャーを感じさせるかもしれません。また、受け取り手の場合、「返さなければ」という気持ちを過度に感じるのならば、その施しを断るのも一つの手です。
返報性に限らず注意すべきポイントは、相手のために何ができるかを前提とした行動を考えることです。
ビジネスシーンで返報性はどのように活用されているのでしょうか。マーケティング手法としては、商品の無料提供や試食などが効果的です。
無料で何かをもらったという感覚があると、人はその商品を買わなければという返報性が発動するからです。これは商品だけでなく、無償のアドバイスなども同じ効果が期待できます。
もう一つ、返報性から生まれる「ドア・イン・ザ・フェイス」という効果があります。はじめに少し難しい要求を提案し、そのあとに前者より容易な要求を出すと、その要求が承諾される確率が高くなる効果を指します。
これは「譲歩してくれた」と相手に感じさせることで、返報性を引き出すテクニックです。商談や残業を頼むときなどあらゆるシーンで、少しだけ無理そうな条件を先に提示してみると、高い確率で承諾してほしい条件をのんでもらえるでしょう。
実際の授業では、このほかに岸田先生が人生で影響を受けた書籍や、これから読みたい書籍についても触れています。また、受講者の皆さんが気になる心理学の本についての質問コーナーもあり、心理学に関する本を読みたくなるきっかけに富んだ授業となっています。
さまざまな先生をお招きし、おすすめの本について解説していただく『いまこそ読みたい「この書籍」』シリーズ。今こそ読書に専念したい、新しい知識を身につけたいという方は、ぜひチェックしてみてください。
文=宿木雪樹
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『影響力の武器』は、出版本国アメリカではすでに第5版まで増版されているベストセラーです。本書にはビジネスシーンで活用できるさまざまな知恵が詰まっていますので、本書の魅力を一部紹介したいと思います。
『影響力の武器』では、冒頭でカチッサー効果について語られています。カチッサー効果とは、ある働きかけがあると、深く考えることなく行動を起こしてしまう心理現象を指します。これは、人種や年齢などの個体差を問わず、誰もが持つ性質です。
テープレコーダーのボタンを押すと必ず流れるホワイトノイズのように、ひとは自分の意志と関係なく行動してしまう性質があります。この事実は恐ろしいことであり、しっかり理解すべきところです。
というのも、このコロナ禍では特に、このカチッサー効果をうまく利用して自身をコントロールする力が必要とされるからです。また、この学びは、カチッサー効果を悪用したサービスや情報から自分を守ることにもつながります。