目次
- 誰もが何かのアンバサダー、誰もが誰かのアンバサダー
- 記録ではなく記憶に残るエンゲージメントを
- 理想的なアンバサダーマーケティングの事例
2020.09.04
みなさんは「アンバサダーマーケティング」という言葉を見聞きしたことはありますか?
現代のビジネスでは自社製品・サービスを愛するファンをいかに育て、協力してもらえるかが非常に重要なポイントとなっています。
知らないもしくは知っていても実践できていない企業は、顧客とのコミュニケーションに今一度向き合った方がいいかもしれません。
そんなアンバサダーマーケティングについて深い知見を持つのがアジャイルメディア・ネットワークエバンジェリスト/マーケティング部部長の出口潤先生。ECzineにて「SNS時代に知っておきたい、アンバサダー的アプローチのススメ」を連載するなどアンバサダーマーケティングの重要性を広め続ける第一人者です。
手法論が先行しがちな本テーマについて、「アンバサダーマーケティングはなぜ大切なのか?」という基本から豊富な事例まで紹介された授業「ファンに愛され事業を伸ばす、アンバサダーマーケティングってどうすればいいの?」のハイライトをお届けします。
つづいて授業で取り上げられたのが「では、どうやってファンに共感を生み、活性化するのか?」という問題です。
まずいえるのが、アンバサダーマーケティングにおいて「共感が最も重要であり、すべて」だということ。SNSでの情報拡散の基準において1位が「内容に共感したかどうか」であり、その点はすべての年代に共通しているということが総務省の資料で報告されています。
また、自然投稿されたクチコミと定型文のキャンペーン投稿では周囲の反応が全く違うというデータもあります。
要するに、「記録(単なる拡散)ではなく、記憶に残るエンゲージメントが大事」と出口先生は主張します。
どう心を動かすのか、と言い換えてもいいかもしれません。
そのためには企業やブランドが作ったストーリーではなくファン自身による体験に基づいた物語を拡散してもらうことが重要になります。
そこで取り組むべきこととして出口先生が取り上げるのが以下の3ポイント。
1.情緒的価値(ファンがブランドを好きな理由)や活性化のヒントを見つける
2.自然投稿のクチコミを増やしていくための機会提供
3.ファンの力を多面的に活用し、マーケテイングパワーに転換する
上記の3点を意識することでマーケティング活動も以下の通り、大きく変化していきます。
1.企業発信から生活者発信へ
2.スクラッチ型からストック型へ
3.ターゲットからパートナーへ
1つ目は情報伝播の形、2つ目はマーケティングにおけるミッション、3つ目は顧客の立ち位置の変化を表しています。より詳しく知りたい方はぜひ実際の動画をご覧になってみてください。
最後に取り上げられたのは実際のアンバサダーマーケティングの成功事例です。
「HTIGアンバサダープロジェクトをご存じですか?」と先生。
これは2019年に新たに立ち上げられた阪神タイガースの女性ファン向けファッションブランドです。既存顧客がいない状態でファンをみつけ、つながるためにまずは「阪神タイガースが好きだけど、程よい塩梅」「ファッションが好き、センスも良い」などアンバサダーの候補がSNSを通して絞り込まれたといいます。
そして彼女らに公式アカウントからDMを送り、アンバサダーとなることを打診しました。商品を提供しイベントに招待すれば、アンバサダーは高い熱量でSNSに投稿・拡散してくれます。その活動は新聞などメディアに取り上げられ、さらにアンバサダーの熱量を高めることにつながりました。
このようにして好循環が生まれ、HTIGは理想的なファンを増やすことに成功したのです。
「ファンの好きを加速することで、大きな力に変わった」好事例といえるでしょう。
アンバサダーマーケティングの基本について理解できたでしょうか? 授業ではほかにも「アンバサダーの深度の深め方」や「理想的なアンバサダーサイクル」などの話題が取り上げられました。
『Bridge the GAP -あなたのギャップを埋めるビジネス・テクノロジー番組- 第25回 ファンに愛されて事業を伸ばす、アンバサダーマーケティングってどうすればいいの?』http://schoo.jp/class/7049/room
また、この授業は『Bridge the GAP』シリーズの一環として行われており、シリーズにはほかにも「カスタマーサクセス」や「一人前のプロダクトマネージャーとは」などマーケターにとって有益な授業が満載です。気になった方はぜひSchoo本体サイトにアクセスしてみてください!
『第28回 カスタマーサクセスって何する仕事なの?』 http://schoo.jp/class/7152/room
『第29回 一人前のプロダクトマネージャーにどうすればなれる?』http://schoo.jp/class/7153/room
文=宮田文机
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アンバサダーマーケティングが重要になっている背景について出口先生は2つの事実をもとに説明します。
一つは人口の減少。顧客となりうる人の絶対数が減る中で、我々にできるのはあえて自社の商品・サービスを選んでもらうための工夫です。
もう一つは情報環境の変化。インターネットの発達により情報をいくらでも取得できる現代では、広告などで生活者に情報を届けるだけでは不十分です。さらに一歩踏み込んでもらわなければ購買につながることは期待できません。
そこで重要なのが、顧客のなかでも特に自社を愛してくれているファンを見つけ、アンバサダーとしてプッシュしてもらうアンバサダーマーケティングなのです。
実際、信頼されている情報源トップ2は「知人のおススメ(クチコミ)」「消費者のオンラインレビュー」。つまり、商品を実際に使っている人の声が飛びぬけて消費者に重視されているのです。なんと口コミから情報を得ることで行動(購入)に移る割合は広告の4倍になるとのこと。
アンバサダーマーケティングに多くの人が着目する理由がわかります。
「アンバサダーの定義はその『ファン度・熱量』の高さにある」と出口先生。口コミ効果というと影響力の大きいインフルエンサーをついつい思い浮かべてしまいがちですが、嘘偽りなく自社を愛してくれているアンバサダーの言葉は考えている以上に大きな力を持つものなのです。
例えば、と出口先生が話し始めたのが趣味で取り組んでいるボルダリングをFacebookで発信したときのこと。先生の投稿を見た友人が「ボルダリング始めました!」と発信し、さらにその友人(先生にとっては他人)が「最近してないのでやりたいなぁ」と反応を返しました。
出口先生の投稿をきっかけに1人の新たなファンが産まれ、さらにはもう1人の休眠顧客の復活にまでつながったのです。
このように、アンバサダーの口コミ効果はその友人だけにとどまりません。はっきりと目には留まらなくてもひそかに大勢が影響を与えられている場合もあるのです。
「誰もが何かのアンバサダー、誰もが誰かのアンバサダーとなりうる」と先生はいいます。