目次
- 日本の実質GDP成長率、下がると思いきや……?
- 自民党総裁選について
- 日本経済にも影響する⁉ FRBテーパリングの可能性
2021.09.06
新型コロナウイルスの影響で、経済的な不安も大きくなりつつある2021年夏。そんな中、日本では東京オリンピック・パラリンピックが開催に伴う経済効果や損失に関するさまざまな意見がメディアやSNSを中心に飛び交っています。
今回の「田中秀臣の最新経済ニュース(2021年8月号 第2回)』では、現在の日本経済の状況と今後について触れられました。講師は、経済学者の田中秀臣先生です。
メディアやSNSを見ても日本経済に対する不安や不満の吐露が多く、現状がわかりにくいと感じる人も多いはず。きっとその悩み、は田中先生の講義を聞くことで解消されます。ここではそんな授業の一部をご紹介。
そんな経済対策を打ち出せる人を選ぶのが、現代の日本政治のタクトを振るう自民党総裁選です。2021年9月の告示を前に、現在数名の議員が出馬を表明しました。
本授業の放送日、8月27日の時点では、菅総理、岸田文雄氏、高市早苗氏、下村博文氏が出馬を表明しています(後に下村氏は出馬断念)。ただ、先生は「これからも数人増えるのではないか」と予想。
ここで気になるのは、先生が次期総裁として期待している人は誰か?という点でしょう。先生が重点をおいたのは「誰がどのような経済対策を打ち出すのか」です。 積極的な経済対策や金融緩和政策を打ち出そうとしているのは誰なのか。一方で、緊縮財政政策を打ち出そうとしているのは誰なのか。授業内ではその点について詳しく解説されていきます。
自民党総裁選は、今後の日本経済や私たちの暮らしを大きく変えるかもしれない重要な行事とも言えます。先生が誰に期待しているのかを知るのと同時に、先生の考えや意見を参考に一度考えてみるのも良いかもしれませんね。
授業放送の1時間後、アメリカではジャクソンホール会議が開かれました。この会議にはFRB(連邦準備理事会)のパウエル議長を中心に、中央銀行関係者や多くの経済学者が参加し、世界経済や金融政策について議論されます。通例であればワイオミング州のジャクソンホールにて催されますが、今年は新型コロナウイルスの影響により、オンライン開催とのこと。
先生も「経済学者として本会議には注目している」と語ります。なぜなら、いまのアメリカの経済政策が積極的な経済政策からテーパリング(段階的金融緩和縮小)の方向に修正される可能性があるためだそうです。
上のスライドにもあるように、現在アメリカの2021年7月時点の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比5.4%も上昇しています。また、価格変動の激しいエネルギーや生鮮食料品を除いたコア指数も4.3%と非常に高い数値を出しているのです。
先生曰く「これは前年度のCPIが落ち込んでいたことも関係しているものの、バイデン政権がコロナ禍でも積極的な経済政策を続けてきたことも要因」とのこと。ちなみにバイデン政権の経済政策は、失業率も大幅に低下させたそうです。
「ただ一方で、CPIが上昇したことで『そろそろ金融緩和政策を止めてテーパリングするべき』という声もジャクソンホール会議を前にあがっている」と語る先生。
当然、この会議でアメリカの経済政策の方向性が変われば、日本だけでなく世界全体の経済や株価に影響が及ぶはず(後に、ジャクソンホール会議でパウエル議長が「年内の量的緩和縮小開始」を示唆したことが明らかに)。金融緩和政策を進める派と引き締め派、正反対の意見が両立するなかでパウエル議長が述べた考えとは?本授業で概要を学んだ上で確認すると、より理解が深まるはずです!
授業では他にも、「8月には、都心の新型コロナウイルス感染者数は1日1万人を超える」と試算した西浦博教授の件や、緊急事態宣言の効果について触れられます。メディアやSNSでは「緊急事態宣言など意味がない!」という声が多いのが現状ですが、実際はどうなのでしょうか?そして先生はどのように考えているのでしょうか?詳細は実際の授業で確かめてみてください!
文=トヤカン
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先日、日本の第二四半期・実質GDP成長率の速報が出ました。先生も授業の最初に、この話題を取り上げます。
上のスライドでは、赤い折れ線グラフが日本の実質GDP成長率の推移を表しています。これを見ると、第1回目の緊急事態宣言が発令された2020年の4月から6月の実質GDP成長率が大幅に減少しており、いかに経済が止まったのかがわかります。
では2021年の4月から6月はどうだったのでしょうか?結果は、第一四半期(2021年1月から3月)と比べると1.3%上昇しています。先生いわく「2021年は、今のところ東京都などはほとんどが緊急事態宣言期間だ。にもかかわらず成長率がプラスになるのは驚き。予想よりは良いのでは」とのこと。
ただこの成長度は決して喜べることではないそうです。その理由を先生は、日本経済新聞編集委員・滝田洋一さんのコメントを用いながら、以下のように語ります。
「たとえGDP成長率が上昇していても、実質GDPはコロナ前の状態に近づいただけなんですよ。もともとGDPは消費税増税によって落ち込んでいて、そこにコロナの影響が重なってもっと落ち込んだんです。なのでコロナ前に近づいても景気が良くなったとは言えません。もし実質GDPの推移を比較するのであれば、増税前と比べてそこに近づけるような政策を打たなければいけないでしょう」
では今後、日本経済の不況を解消するにはどうすれば良いのでしょうか。先生の考えは大規模な経済対策を導入するというもの。「金額にして最低でも約30兆円規模の経済対策が必要」と語ります。