目次
- 製品やサービスが“使いづらかった”体験はありますか?
- UXデザインの使命とは?
- 「User」と「Experience」について深堀りすると……
2022.04.22
企業経営におけるデザインの重要性が浸透するにつれて、UXという言葉も浸透してきました。しかし、UXとは何なのかについてはっきりと答えられる方はまだまだ多くはないはずです。
そこでおすすめしたいのが、サービスデザイナー/Voice UXコンサルタントの松葉有香先生が講師として登壇するSchooの授業シリーズ『UX入門-ユーザー体験をゼロから学び考える』です。さまざまな業界の新規事業開発・既存事業の改善に携わり、UXデザイン研修講師として400名以上の受講生を相手にしてきた松葉先生の授業は誰でも深く・わかりやすくUXについて理解できるものとなっています。
この記事では、「UXの意味を理解しイメージできるようになるとともに身近なUXについて語れるようになる」ことをゴールに見据える第1回の授業『そもそも「UX」とは何か―イメージと概念を理解し語るー』のハイライトをお届けします!
さて、UXデザインにはどのような使命があるのでしょうか?
UXデザインの目的を知るにあたって考えるべきなのが「ユーザーがどう変化するとうれしいのか」ということ。ユーザーに「良い変化」を及ぼすためのターニングポイントは「知覚」と「感情」のプロセスの間にあると松葉先生は語ります。
行動し、知覚するまでにユーザーの価値判断の余地はありません。しかし、感情にはポジティブ/ネガティブという対の概念が存在します。もちろん、ユーザーにはポジティブな感情を覚えてほしいですよね?
そこでUXデザインが力を発揮することになります。
すなわち、UXデザインの使命は「アウトプットとの関わりを通してユーザーにポジティブな感情を与えること」と定義できるということです。
「もう使いたくない」ではなく「もっと使いたい」と思ってもらえるUXデザインを行いたいですね。
「ユーザーの変化は数値によって測れたりするんだろうか?」というオンライン受講生の疑問に先生は「測れるものもあるし測れないものもある」と回答。例えばアウトプットがスマホのアプリであればタップ化された回数、アンケートの回答内容からユーザーの変化を測ることが可能です。
さて、UXの最初の一文字、「User」という言葉についてもっと深掘りしていきましょう。Userはその深度によって「知らない」「知ってる」「興味あり」「初回利用」「反復利用」「常連」などさまざまなパターンに分類できると松葉先生は指摘します。
また、「アプリ」「ECサイト」「業務システム」「動画」「ファンクラブ」などアウトプットの形式をもとにユーザーの立ち位置を分けることも可能だということです。そして、深度の最も浅いところから深いところまで、また、すべてのアウトプットの形式をUserという言葉はカバーしていると先生は話します。
また、以下のようにアウトプットの形式によってUserの呼び方も異なると松葉先生。
・ECサイト→カスタマー
・業務システム→従業員
・動画→登録者/フォロワー
・ファンクラブ→会員/ファン
また、その呼び方に合わせてカスタマー(Customer)に関するUXをCX(Customer Experience)、従業員(Employee)に関するUXをEX(Employee Experience)と呼ぶこともあります。
ここまでの内容は、以下のようにまとめられました。
・ユーザー未満もユーザーに含む
・UXのUはユーザーだがアウトプットや関係性によって呼び方を変えてもかまわない
・CXやEXもUXと基本的には変わらない
続いてUXのX(Experience)についても詳しく見ていきましょう。ここで参照されたのが『UX白書』に記載されているUserのフェーズごとの体験の形を示す以下の図。
製品・サービスの利用前には体験を想像する予期的UX、利用中は体験を通して得られる一時的UX、利用後は内省により生まれるエピソード的UX、そして、利用時間全体で多種多様な利用期間を回想する累積的UXと各フェーズでUXはさまざまにカテゴライズされることがわかります。
「つまり体験というのは一時的なものではなく、事前に想像することや体験後に内省することまで含めて考える必要があるものです」と松葉先生。
Userと同じく、Experienceもより広いスコープで捉える必要がありそうですね!
ここまでで本記事でご紹介する授業の内容は以上です。後半の内容についてはぜひ、実際の授業動画でご確認ください。「UXとUIの違い」など気になるテーマについて、ここまでの内容を生かしつつわかりやすく解説されています!
文=宮田文机
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授業のスタートとともにリアルタイム受講生に問いかけられたのが以下の質問です。
・使った製品やサービスで「もう使いたくない」と思った経験はありますか? 経験のある人は、その経験や理由について教えてください。
受講生代表の徳田さんは音量を上げるボタンが〇、下げるボタンが×で表現されているスピーカーの利用に戸惑った実体験を語ります。通常、+・-で表現されることが多いUIを変えることでわかりにくくなってしまった事例と考えられるでしょう。
オンライン受講生からも以下のようにさまざまな“使いづらかった”体験の例が挙げられました。
・上から順番にボタンを押すしかない立ち食いそば屋の券売機
・解約のメニューがなかなか見つからないサービス
・ネット予約ができないサラダのサブスク
それでは、UXの定義から押さえていきましょう!
UXとはそもそも、「User Experience」の略。「ユーザーの体験を設計する」ことを意味します。そして、より専門的なISO9241-910における定義では、以下のように表現されるということです。
・UX(ユーザーエクスペリエンス)=製品、システム又はサービスの使用及び/または使用を想定したことによって生じる個人の知覚及び反応
この定義には3つの注釈がついており、それに合わせて、各要素を整理すると、以下のように各パートは言い換えられると先生は話します。
・製品、システム又はサービス→私たち作り手が届けるアウトプット
・使用及び/又は使用を想定したこと→アウトプットとの関わり
・個人の知覚及び反応→ユーザーの変化
「アウトプット」という表現は、UXの取り扱う対象が想定以上に広い範囲に及ぶことを表しています。そのアウトプットとの関わりは製品の使用前、使用中、使用後もこちらも幅広い時系列をカバーします。アウトプットとのかかわりによりユーザーには行動、知覚、感情、反応、状態、嗜好、信念といった変化が生じることになります。
そして、UXデザインは「アウトプットとの関わりで生じるユーザーの変化を設計すること」と定義することができます。