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2022.03.03

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考え方の異なる人同士が協働するために役立つ「コレクティブ・インパクト」とは?

考え方の異なる人同士が協働するために役立つ「コレクティブ・インパクト」とは?

チーム力がビジネスで大事なのは、誰もがうなずくところでしょう。しかし、立場も能力も違った人々が共同で作業するのは簡単なことではありません。そこで学びたいのが、協働的思考「コレクティブ・インパクト」です。

Schooの授業『立場を超えて未来をつくる協働の方法』では、「思いのある誰もが動き出せ、新しい仕事を生み出せる社会へ」をビジョンとして掲げる株式会社エンパブリック代表の広石拓司先生からコレクティブ・インパクトとは何なのか、どうすれば実践できるのかが約一時間で学べます。

本記事では、授業の一部を抜粋してお届けします!

目次

  • 起業では「一人で何でもできてしまう人」よりも「○○な人」が成功する
  • 人間関係の怒りの根本には「同じであってほしい期待」がある
  • 「目的志向」と「コレクティブ・インパクト」

 

 

起業では「一人で何でもできてしまう人」よりも「○○な人」が成功する

 

 

皆さんは、起業家として成功するのは以下のどちらのタイプの人だと思いますか?

 

A)一人で何でもできてしまう人

 

B)思いはあるけど、苦手がいっぱいな人
・事業計画を書いたことがない
・熱く語るが、まとまっていない
・世界に発信したいが、ウェブの技術がない

 

数多くの起業家の支援に携わってきた広石先生は「実は、3~5年経過してみると後者の人の方が事業を成長させられている場合も多い」と話します。

 

それはなぜなのでしょうか?

 

ひとりで何でもできる人は、裏を返せば何でも一人でやってしまいがちということです。そうすると事業は自分一人で完結してしまいがちに。一方、一人でできることが少ない人は、ほかの人の助けを借りる必要があります。

 

「新しい仕事は、関係から生まれる」と広石先生。事業を始めるとなるとお金(money capital)が最優先のようについつい考えてしまいますが、実はそれ以上に社会関係資本(social capital)が必要だと先生は話します。

 

社会関係資本は、企業・行政、地域内外の仲間、協働パートナー、顧客、ともに働く仲間などさまざまな形で存在することも押さえておきましょう。

 

 

 

みなさんは「ちっぽけな自分は、社会を変えるようなことはできない」と考えてはいませんか?

 

広石先生は「自分にできること」をしている人が、ともに関係しあうことで社会を変えるような大きな効果が生じると話します。そしてそのためにカギとなるのが、この授業のテーマ「コレクティブ・インパクト」なのです。

 


人間関係の怒りの根本には「同じであってほしい期待」がある

「そうはいっても人間関係は難しい」と感じている方も多いでしょう。実際、人が集まれば考えの食い違いや争い、船頭多くして船山に上る事態などが起こる可能性は生じます。

 

ここで人が相手に対して怒るのはどんなときなのか考えてみましょう。

 

・あのときこう言っただろう
・約束したのと違うだろう
・普通、そうはしないだろう

 

こういった怒りの感情を相手に対して覚えるとき、「気持ちは自分の前提との違いに向いている」と先生は指摘します。すなわち、ここにあるのは相手に「同じであってほしい期待」です。例えば以下のような怒り・困惑の思いを心中に抱いたことがある人もいるでしょう。

 

・訳が分からない

 

同じコップの水を見ても「水が3割しか入っていない」と感じる人もいれば、「水が3割も入っている」と捉える人もいます。このように、経験、期待、理想(文脈)の違いによって、同じものを見ていても違った意見・認識が生まれるということです。

 

同じ集団で長く一緒に過ごしてきた人は文脈の共有度が高く分かり合える可能性が高いですよね。それに対し、自分(たち)とは異なった文脈を持つ人を社会学ではStranger(ストレンジャー)と呼びます。

 

 

 

自分にとってのストレンジャーの意見は理解できず、それぞれが「この地域(国)を良くしたい」といったように「正義」を持っていても、ときに対立してしまいます。

 

それでも「同じじゃない人が組む必要がある」と広石先生。「群盲象を評す」という言葉が示すように、人は自分の手の届く(=わかりやすい)情報を選ぶことで大きな勘違いをしてしまう生き物です。もちろん似た分かりやすさを共有する人同士は話が通じるため、心地よく過ごせるでしょう。しかし、世界は複雑です。多数の要素が相互影響しあっており、バラバラに取り扱うことはできません。

 

だからこそ、ストレンジャー同士の協働は世界を良くしていくために不可欠です。先生が協働を促進するための前提として掲げるのが「みんな違う人」だと認めること。「一つの思いで動く」「わかってもらえる」といった理想を実現することは基本的には無理と割り切り、かといって各々が勝手気ままにバラバラに行動するのではなくともに働けている──これが“コレクティブ(Collective)に協働できている”状態なのです。


「目的志向」と「コレクティブ・インパクト」

同じになったり、仲良くなったりしなくても人が協働できるのはどんなときでしょうか?

 

それは、人々が同じ方向を向いているときです。

 

そのような状態を「目的志向」といいます。人がお互いの様子や感情を気にしている「関係志向」と対比される関係にあるということも理解しておいてください。

 

ライバル関係にある他者と争ってしまうのも、関係志向の考え方にとらわれているから。「相手も同じ目的を共有している」と考え方を変えれば、ライバルはそのときから仲間になるのです。

 

 

 

ここで改めてコレクティブ(Collective)という言葉の意味を考えてみましょう。コレクティブはコレクション(Collection)の形容詞系。コレクションには、以下のような特徴がありますよね。

 

・複数の種類が集まっている
・共通テーマがある
・全部同じではつまらない

 

コレクティブとは、違うものがコレクションのように共通テーマを持って集められた状態であり、だからこそそれぞれの個性がわかり、全体としての意味が生まれます。そして、コレクションが充実すればその価値が高まるように、コレクティブなチームもそれぞれの人材がバラバラだったとき以上にパワーが発揮できるようになります。

 

コレクティブ・インパクトは「社会の複雑な問題の解決に向けて多様な分野・セクター・立場の人たちが、それぞれが自分の活動に注力しながら、似た活動で競合したり、孤立したりしないで、対話を続けながら問題解決に取り組む」ことです。また、Individual(自立・自律)だけど、isolated(孤立)ではない関係性とも言い換えられるとのこと。

 

 

 

2011年米スタンフォード大学で生まれたこの概念をぜひ、今日からの仕事や社会活動に生かしてみてはいかがでしょうか。

 

文=宮田文机

今回取り上げたSchooの授業はこちら!
『立場を超えて未来をつくる協働の方法』

 

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