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2021.05.18

interview

デザイナーはダサさと戦っている──。元任天堂デザイナー・前田高志さんが考えるデザイン

デザイナーはダサさと戦っている──。元任天堂デザイナー・前田高志さんが考えるデザイン

勝てるデザイン

目次

  • 「ダサい」について考える
  • デザインにセンスは必要なのか?
  • 前田先生の考える「デザイン」とは
「私にはセンスがない…」と諦めていませんか?
センスは生まれ持ったものではなく、磨いていくもの。

今回はSchooに何度もご登壇いただいている、デザイナーの前田高志先生にいいデザインを生み出すための極意をワークショップ型で教えていただきました。
みなさんには、先生と受講生の方とのやりとりも含めて、授業で紹介されたデザインに対する考え方をお伝えします。

前田 高志 先生

株式会社NASU 代表取締役/前田デザイン室主宰/デザイナー

徳田 葵

受講生代表

学びノート

SESSION「ダサい」について考える

20

前田先生、今回はどのようなテーマの授業でしょうか?

2903

まず、みなさんが考える「ダサいTシャツ」ってどんなものなのかお聞きしたいと思います。これは正解があるわけではないので、みなさんがそれぞれダサいと思うもので構いません。

20

その人の好みや価値観を自由に取り入れて構わないということですね。みなさん、ぜひ考えてみてください。「それは負けるダサイン」というコメントが来ています。

2903

あえてダサいものを狙うこともあるので、目的が「ダサい」であれば勝てるデザインだと思います。意図せずダサくなってしまったデザインは「負けるデザイン」ですね。

20

なるほど。目的によって変わってくるのですね。「着たくないTシャツですかね」とのコメントも来ています。「着たくない」というのはそういうものを着たくないのか、もう少し解像度を上げてみると見えてくるものがあるかもしれませんね。

2903

そうですね。そこを掘り下げていくと自分が何をダサいと思うのか、わかってくると思います。

20

あとは「訳の分からない英文プリント。」という意見もあります。

2903

懐かしいやつですね(笑)一時期流行りましたね。

20

「その人に似合っていなくてサイズが合っていないもの」というコメントもありますね。たしかに大きすぎてもピタッとしすぎてもダサくなってしまいますよね。

2903

最近はダボっと着るためのデザインもありますよね。服のサイズは大きくして裾を短くしたりとか。普通にサイズが大きいだけだとダサいですよね。

2903

「無意識に中二病感を出したり、イキった感じをかもしているTシャツ。」というのはすごくわかります(笑)

20

それはデザインした本人にとってはかっこいいということですよね?

2903

そうですね。それがかっこいいという人もいますし。でもその人も実は、もっとかっこいいデザインを知らないだけの可能性もあります。

20

知らないだけだともったいないですね。

2903

中二病っぽいデザインとか、小学生が着ていそうなデザインの服って、クオリティが結構左右させると思います。そういうデザインでもクオリティさえ高ければ、「ひょっとしてこれ、イケてるんじゃないの?」という段階まで持っていけると思います。「ダサい」をその人の好みに左右されずに定義するとすれば、クオリティでカバーできるのではないかと思いますね。

2903

例えば龍の絵のTシャツでも絵のクオリティが低ければかっこ悪いですが、絵のクオリティが高ければかっこいいわけですよね。

20

なるほど。絵の描き方にもよるということですね。

SESSIONデザインにセンスは必要なのか?

20

部屋のインテリアとか、同じような色でそろえて統一感を出すのがいいと聞いたことがあります。そうすると「ダサくはならない」ですよね。かといってイケてるのか、難しいですよね。

2903

「ダサくはならない」、いい言葉ですね。そもそもデザインにセンスは必要なのか?という話です。未だに「お仕事は何されているのですか?」と聞かれたときに、「デザイナーをやっています」と言うと、「センスいいんですね。」とよく言われます。

2903

「デザイナーにはセンスが絶対に必要なのだ」というイメージ、みなさんもあるかと思いますが、僕はそうではないと思っています。実はセンスより「ダサさ」と戦っているんです。

20

ダサさと戦っている!?

2903

「ダサいものはつくらない」という意識でやっています。目的に合ったものを目指すのがデザインだと思いますが、頭のどこかで「ダサくないかな?」と自問自答しています。

2903

いきなりセンスを求められてもしんどいじゃないですか。僕は「ダサいものをつくらない」という意志と戦っている方がどちらかというと多いので、まずはそこじゃないかと思います。

2903

それにはまず、「ダサい」を知ることでダサさを回避することが大切です。授業の冒頭でみなさんに「ダサい」について考えていただきました。「何がダメなデザインなのか」がわかっていないと、ダサさと戦うことはできないので、今回言語化していただきました。

20

「それって違和感をつぶしていくみたいな感じですか?」とご質問が来ています。

2903

そうです。違和感をつぶしていっていますね。僕はSchooさんで「鬼のデザインフィードバック」 https://schoo.jp/class/6813 という授業もさせていただいています。1回目は無料で観られるので観ていただければわかると思いますが、その授業では受講生の方が作ったデザインのデータを送ってもらい、僕がその場でフィードバックしています。

2903

それは全部違和感を感じたところをフィードバックしています。「なんかこれ嫌だな」「もっとこうしたら良くなるのではないか」という点に気づけるかどうかです。

2903

ここに気づけないということは、「知らない」ということです。例えば仕事で「こういうことをすれば良くなった」と実感した経験があれば、改善できますよね。こういう経験を積んでいる人は違和感に気づきやすいです。

2903

最初は何が良くて何が悪いのかはわからないですよね。経験を積むと、何がダサいデザインなのかわかるようになります。なので早く一人前になろうと思ったら、経験を積むのが一番です。

20

なるほど。とにかく何がダサいのか知ることが大事なんですね。受講生の方から、「ダサいと思うものと奇抜だと思うものの違いがわからないと思ってきました。」というコメントが来ていますね。奇抜だからいいというわけでもないと思うのですが、ダサいと奇抜の違いって何なのでしょうか?

2903

「ダサい」と「奇抜」の間に明確な差はなくて、グラデーションになっていると思います。それを細分化していくとわかるのではないでしょうか。

20

ありがとうございます。ぜひ細分化してみてください。

SESSION前田先生の考える「デザイン」とは

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「先生が感じる『これはセンスない』と思う一番のポイントは何でしょうか」とご質問が来ています。

2903

やっぱりクオリティですよね。クオリティも高いものと低いものは曖昧なのですが、「もっと良くなるのではないか」という要素があるとクオリティが低いと思います。色の選び方や線の選び方が「浅いな」と思うものですね。

20

一つ一つの色や線に、なぜこれを選んだのか説明できるかということでしょうか?

2903

そうですね。あとは量ですね。いろんな色の組み合わせがある中で、「あえてこの色にした」ということが成されているか否かということです。

20

なるほど。「『違和感に気づける=センス』なのでは?」というコメントも来ていますが、センスではなくどれだけデザインを見ているかということですよね?

2903

そうですね。「センス」という言葉も難しいですよね。「センス=違和感に気づける能力」は少し違う気がします。むしろ逆で、色んなものの中から一番いいものを選べることがセンスかなと思います。

2903

デザインってセンスのいいものをつくるものではなく、かっこいいものをつくるものでもなく、目的を達成するための拡大と選択肢なんです。デザインはデザイナーだけのものではありません。

2903

例えば、買い物をするときもいろんな選択肢がありますよね。今日Schooに来るときも、僕はどういう服で行けばいいか、いろんな選択肢がありますよね。「どういう自分に見られたいか」という目的があったら、それに向かって選択していきます。みんな毎日選択をし続けていると思います。僕はその行為自体がデザインだと思っています。

2903

なので「知る→言語化」によって選択肢を拡大していき、選択していくと目的を達成しやすくなります。デザインできるようになるにはそういうことが大切だと思います。

20

デザインを知って言語化していくことで経験を積むと選択肢が拡大していくのですね。ありがとうございます。

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デザインについてもっと詳しく学びたい方は、ぜひこちらもチェックしてくださいね!

『勝てるデザイン』著:前田高志さん
https://www.amazon.co.jp/dp/434403693X/ref=sr_1_1

2021年05月18日 公開

この授業の動画をSchooで観る

2021年03月12日 放送分
勝てるデザイン

勝てるデザイン

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