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2021.09.30

interview

Zoomはなぜ伸びているのか?誰でも簡単にできる決算情報の読み解き方

Zoomはなぜ伸びているのか?誰でも簡単にできる決算情報の読み解き方

企業研究の分析#1

目次

  • Zoomの分析からわかる決算情報の読み解き方
  • Skype、Google、appear in...。Zoomはなぜ、なぜ躍進を遂げたのか?
  • 決算書でみるべきポイント
  • Zoomの「資本効率の良さ」が決算書で明らかに
  • 新卒・転職希望者の有意義な活用方法は?
みなさんは企業の決算情報を詳しく見たことはありますか?「決算情報」と聞くと専門的な知識が必要なイメージがあり、なんとなく苦手意識を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回の授業では、「経済情報をシンプルにわかりやすく」をモットーとし、企業の決算情報をわかりやすく記事化している、株式会社ストレイナー代表取締役CEOの野添雄介さんにご登壇いただき、決算情報の読み解き方を教えていただきます。

今成長企業として有名なZoomの決算情報の分析をしながら、誰でも簡単に読み解くための視点を紹介していただきます。決算情報を読み解けるようになれば、就職や転職にも役立つこと間違いなしです。早速学んでいきましょう。

※本記事は2020年3月20日放送の「決算情報を読み解きながら学ぶ財務スキルー企業研究の分析#1の」の内容を再編集しています。

野添 雄介 先生

株式会社ストレイナー 代表取締役CEO

花海 志帆

受講生代表

学びノート

SESSIONZoomの分析からわかる決算情報の読み解き方

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このグラフはZoomの四半期の売上を表したものですが、すごく右肩上がりに伸びているのが特徴です。

Zoomはいわゆる「SaaS企業」といって、サブスクリプションモデルの企業向けサービスです。

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サブスクリプションのいいところは、定期的に課金されていくので売上が安定します。

普通の会社だとグラフがでこぼこしますが、このようにスムーズに上がっています。

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Zoomは四半期で売上が1.9億ドルなので日本円だと200億円くらいです。前年比で+78%とかなり成長率が大きいです。

しかも営業利益が1,515万ドルで黒字。ものすごく伸びているのに黒字ということなので、元々評価の高い会社と言えます。

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最近のリモートワークの推進や新型コロナウイルスの影響もあると思いますが、前から徐々に伸びていたのですね。

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そうですね。上場したのが去年(2019年)の4月なのでもうすぐ1年です。元々伸びていた頃に追い風が吹きました。

23

なるほど。どれくらいの会社が使っているのでしょうか?

2830

基本的には定期課金なので単価の話になりますが、Zoomが従業員10人以上の顧客数を開示していまして、これが8万社くらいです。

前年比で61%増えています。この顧客数自体がきれいに伸びているので、先ほどの売上もきれいに伸びた状態になっています。

23

このグラフは世界規模ですよね。

2830

そうです。アメリカが多いのですが、海外もすごく伸びているみたいですね。

SESSIONSkype、Google、appear in...。Zoomはなぜ、なぜ躍進を遂げたのか?

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受講生からご質問が来ています。

「Skypeがあったのに、なぜZoomが躍進したのでしょうか?」

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スムーズに動画を使えるツールは意外とありませんでした。

特に企業向けだと、ただチャットをできればいいということではなく、接続の安定性が求められていました。

プロダクトを出すまでに2年くらいかけて安定性を追求したため、そこが結構顧客に刺さったみたいです。

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テレビ会議システムというといろいろありますよね。

Skypeは10年以上前からありましたし、他にもappear in(現在はWhereby)、Google Hangouts(現在はGoogle ChatとGoogle Meet)もありました。

なのにZoomがこんなにシェアを拡大しているのはすごいですね。

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他のサービスもそうですが、登録しなくてもとりあえず無料で快適に使えるという細かい差がこれだけの影響を生み出したと思います。

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売上が+80%で顧客数が+60%ですが、売上が伸びている理由は顧客単価も同時に伸びているからです。

これはSaaS企業の良い特徴だと言われています。専門用語になりますがNet Dollar Expansion Rate(顧客拡大率)というのがあります。

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小売店でいう既存店売上のことです。

すでにある店舗同士を比較して売上が伸びたかどうかを見ますが、SaaSの場合は今いる顧客の中で売上が増えたか減ったかを見ます。

顧客が増えて売上が増えるのは当然ですが、顧客数より売上の増加率が高いのは良い傾向です。

23

顧客単価のようなものでしょうか?

2830

それに近いですね。

なので1年前にいた顧客の中で定期課金を辞める人もいればIDを増やす人もいて、それらを総合的に加味したときに売上がどれくらい増えているかが大切です。

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これがZoomの場合130%を超えています。

よく上場企業は売上の成長率が30%を超えると高成長と言われますが、Zoomは既存の顧客だけでそれくらい伸びているということです。

23

すごいですね。そこからさらに新規の顧客の売上分もありますもんね。

2830

そうですね。SaaS企業には「ランド・アンド・エクスパンション戦略」というものがあります。「ランド」は着陸ですね。

まずは新しい顧客に使い始めてもらう。その後に「エクスパンション」なのでより多くの人に使ってもらうということです。

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Zoomの場合は最初は無料で使えますが、Zoomの機能が気に入れば使う人数が増えていき、それによって1社当たりの売上が伸びていくという構造になっています。

23

なるほど。こういった戦略も財務諸表で全てわかるということですか?

2830

はい。全部書いてあります。

SESSION決算書でみるべきポイント

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今までしっかり見たことがありませんでした。

売上や経常利益などの目立つところは見たことがありますが、他にはどんな視点で見ればいいのでしょうか?

2830

決算書を見る目的は人それぞれですが、普通のビジネスマンであれば「この会社がどういう理由で伸びているのか」という視点で見るといいです。

先ほどのZoomの話でいうと、顧客が増えているから伸びているのか、顧客単価が増えているから伸びているのかなど、一つずつ事実関係を整理していく見方をすると使いやすいと思います。

23

なるほど。細かく見ていくにしても、安定生や今後の成長性はどこを深堀りして見ればいいでしょうか?

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会社としてアピールしたいことはきちんと書いています。

会社として言いたくないことは書かないのでそれを読み解くには熟練の技が必要かもしれませんが、スライドを見てもポイントとなるところは堂々と書いているので、決算書を素直に一つずつ読んでいけばいいと思います。

23

Zoomの場合は何をアピールしていましたか?

2830

とにかく去年は中国の状況が大変だったということで、40分間無料の上限を一時的に撤廃したみたいです。

やはり全体的にもニーズが増えているみたいで、特に無料ユーザーがすごく伸びています。

23

学校に行けない学生向けにもサービスを展開していましたよね。

2830

そうですね。教育機関向けにも無料でサービスを提供しているみたいですね。

23

トライアルのような感じで使いやすさを知ってもらえれば、今後顧客数が増えるだろうという戦略なのですね。

2830

そうですね。

これは去年のものなので、概要をつかんでもらった上で次の決算書を見ると面白いと思います。

株価も本当にすごくて、年明けから2倍ほど上がっていますね。

23

上がり方がすごいですね。この記事を書いたのはいつ頃ですか?

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今月(2020年)の初めです。ここからさらに上がっています。

SESSIONZoomの「資本効率の良さ」が決算書で明らかに

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では実際のデータも見てみましょう。

2830

これがポイントの部分ですね。Revenue Growthは売上の成長率です。

最初にお伝えした通り88%伸びています。その隣の営業利益率は14.2%ですね。

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これがポイントの部分ですね。Revenue Growthは売上の成長率です。

最初にお伝えした通り88%伸びています。その隣の営業利益率は14.2%ですね。

23

かなり増えていますね。

2830

はい。これが641社で、90%くらい伸びています。

SaaS企業は1社当たりの単価が大事なので結構重要な指標です。

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その下に先ほどお伝えしたNet Dollar Expansion Rateです。130%を超えていると、かなり強調されていますね。

「我々はSaaSとして理想的なビジネスモデルを体現しています」ということをアピールしています。

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こちらは売上構成です。

アメリカの割合が大きいのですが、海外の部分に注目します。濃い色と薄い色に分かれていますが、濃い色はヨーロッパや中東アフリカです。

残りの薄い色はアジアです。なので日本もこの薄い色の部分に入っています。

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資産の状況はどこで見られますか?

2830

スライドに書いていることもあるのですが、Zoomさんの場合はconcolidated balance sheet(貸借対照表)を見ると分かりやすいです。

今一緒に見ていきましょう。これが最初のプレスリリースで、もっと分かりやすくしたのが先ほどのスライドです。

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Assetsと書いてあるところが資産ですね。

Cash and cash equivalentsは日本でいう現預金です。これが2億8300万ドルなので300億円くらい手元にあるということですね。

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300億円現金が手元にあるということですか?それとも設備などの資産も含まれているのでしょうか?

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ここに書いてあるのは現金です。

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なるほど。300億円というのは額としてやはり大きいのでしょうか?

2830

会社の規模によりますが、Zoomの場合四半期の売上が2億ドルいかないくらいなので結構潤沢です。

あとは借入との比較が大事ですね。現金を持っていてもそれより借入金の方が大きい会社もあります。

それが必ずしも悪いということではないのですが、Zoomの場合は借入金がありません。

借入金がない状態で3億ドルくらい現金があるということです。

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もう少し詳しく見てみると、Marketable securitiesというものがあります。日本語でいうと非常性有価証券です。

Zoomはこちらの方が大きくて5.7億ドルです。なので実質的には全部で8億ドルくらい保有しているということになります。

23

現金よりも多く持っているのですね。

2830

海外の会社は結構多いですね。

金利の問題で、どうせなら債権として持っておこうということだと思います。

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日本企業と比較するとまた違いがあるかもしれませんね。

受講生の方からご質問が来ています。

「借入金がないということは、無借金経営なのですか?」とのことです。

2830

そうですね。ないということはないのですが、少なくともバランスシートに載るほどではないということですね。

Zoomは最近のベンチャー企業の中でも特に資本効率が良いと言われています。

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SaaS企業は年契約で前受金が入ってきます。

そもそも伸び方が積み上げ式なので、広告・宣伝で大きく伸ばす場合もありますが、計画的に伸ばすことができて効率的です。

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なるほど。

「成長企業で財務もいいんですね」というコメントも来ています。

2830

かなり珍しいですね。

アメリカのSaaS企業は赤字の会社がほとんどなので、これだけ伸びていて黒字というのは他にあまりないと思います。

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意外ですね。体力がある企業ということですね。

SESSION新卒・転職希望者の有意義な活用方法は?

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もう一つご質問をご紹介します。

「新卒、転職希望者が財務諸表をかつようするとすれば、どのような事柄を見ると有意義でしょうか?」

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自分が就職しようとしている会社であれば、安定して伸びそうな会社なのかを見るといいと思います。

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自分がどういった働き方をしたいかにもよりますよね。例えば入社後の裁量権を見るにはどうしたらいいですか?

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「決算書を見ていて伸びている会社がなぜこんなに伸びているのか」

自分で疑問をもって理由を探すという行為自体が実際の仕事にも繋がっていきます。そういう視点を持つことが大切だと思います。

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その企業が伸びている理由と自分の理想の働き方を掛け合わせて考えていくと色んな事が見えてくるということですね。

2830

そうですね。

自分だったらこういうことで貢献できそうだなとか、リアリティを持って話せると思います。

そうするとかしこそうに聞こえると思います。

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そうですね。採用担当は「財務諸表を見てきたの!?」と思いますよね。採用したくなると思います。

「そこまで読み解けるものなのか…」というコメントも来ていますね。

2830

そうですね。分かりやすい項目から見ていくといいと思います。

どの国のシェア率が高いのかとか、売上の伸びの要因は顧客数なのか顧客単価なのかとか。

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業界によっても違いそうですね。ぜひみなさんも決算書を見て自分なりの視点から企業を分析してみてください!

2021年09月30日 公開

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2020年03月24日 放送分
企業研究の分析#1

企業研究の分析#1

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