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2021.08.07

Column

数学を楽しく学びなおすために知っておきたい「歴史」の話

数学を楽しく学びなおすために知っておきたい「歴史」の話

大人になってから勉強をやり直したいと思った経験、だれもが一度はあるのではないでしょうか。特に「数学」は学生時代に挫折して以来手を付けられずにいるという人も少なくありません。

そんな人にぜひ受講していただきたいSchooの授業が『おとな数学塾〜中学数学を楽しく学びなおす〜』です。

講師は元公立中学校教諭で、公益財団法人日本数学検定協会認定プロA級数学コーチャーの中島隆夫先生。授業では「歴史」という観点から数学の見方が人によってはがらりと変わってしまうような講義が行われました。

本記事ではその前半部分をテキストでお届けいたします!

目次

  • 江戸時代、数学は「娯楽」だった!?
  • 数学に躓く現代人が多い理由
  • 「ピタゴラスの定理」が持つ壮大な歴史を知ろう

 

 

江戸時代、数学は「娯楽」だった!?

 

 

楽しく数学を学ぶという目標の達成に向けて、中島先生が最初に用意したテーマは「江戸時代、数学は『娯楽』だった?」。もちろん江戸時代から数学は「農業、商業、土木建築」など実用的な用途に用いられ、「華道」「茶道」といった習い事の一種としても活用されていました。しかし、庶民によって「囲碁」や「将棋」のような知的ゲームとしても親しまれていたのです。

 

例えば渡し舟での移動のため、船が来るのを待つ間「おーい、誰か『算術』の本を持っていないか」という声が上がり、みんなで数学の問題を解いて時間を潰すといったエピソードがあると先生は話します。

 

こうした状況は「世界でも珍しかったんじゃないかと思います」と中島先生。数学の発展した諸外国でも一部の進んだ人によって実践されていた例が多いとのこと。庶民の趣味として数学が存在していたのが日本特有の性質とは、面白い指摘です。

 

 

 

数学人気を支えた江戸時代のベストセラー『塵劫記』をみなさんはご存じですか?

 

「塵」は極小、「劫」は巨大な数を指し、実用的な数学とともに楽しい挿絵のついたクイズのような問題が多数収録されていました。なんとあの「東海道中膝栗毛」以上の人気だったといいます。

 

その中には、例えば桶に満たされた油を容量の異なる枡を使って半分ずつに分ける方法を問う、といった生活に根差した問題があったそうです。先生が自らの講座で出題したところ、いろいろな解法が寄せられ、大変楽しい時間となったとのこと。何百年のときを経ても同じように楽しめるのが数学という娯楽の特徴といえるでしょう。

 

また江戸時代には「算額」という額や絵馬に数学の問題を記載して奉納したものが多数流通していたとのこと。神仏に捧げ、ほかの数学者に見てもらうという目的があったといいます。数学者は一部の特権階級に限られず、大阪の総持寺に掲げられた算額には「魚屋平七、油屋清兵衛」など庶民の名前も多数記載されているそうです。また年齢層や性別の障壁もなく、11歳の少年や女性の名前が記載された算額も存在するということです。

 

 


数学に躓く現代人が多い理由

さて、これほど江戸時代に興隆を深め、日本人のDNAに根付いているといっても過言ではない数学(算術)。それにもかかわらずなぜ今、数学に躓く人が多いのでしょうか。

 

中島先生はその理由として「抽象性」を挙げます。割り算や足し算はすんなりと理解できたのに、中学、高校と進むにつれて分数、文字式、関数など抽象的な概念が増加して理解することを放棄してしまったという人は多いでしょう。

 

その対処法は「具体的なイメージづくり」です。例えば文字式であれば文字に数値を当てはめて問題を解きながら理解するのが効果的です。また、単純化したり図をかいて考えたりするのも良いでしょう。

 

 

 

もちろん、理解の速度には個人差があります。しかし、理解の速さと深さは異なり、時間をかけた方が深く理解できる場合も多いと先生。江戸時代に数学を楽しめた理由の一つに労働時間が短く、人々が数学にかけられる時間が多かったという側面があると指摘します。

 

学生時代、受験という目標に向けて私たちが数学にかけられる時間は限られていました。だからこそ、大人になってからじっくりと一つの問題に時間をかけて取り組むことで魅力を再発見できる可能性があると先生は考えているそうです。

 


「ピタゴラスの定理」が持つ壮大な歴史を知ろう

あらゆる学問と同じく数学にも歴史があります。そしてその発展には時代の要請が反映されているのです。例えば「対数」は大航海時代に計算を簡素化したいという目的から考案されました。そして現在では放射性元素の崩壊にまつわる計算などより高度な目的で活用されています。

 

ここで、「ピタゴラスの定理」について考えてみましょう。これは、直角三角形の3辺の長さに関する関係を示す定理であり、「a2 + b2 = C2」で表されます(Cは斜辺)。

 

 

 

「ピタゴラス」は古代ギリシャの哲学者、幾何学者の名前です。彼は、宇宙は数にもとづいていると信じる哲学的、宗教的集団「ピタゴラス学派」を創設しました。しかし、ピタゴラスの定理を発見したのはピタゴラスではないという説が現在では有力です。当初、ユークリッド『原論』に「この定理はピタゴラスが発見した」と書かれていたことが鵜呑みにされ、そのまま名付けられたという流れがあるようです。

 

なんと今から4500年近くさかのぼる、紀元前2500年古代バビロニアの粘土板にはすでにピタゴラスの定理を知らなければできない問題が書かれていたとのこと。古代中国の数学書でも取り上げられており、ピタゴラスの定理は人類の歴史とともにあり続けてきた遺産といっても過言ではありません。

 

そんなピタゴラスの定理は三角法へ発展し正確な地図の作成を今でも支え続けています。ピラミッドの高さはギリシャ哲学者のターレスにより三角法を使って求められました。私たちが地図アプリなどでお世話になっているGPSはピタゴラスの定理と相対性理論があるから成り立っています。衛星と受信者の距離から受信者の位置がわかるのは、ピタゴラスの定理があるからなのです。

 

ほかにもガウスの曲率(曲線の曲がり具合)の考えへの発展、アインシュタインによる重力の定義など、さまざまな役割をこの定理は果たすに至っています。農地の測定のため誕生した定理が、現在では宇宙の形を測れるまでに発展しているのです。

 

数学は一見ロマンとは無縁のように思えます。しかし、このような話を聞くと壮大な物語を感じられないでしょうか。ここから話はピタゴラスの定理を証明する方法に進み実際の計算を用いた解説が行われました。

 

本記事で興味が湧いたという方は、ぜひ録画授業にアクセスしてみてください。映像で学ぶことでより理解が容易になるはずです。

 

文=宮田文机

今回取り上げたSchooの授業はこちら!
『おとな数学塾〜中学数学を楽しく学びなおす〜』

 

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