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2021.12.08

interview

“まずは病院に来て。上司に許可を取る必要はないです”ーーメンタル産業医の井上智介さんに学ぶ、会社に潰されない方法

“まずは病院に来て。上司に許可を取る必要はないです”ーーメンタル産業医の井上智介さんに学ぶ、会社に潰されない方法

会社に潰されない方法をメンタル産業医の井上智介さんから学ぶ

目次

  • 上司への恐怖心は無理に抑え込まなくていい
  • 不眠症とは?寝付けない時の対処法
  • 自分が上司の場合、気を付けるポイントは?
  • 退職してもすぐに仕事を見つけなくていい
大丈夫だと思いながら、無理をして働いていませんか?
あなたのストレス、一人で抱えずに相談してみませんか?

今回の授業ではメンタル産業医の井上智介先生にご登壇いただき、仕事と自分のメンタルとの向き合い方を教えていただきます。

「休職、退職したいけどできない」「仕事が嫌だけどこの気持ちは甘えなのではないか」「パワハラを気にしすぎて部下にどこまで指摘していいかわからない」と思われている方、必見です。会社との付き合い方を学んで、気持ちよく仕事に尽力できるようにしましょう。

井上 智介 先生

メンタル産業医

加藤 智行 先生

動画プロデューサー

中田 有香

受講生代表

学びノート

SESSION上司への恐怖心は無理に抑え込まなくていい

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それではまず、先生のご経歴から教えていただけますでしょうか?

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はい。井上智介と申します。私は大阪で精神科医と産業医の二足の草鞋を履いて活動しています。精神科医としては、病院やクリニックで患者さんの精神面の治療をしています。

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産業医としては、月に30社以上企業に訪問させていただいて、従業員の方のメンタルヘルスだけでなく、健康面全般をフォローアップさせていただいています。
そういった由来もありまして、会社を辞めたいのに辞められないという方が多い点に問題意識を抱き、今回書籍を出しました。本日はよろしくお願いします。

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よろしくお願いいたします。
さて井上先生の書籍『この会社ムリと想いながら辞められないあなたへ』ですが、心や体の危険サインが出たときの対処法をご解説されています。今回はその中からいくつか対処法をご紹介していただきます。

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早速ですが、上司が怖くて会社に行きたくないと思ったときの対処法から教えていただけますでしょうか。

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会社で恐怖を感じる場面はいくつかあると思います。その中でも人間関係、特に上司との関係は影響が大きいと思います。
怖い上司がいると会社に向かうだけで動悸がひどくなったり、手汗がすごく出てきたり、身体的に異常が出ます。「調子が悪いな」と思いつつも無理して会社に行かれる方が多いです。

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「怖いものは怖い」と思って良くて、その恐怖というのは自分から出た感情として捉え、変に否定したり抑え込もうとしたりする必要はありません。とはいえ、恐怖を抱えた中でも仕事をしなければなりません。

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恐怖をある程度取り除いていくためには、その上司と少しずつでも距離を取る必要があります。「距離の取り方」というのはいろいろあると思いますが、手っ取り早いのは休職することです。

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それ以外には人事の方に部署の異動をお願いしたり、同じ部署であっても指示系統を変えてもらってその上司と直接やり取りをしないようにしたり、リモートワークや在宅勤務ができないか打診をしたり、距離を取ってほしいなと思います。

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無理に苦手な上司と一緒にいる必要はないですよね。周りに相談して対応していただくことが大切ですね。

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では続いて、自分でも信じられないミスばかりしてしまうとき、どうしたらいいでしょうか?

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「自分でも信じられないミス」というくらいですから、難しいことにチャレンジした上でのミスではないと思います。そういったときは大体2パターンあります。

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一つは頭がしっかり回っていなかったパターンです。これは夜の睡眠がうまくいっていない可能性が非常に高いです。なのでしっかり振り返っていただきたいのは、「ちゃんと寝れているか」ということです。

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「残業が多すぎて寝る時間がない」「なかなか寝付けない」「途中で何回も目が覚めてしまう」という方は、まず睡眠をしっかりとれているか振り返っていただきたいです。

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もう一つは、自分の苦手な業務に携わっているパターンです。僕の経験上、小規模の会社であれば仕事の幅が広くなりがちで、例えば経理で入社したのに営業の事務を任されたりなど、思ってもみなかった業務を任されることがあります。

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そういう方は上司から得意ではないと分かりつつも任されてしまいます。「ミスが続く」ということは、やはり会社にとってもプラスではありません。なので自分で苦手なところが分かっている場合は、一度業務の調整を相談した方がいいです。

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自分が苦手なことだからと分かっていても、やはりミスが続くと落ち込んでしまいます。もちろん克服することもいいのですが、すごく時間がかかることなのでしっかり相談していただけたらと思います。

SESSION不眠症とは?寝付けない時の対処法

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先ほど睡眠のお話が出てきましたが、夜寝付けないときはどうしたらいいでしょうか?

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まずはどのくらいの期間寝れていないのかが問題です。例えばテスト期間や何か大切なプレゼンがある前日に眠れないというのは「一過性の不眠」と言いまして、誰でもあることなので心配いりません。

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しかし1週間~3週間寝れない期間が続く場合は「短期不眠」といって、病院に行く段階だということを覚えておいてください。
不眠が1ヵ月以上続き、精神的・身体的に症状が出ることを「不眠症」といいます。不眠というのは体調不良の根源なので、薬を使うことも決して悪いことではありません。ただ薬を処方する前の段階でできることもたくさんあります。

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まず就寝する2時間前にはパソコンやスマホを見ないようにしましょう。また、就寝する1時間前くらいにはお風呂で湯船につかってください。リラックス効果がありますので睡眠モードに入れます。

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そして寝る前の1時間はぼーっと過ごしてください。自然な眠気が来るのを待つことは非常に大切です。寝る前に何かしら追われてやっている方が多いのですが、寝る前の1時間はぼーっと過ごすことが大事です。

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最後に、朝起きたときに一番初めにカーテンを開けてください。3分間でいいので顔いっぱいに朝日を浴びてください。他にも顔を洗ったり歯を磨いたり、いろいろやることはあるかもしれませんが何よりもまずはこれをやってほしいです。患者さんには窓際にベッドを置くように言うこともあります。ぜひやってみてください。

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なるほど、ありがとうございます!
休みたいけど言い出せない、そんな時はどうしたらいいでしょうか?

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これは非常に聞くことが多いお悩みですね。自分でも休んだ方がいいと分かっていても、周りに迷惑をかけてしまうとかいろんな理由があってなかなか言い出せなくて結局仕事に行ってしまう人が多いと思います。

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こういう時はまず、早く病院に行った方がいいです。上司の許可はいりません。自分がまずいなと思ったときには必ず病院に足を運んでいただきたいと思います。

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しかし先生に「もう少し頑張りなさいよ」などと言われるのではないかと心配される患者さんがいらっしゃいますが、基本的に患者さんが自分で休んだ方がいいなと思える段階というのは僕ら精神科医からすると「なんでもっと早く来なかったんだ」というくらい状態が悪いです。
なので患者さんと僕らの意見がずれることはほとんどありません。「頑張って会社に行きなさいよ」と言われることはほとんどないと思っていただいて結構です。

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自分から病院にいく勇気を持つことですね。

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とはいえなかなか言いにくいことだと思います。そこで病院からの診断書を会社に提出する時に「自分としては会社に行きたくて、まだまだ仕事がしたかったのですが、病院に行ってみたらまさかのドクターストップがかかってしまいました。」と、思う存分主治医のせいにしてください。

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それで主治医が文句を言うことはないので、「働きたいけど主治医が休めというから仕方なく休みます」と言っていただければと思います。

SESSION自分が上司の場合、気を付けるポイントは?

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ここからは、受講生の方からの質問にお答えしていただきます。まず一つ目の質問はこちらです。「実際にパワハラをしている方の相談にのる時があると思うのですが、本人は自覚がないかと思います。先生はそういう方にどのようなアドバイスされるのでしょうか?」

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分かりやすくするためにパワハラする側を「加害者」と言いますが、産業医として加害者の方と面談することが多いです。「自覚がないかと思いますが」というところですが、まさに仰る通りで自覚のない方が多いです。

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「そんなことでパワハラと言われたら何も言えない」と言う方が非常に多いです。そういう方には、残酷な話ですが治す方法がありません。僕の経験上なかなか難しいです。というのも、その人の性格や考え方から来るものなので、非常に長い時間を要します。何か一つアドバイスをすることで治ることはないと思います。

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そういった方には何が必要かということなのですが、会社からある程度の処罰があると効果が出ます。それくらいしか効果を発揮しません。たしかに処罰なんかよりもパワハラをしてしまう方の心の歪みを治療することの方が大事だという意見が医療界ではありますが、簡単な治療ではないので処罰の方が効果的です。

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なのでそういった場合は僕だけではなく、会社の力にも頼らなければならなくなってきます。その会社がどこまでそういったことに対して厳しく正当に処罰できるかが非常に大きいです。パワハラをする人は営業成績が良いこともありますので、処罰を下すことに抵抗を感じる会社も存在することは事実であることも伝えておきたいなと思います。

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ありがとうございます。どうすることもできない人もいるので会社の力が必要だということですね。

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次の質問です。「パワハラになることを心配して、部下への指示にストレスを感じてしまいます。抑えて言うことで、なかなか思ったようにならず、さらにストレスを感じます。何か良い考え方はないでしょうか?」

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実際に現場で上司の方からよく聞くお悩みですね。何か言ったらパワハラになるのではないかと思ってしまったり、ひどいときには逆に部下の方がつけあがってきたり、困っている上司もたくさんいます。

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そういった方は、まず大前提として本当に部下の成長を期待して言っているかというところが大切です。簡単に言うと「愛があるのか」という話です。突発的に感情的に言ってしまうことというのはやはり言い過ぎであったり、表現が悪かったりすることがあります。

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心の底から部下に対して愛情を持って接しているのかというところは非常に大事です。ただ、もちろんみんながみんな部下を愛せるかといえば、それは現実的に難しいと思います。愛情がなくても愛情があるように振る舞えているかどうかというのは非常に大きなポイントだと思います。
なので何か言いたいときにはちゃんと「この部下に成長してほしい」という言い方ができているのか考えてほしいです。

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あとはパワハラの定義というものがあります。その中の一つに「部下の方が働く環境を阻害されたかどうか」というのがあります。これは一緒に働いている一般的な社員が見ても「それはやりすぎだろ」と思えるかどうかというところが判断ポイントです。

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言われた部下が「パワハラを受けました」と言ったからといってそれが全てということにはなりません。周りにいる部下がどう捉えたかというところが判断材料になるので、そこには引っかからないような言い方をしてほしいと思います。

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ありがとうございます。部下に対する言い方に愛情がこもっているか、気を付けることが大切ですね。

SESSION退職してもすぐに仕事を見つけなくていい

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続いての質問です。「社員を潰さない職場を作るには?管理的立場の人がやるべきことは何でしょうか?」

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まずトップダウンのあり方というのは非常に大切です。先ほどもお話ししましたがパワハラをする方は結構有能な立ち位置にいることがあります。能力が高く、会社に利益をもたらすようなタイプなので、なかなか会社が処罰できないというケースがあります。

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なので、「そんなものより社員の方が大事だ」というトップからの表明が大切です。業績が一切関係なく懲戒に当たるということを明示することが必要になります。まずはそこからスタートしていただきたいなと思います。

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あとは社員を潰さないためには、褒めることが大切です。潰れてしまう社員というのは若手社員に多いと思うので、ぜひほめて伸ばしていただきたいなと思います。褒めることが苦手な方のためにポイントを3つご紹介します。

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1つ目は結果です。これは誰もが当たり前に褒めますね。2つ目はプロセスです。若手社員の場合は結果が伴わないことも多いと思います。そういうときはプロセスを褒めていただきたいです。最後に存在です。「彼/彼女がいてくれたから一緒にやれた」と存在自体に感謝する褒め方をしていただきたいなと思います。

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なるほど、管理的立場の方はこれら3つのポイントを意識してみてください。

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続いての質問はこちらです。「休職して退職させられたのですが、その会社のトラウマが払拭できず、仕事を復帰したいのですが勇気が出ません。何かアドバイス頂けたら幸いです。」

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こういうことがあると、次の仕事場でも同じことがあるのではないかと思ってしまいますよね。無理して復帰しようとしなくていいと思います。恐怖を抑え込む必要はなくて、その恐怖を抱えたままできることは何か探して行くことが大切です。

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もしかしたら最初はアルバイトのようなお仕事になるかもしれませんが、それでもいいと思います。それも難しければ外に出たり、図書館に定期的に通ってみたり、外で過ごす時間を増やしてみて徐々にステップアップしていくことが大切です。

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「今まで仕事をしていたからまた次も仕事をするのが普通だ」と考える人が多いのですが、仕事ではなくても段階的にステップを踏んで大丈夫です。恐怖心があると思うので、自分でステップを作って徐々に復帰していければいいと思います。

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なるほど。たしかに「次の仕事を見つけなきゃ」と思ってしまいそうですが、自分のペースで段階を踏んでもいいということですね。井上先生、今回はありがとうございました!

3150

ありがとうございました!

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今回ご紹介した書籍はこちらです。気になった方はぜひチェックしてみてください!
『この会社ムリと思いながら辞められないアナタへ』著:井上智介さん
https://www.amazon.co.jp/dp/4866213574

2021年12月08日 公開

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2021年11月03日 放送分
会社に潰されない方法をメンタル産業医の井上智介さんから学ぶ

会社に潰されない方法をメンタル産業医の井上智介さんから学ぶ

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