目次
- マイナンバーカード、普及率の低さは問題ない?
- マイナンバーカードが必要な背景とその可能性
- マイナンバーで個人に最適化された社会を実現
2020.09.11
国民間の普及率の低さが指摘されているマイナンバーカード。一方、マイナンバーを土台とした社会基盤は徐々に整いつつあり、日本がデジタル国家となる日はそう遠くないかもしれません。
今回は株式会社blockhive代表取締役CEOの日下光先生を招き、誤解の多いマイナンバー制度や、普及の先にみえる未来の社会について学びます。
こうしたデジタル社会のインフラが整いつつあるなか、マイナンバーカードは具体的にどういった役目を果たし、私たちの生活にメリットを与えてくれるのでしょうか。
マイナンバーカードは、デジタル社会において本人性を担保できる点が最大の特徴です。マイナンバーカードには電子証明書と呼ばれる特殊なICチップが付いており、オンラインでも操作者が本人であると証明できます。このICチップは改ざんや複製ができません。
これまでオンラインの手続きやコミュニケーションは、相手をどのように識別し、それをどう信頼すべきかが大きな問題でした。画面の向こうの相手は、もしかしたらAIやディープフェイクの技術によって生成されたものかもしれないからです。これは「インターネットドッグ問題」と呼ばれる社会課題です。そして、オンライン上でも個体識別と証明が可能なマイナンバーカードは、こうした課題を解決する鍵を握るわけです。
エストニアではデジタルIDをスマホで使える「デジタルIDアプリ」も一般的です。あらかじめアプリでデジタルIDを読み込んでおくと、そのアプリだけでデジタルIDを使ったサービスを受けられます。
2020年4月、国内でもblockhiveがデジタルIDアプリ「xID(クロスID)」をリリースしました。何度もパスワードや個人情報を入力することなく、オンラインバンクにアクセスしたり、オンラインの行政サービスで給付金の申請ができたりするようになります。
さらに、2021年3月からマイナンバーカードと保険証が一体化されます。数年後には運転免許証も一体化されるかもしれません。また、クラウドからマイナンバーカードを通してさまざまな情報を参照できるシステムの準備も進んでいます。カード1枚であらゆる手続きが完結する未来は、そう遠くないでしょう。
マイナンバー普及の先にみえるのは、個人に最適化されたデジタル社会です。個人情報はマイナンバーに紐づけられるようになり、それらの情報を提供するかしないかは自分でコントロールできるようになります。自分に恩恵があれば情報を開示し、逆に恩恵がないと感じれば、非開示を選択できます。自分の個人情報がどの企業に、どのように使われているかも把握できるようになります。
これから社会全体のデジタル化が進むにあたって、データの信頼性と透明性の担保は欠かせません。そのために、セキュリティの高いマイナンバーカードは必須です。マイナンバーを社会基盤とすることで、個人や社会に最適なデータをプライバシーに配慮しながら活用できるようになります。また、データ連携により新しいサービスやビジネスモデルも数多く誕生するでしょう。
デジタル化によって変化する近未来の行政について学んでいく本シリーズでは、このほか『デジタル社会の成功の鍵は、フェアな透明性』というテーマの授業もあります。より深くこれからのデジタル社会について学びたい方は、そちらの授業もチェックしてみてください。
『GovTech! -デジタルで変化する信頼と行政の近未来- 第2回 マイナンバーカード、普及の先に。デジタル国家日本』
http://schoo.jp/class/7159/room
『第1回 デジタル社会の成功の鍵は、フェアな透明性』
http://schoo.jp/class/7158/room
文=宿木雪樹
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マイナンバー制度は2016年から始まりましたが、マイナンバーカードの普及率は2020年現在20%程度にとどまり、保有者数は約2200万人です。普及率という観点では社会に浸透していないと指摘されますが、私は今後さらに多くの人がマイナンバーカードを手にしていくと考えています。
なぜなら、マイナンバーカードは発行から更新時まで無料の公的な身分証明書だからです。現在、顔写真付き身分証明書として一般的に使われている運転免許証は、取得のために費用と時間を要する試験に合格する必要があります。また、パスポートの場合は5年、あるいは10年ごとに有料で更新しなければなりません。そのため誰でも無料で作ることができ、かつ更新もできるマイナンバーカードは、今後公的な身分証明書として最も使いやすいものとなる可能性が高いのです。
政府によるマイナンバーカードの推進は、より心地の良い便利な社会づくりを目的としています。今後リアルとデジタルが一層密接に結びつき、相互でデータを共有できる「Society5.0」への移行が進むにつれて、マイナンバーカードの必要性は高まるでしょう。こういった社会の流れを「監視社会になるのでは」と懸念する声もありますが、実際に国民全体を監視するような仕組みや技術の開発は、現実的には難しいものです。マイナンバーを利用して人間中心のデジタル社会をつくっていこうというのが、政府の指針です。
デジタル社会を語る際によく引き合いに出されるのが、エストニアです。日本のマイナンバーカードにあたるデジタルIDカードを国民の99%が持っており、さまざまな手続きを一括で行えるなど、最先端の電子国家として注目されています。こうしたエストニアの取り組みに比べると、日本はまだ遅れていると批判を受けることは少なくありません。しかし日本でも、2019年4月に「デジタル手続法」が可決されるなど、着々とデジタル国家の基盤ができつつあります。