目次
- 42年間編み続けてきた“プロの生きざま”を一冊の本に
- 自らの意思で盗んだスキルこそ人生の宝になる
- 真心を尽くして仕事を続け、美しい花を咲かせよう
2021.04.20
私たちが不安や悩みを抱えるとき、偉業を成し遂げた人々の言葉は、道を照らす一筋の光となります。『365人の仕事の教科書』(致知出版社)は、1日1話ずつ一流のプロが語った経験談を読むことができる一冊です。
Schooの授業「『365人の仕事の教科書』を編集者が解説」では、本書の編集者である小森俊司先生が、書籍発売までのエピソードと本書の一部を解説します。発売2カ月半で20万部を超えるベストセラーとなり、すでに多くのビジネスパーソンのバイブルとなっている本書。その魅力を、本記事では授業の一部を抜粋する形でご紹介します。
「教えたものは身につかない。盗んだものだけが身につく」
これはミシュラン史上最高齢の三ツ星シェフであり、すきやばし次郎の主人である小野二郎さんの言葉です。人間は受け身で教えてもらったことは忘れてしまいがちですが、自ら苦労して盗もうとした知識やスキルは決して忘れません。だから自分から盗もうとする姿勢が大切だと小野二郎さんは説いています。
小森先生はこの教訓を、編集の現場で感じたそうです。入社して間もない頃、社内の先輩が書くすばらしい記事に感銘を受け、どうしたらそんな記事が書けるのかと先輩のゴミ箱に目を留めたそうです。そこには、捨てられた文字起こしの原稿の束がありました。文字起こしと完成した記事を比較し、このスキルを盗もうと心に決めたのだといいます。
この心構えは、業界を問わずすべてのビジネスパーソンに共通するものでしょう。まず自分から学ぼうと行動を取ることが、明日の働き方を変えるはずです。
また、小森先生や『致知』の編集部が胸に刻んでいる言葉も、本書の中に登場します。それは名僧・松原泰道さんが講演で紹介した、ある歌碑に刻まれた和歌です。
「あれを見よ 深山の桜 咲きにけり 真心尽くせ 人知らずとも」
深山の桜とは、山の奥深くに咲く桜を指します。若き日の松原さんは、旅路でこの歌碑と出会いました。そして、たとえ誰にも注目されなくとも、苦境があろうとも、真心を尽くして生きていこうと心に決めたそうです。
この“深山の桜”にはもう一つのエピソードがあります。『致知』の編集長は、かつてTDK代表取締役社長の素野福次郎さんから、ある言葉をかけられました。
「月刊『致知』は土手に咲く桜ではなく、深山の桜だ。どんな山奥でも美しい花を咲かせていれば、いつか必ずそこに人が足を運ぶようになる。やがてそこには道ができる」
月刊『致知』は創業当初、こんな固いコンセプトの雑誌は誰にも読まれないと言われていました。それでも良い花を咲かせ続けていれば、必ずそれを見つける人がいる。編集長はそう信じて月刊『致知』を編み続け、プロフェッショナルたちの経験談を人々に届けてきました。そして、小森先生もまたこのエピソードを胸に刻み、日々の仕事に打ち込んでいるといいます。
真心を込めて、自分の仕事に真摯に向き合い続けることが何よりも大切である。“深山の桜”はビジネスパーソンが忘れてはならない心を伝えてくれる象徴です。
授業の中では、このほかにも『365人の仕事の教科書』に登場するエピソードや格言を紹介し、小森先生がそれらの意味を解説しました。また、5月5日には第2回の授業も放送予定です。この授業内容に心を惹かれた方は、ぜひ手元で本のページをめくりながら、次回の授業を受講してみてください。
文=宿木雪樹
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『365人の仕事の教科書』とは、各界のプロの体験談を通じて人間学を学ぶ月刊『致知』から選りすぐった365本の記事を一冊の本にまとめたものです。『致知』は42年間の歴史があり、書店では入手できないにも関わらず、2021年現在は11万人もの定期購読者を擁します。
1万本以上のインタビュー記事の中から365本を選んだ基準は、編集者の“感動”です。企画当初小森先生が単独で始めた選抜は、やがて『致知』編集部全員の手によって行われるように。まさに『致知』の魅力を凝縮した一冊として本書は生まれました。
人間の生きざまが描かれた月刊『致知』に魅せられ、致知出版社に入社したという小森先生。授業で紹介してくださったいくつかの格言の中には、小森先生自身の働き方や考え方に強く影響を与えたものもありました。