目次
- 岸田政権、最大の目標は“デフレからの脱却”
- 2025年度PB(プライマリーバランス)の黒字化は実現可能か?
- 経済格差を是正するための“新しい資本主義論”
2021.10.20
10月初頭。日本の内閣総理大臣は菅義偉氏から岸田文雄氏へと変わりました。内閣人事も着々と決まっていく中、気になるのは岸田政権が示す政治の方向性ではないでしょうか。
『田中秀臣の最新経済ニュース(2021年10月号第1回)』では、そんな岸田政権の経済政策について解説されました。講師を務めるのはもちろん、経済学者の田中秀臣先生です。
今後、岸田政権の経済政策はどの方向に歩みを進めていくのでしょうか?「テレビやニュースを見ても、経済政策の内容がいまいち理解できない」と感じる人は、ぜひ田中先生の解説を聞いてみましょう!
岸田首相は、日本経済の回復を優先する考えであることが分かりました。
しかし、この度財務大臣となった鈴木俊一氏からは“PB(プライマリーバランス)の2025年度黒字化に関する取り組みを強化する”という発言があり、首相の掲げる経済政策とは整合性が取れていないのではないかという見方もあるとのこと。田中先生はこの点についてさらに詳しく解説していきます。
そもそもPB(プライマリーバランス)とは、社会保障や公共事業といったさまざまな行政サービスを提供する際にかかる「政策的経費」を、税収で賄えているかどうかを示す指標のことです。先生曰く、現代日本のPBは25兆円ほど赤字であり、それを国債発行で賄っている状況とのこと。
一体、このような状態からどうやってPBを黒字化させるのでしょう。ここで最も考えられるのは税収を増やすという方法です。ただ税収増加は、首相の掲げる方針「経済あっての財政」に反してしまいます。また2025年まではあと4年。決して時間に余裕があるとは言えません。
田中先生も「あと4年でPBを黒字化させるには、相当大きな増税をおこなう必要があるが、コロナ禍の日本においてそれはまったく現実的ではない」と語ります。 だからといって、政策的費用が借金でも賄えなくなる可能性も見逃せません。そこで先生が提案したのが「経済回復によるPBの黒字化」でした。
これは日本経済を回復させ、経済活動を活発化させることで税収を増やすという考え方です。確かにこの方法で税収が増えれば、政策的経費にあてる歳入も増加しPBも黒字化する可能性があります。岸田首相が掲げた方針にも反することもないでしょう。
授業では、岸田首相が唱えた「新しい資本主義論」にも触れています。これは日本の経済格差を是正させるためのものだそうです。
田中先生曰く、そもそも日本は先進国の中でも経済格差が大きい方とのこと。また、日本の経済格差は欧米におけるそれとは特徴が異なり、欧米では上位1%の国民にお金が集まっていますが、日本は上位10%の人間にお金が集まっているそうです。
ではいったい、日本の経済格差が大きい要因は何なのでしょうか。先生は以下の2つを要因として挙げました。
・日本の長い経済停滞による失業率の増加や再就職率の低下
・非正規雇用の増加による正規雇用者との待遇差の拡大
このような状況を打破するためにはどうすれば良いのでしょう。先生は「景気を良くして人手不足を解消することが大切」と語ります。
景気を良くすれば、仕事は増えていずれ人手不足を感じるようになる。そうなれば採用枠も増え、失業者も減少するとのこと。また景気が良くなれば、非正規雇用者と正規雇用者の待遇差もなくなっていくそうです。
授業では、本記事で紹介しきれなかった岸田政権の財政政策に対するビジョンが詳しく解説されています。日本の総理大臣が掲げるビジョンの内容を知ることは、一国民としてとても大事。ぜひ本授業を視聴して学びを深めましょう。
文=トヤカン
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本授業の放送日となった10/8に、国会では岸田首相による所信表明演説が行われました。田中先生は、その内容をもとに岸田政権の経済政策について解説していきます。
まず語られたのは、目標について。岸田首相は「デフレ脱却」を最大の目標として掲げました。またデフレ脱却については、アベノミクスを継承することで達成していきたいとのこと。アベノミクスとは、安倍晋三氏が第2次安倍内閣の時代に掲げた経済政策の通称です。「大胆な金融政策」、「機動的な財政出動」、「民間投資を喚起する成長戦略」といった3つの特徴を基軸に進められていました。
さらに田中先生は、「岸田首相は『経済あっての財政であり、順番を間違えてはならない』と明言した」と語ります。これはつまり、まずは日本経済の回復を最優先とした政策を打っていき、財政再建はそれから、ということ。いま大切なのはあくまで「経済再生」であるという岸田首相のスタンスが所信表明演説から見えてきました。