“学びたい”を刺激するメディア。

2020.08.20

interview

“僕しか企画を出さなかった。だから映画監督になれた。”-「ALWAYS 三丁目の夕日」監督 山崎 貴先生から学ぶチャンスの掴み方-

“僕しか企画を出さなかった。だから映画監督になれた。”-「ALWAYS 三丁目の夕日」監督 山崎 貴先生から学ぶチャンスの掴み方-

アナタは何でできてるの!? 人気クリエイターに50の質問をしたらヒットの理由がわかりました!

目次

  • ALWAYS 三丁目の夕日、永遠の0...名作を生み出す山崎貴監督へ50の質問
  • 人生のターニングポイント。勇気を持って出した「企画書」が人生を変えた
  • アイデアは、ノートではなくハガキ大の紙にメモする
  • 企画のプレゼンで意識していること。「もう一段上」のメディアを用意する
優れたクリエイターは決して生まれながらの天才なのではなく、「インプットの量」「情報の取捨選択」「蓄積された情報の応用力」、この3つが優れています。
これはクリエイターのみならず、あらゆるビジネスマンに必要とされるスキルではないでしょうか。

そこで、日本を代表する映画監督である山崎貴監督の頭の中を覗き見し、どのようにして映画監督になるチャンスを掴んだのか、どのようにアイデアを考えて大ヒット作品を数多く世に出せたのか、そのヒントを探していきましょう。

山崎 貴 先生

映画監督・VFXディレクター

ワタナベアニ 先生

写真家・アートディレクター

谷田 彰吾 先生

クロスボーダークリエイター / 放送作家

学びノート

SESSIONALWAYS 三丁目の夕日、永遠の0...名作を生み出す山崎貴監督へ50の質問

2959

今日の授業は数多くの名作を生み出している山﨑貴監督の頭の中は、何でできているのか紐解いていきます。そのために事前にアンケートとして、50の質問に答えていただきましたので、こちらを元にトークを進めていきながら、山﨑貴監督の頭の中を覗き見していこうと思っております。

2959

優れたクリエイターが「どんなものに影響を受けてアウトプットにつなげているのか」「どんなスタンスで仕事に向かっているのか」などは、クリエイターとは違ったビジネスマンの方々も、すごくヒントが溢れているのではないかと思います。皆さんも自分と重ね合わせて、探ってみてください。

SESSION人生のターニングポイント。勇気を持って出した「企画書」が人生を変えた

2959

人生のターニングポイントになった出来事は、「最初の映画の企画を出したこと」とお書きになっていますが、元々はお仕事でCGやVFXを作っていたところから、どうやってステップアップして映画監督になれたのでしょうか?

3025

単純にうちの会社が「受注仕事だけやってても先がないだろう」と社長が思ってですね、「社内でも企画を作って、メーカーにもなろう」という話を始めたんです。全社員に企画を募集したんですけど、僕しか企画を出さなかったんですね。

3025

ですが、私がスターウォーズ育ちなので壮大な内容のものを出してしまい、うちの会社じゃ無理だと言われました。そこでROBOTの阿部さんを紹介していただいて、これを映画にしようじゃないかという話になり、映画監督になれそうな雰囲気が漂い始めたんですよ。

2959

それが20代後半ですか?

3025

いや、31~32歳くらいだったと思います。

2959

一通の企画書を出す出さないというところで人生変わったということですか。

3025

そこが大きかったですね。単純に出して「こんなのできるわけないじゃん」と社長に言われたら終わりだったんですけど、「やりたいし、面白いけど、ちょっとうちじゃ無理だね」ということで、ちゃんと作れそうな人を紹介してくれたことがすごく大きかったです。
ROBOTの阿部さんが、当時馬の骨だった僕の企画をきちんと受け取ってくれたのも大きかったです。

2959

その映画は結局形になったんですか?

3025

20億円くらいの規模のプロジェクトだったのですが、いろいろうまくいかなくて、途中で戦略的撤退を決意しました。でも自分は映画監督がやれるんだっていうことを証明しないといけないと思ったので、もっと小さい規模でやれる「ジュブナイル」という映画の企画を急遽作ってROBOTに出したんです。そしたら、それをみんな「これだったら出来るかもしれない」という話になり、喜んで映画にしてくれました。

2959

それでついにデビューできたってことだったんですね。

3025

はい。僕めちゃくちゃ運が良くて、ちょうどROBOTで「踊る大捜査線」が当たった時だったんですね。なのでROBOTが次はどんな作品を出すのか、世の中が注目していたんです。資金も4.5億円くらい集まりました。

3025

さらに東宝も「学校の怪談」シリーズを夏休みの子供向けシリーズでずっとやってたんですけど、ちょうどその年だけそれに代わる企画が無くて、探してる時だったんです。そこにさくっとハマって、興行の場所も良ければ予算も集まり、とにかくラッキーでした。「踊る大捜査線」には足を向けて寝られないです。

3026

ただ、やっぱりそういう話を成功を納めているいろんな人から聞くと「運が良かった」って皆さんおっしゃるんですけど、結局そういう人しか残ってないんですよ。

3026

一番重要なのは「山﨑さんしかその企画を出さなかった」ということ。そこなんですよ。それ以外の人たちも同じステージに上がれるチャンスがあったのに、一つずつ目の前のことをやっていった努力を、必ず誰かが見ていてくれるということです。

SESSIONアイデアは、ノートではなくハガキ大の紙にメモする

3025

Q.アイデアが出ないときにすることは?
A.シャワーを浴びる

Q.アイデアはどうやって考える?
A.適当な状態からとりあえず始める

2959

ビジネスマンでも、クリエイティブじゃないけどアイデアって絶対必要じゃないですか。アイデアを考える時は適当に始めるというのはどういうことですか?

3025

完璧なものを作ろうと思うとずっと悩んでしまうんですよね。書き出してしまうとか、絵に描いてみるとか、何かしたときに第三者的になれる感じがします。「岡目八目(おかめはちもく)」という言葉があるじゃないですか。書かれたやつにダメ出しし始めるとすごく頭が回るんですよね。

3026

ハガキ大のコピー用紙のメモっていうのがすごくわかりやすくて、例えばA4の紙にちゃんとしたソリッドな企画書を書こうと思うと全く進まないけど、ハガキ大の小さいメモに思いついたことを書いておくと、それに自身の批評性が働いたとき「これだとこんなことが起きそう」というのがカジュアルにイメージできるっていうことですよね。

3025

そうです。なのでスケッチブックとかも嫌なんですよ。全ページが残っちゃうじゃないですか、そうするといい加減なことが書きづらいんです。破っては捨てられるものがいいんです。

3026

山﨑さんは学生の頃ノートを最後まで使うタイプでしたか?

3025

途中では放棄しなかったですね。

3026

僕大体3,4ページで辞めちゃうタイプでした。

2959

早くないですか?

3026

今監督のおっしゃったことは、「何ページか失敗するとそのノート全部がダメになった気がする」ということなんです。

2959

それはすごいわかります。

3026

元のページに戻りたくないんです。だから完璧に書きたい人は最後まで書きにくくて、ちゃんと完璧に書ける人は最後まで書けるんですよね。

3025

スケッチブックは頭の数ページで終わってるってよくありますね。僕は向いてないです。書くのならA4のコピー用紙か、もっと簡単なものはハガキ大のコピー用紙です。

2959

アイデアを一時的にアウトプットする場としてメモがあって、それを残しておくのではなく、捨てていくっていう作業をするために一回書くんですね

3025

そうですね。またパソコンに打ち込むとちょっと遠い気がして、あまり第三者になれないんです。愛情が持てないといいますか、手で書いたハガキ大のコピー用紙くらいが、愛情と客観性のバランスがいいと感じます。

SESSION企画のプレゼンで意識していること。「もう一段上」のメディアを用意する

3026

プレゼンをするときに相手の予想を一段裏切るっていうのは具体的にどういったことですか?

3025

「ジュブナイル」っていうデビュー作でいうと、デモリールを作っておいて、「実はこんなのも作っているんです」とアピールするとか、が要求してきた仕事に映像や絵など「もう一段上のメディア」を用意しておくんです。
雰囲気が良ければそれを見せていく。そこまでの段階でみんながしょんぼりしていたら、あえて公開しないで隠したまま帰ります。

2959

準備しておくことが大事だってことですよね。

3025

僕のプレゼンの場合はCMとかで、みんなで競争するのとは違います。例えば、映画の企画をするじゃないですか。それを持っていって「やるか、やらないか」を決めるんです。相手が「ノッてくれるか、ノッてくれないか」なので、イメージとして絵を見せるということです。

3026

相手がワクワクするかどうかを丁寧に説明してあげるということですね。

3025

ALWAYS 三丁目の夕日を作った際、「昭和の映画で人情もの」っていった時にみんなが思い描いたイメージは恐らく、小さなセットで行う朝ドラ的なものだろうと。しかし阿部さんが作りたいと言ったのは、東京タワーが出来上がっていく様子や、同時の広大な風景などのスペクタクルも含めたものでした。

3025

その時もデモリールを作って見せたんですけど、役者さんたちがものすごくノッてくれました。脚本のみでは一見地味な世界観だったけど、この世界なら入り込みたいと受け取ってもらえて、いい役者さんを捕まえるという意味ではすごく良かったです。

3025

「なんでこんなにお金がかかるのか」なども参考イメージがあるとないのとでは、皆さんのノリが違います。「これだったら面白そうじゃん」って空気が変わる瞬間があるんですよ。それが楽しくてやっています。

2959

なるほど。参考イメージを共有させることは大切ですね。山崎監督、本日はありがとうございました!

2020年08月20日 公開

おすすめ記事

ペンシルからのプッシュ通知を設定しておくと、新着記事のお知らせなどをブラウザ上で受信できて便利です。

通知を受信しますか?