目次
- 「この二輪は新しいマーケットを作れる」その確信が、1億円を集めた
- 次世代電動モビリティが開発された背景
- 現状分析でポジショニングを定める
- 愛着が持てるプロダクトに必要なのは「引き算」
2020.10.07
Schooの人気連載企画『プロダクト・リアルトーク~愛されるプロダクトの作り方~』。素晴らしいプロダクトがどのように生まれ、そしてどのように生活者に届けられているのかを考案者や開発者の方に講義いただきます。
3回目は、和歌山県発の次世代電動モビリティの開発で注目を集める、glafit株式会社 代表取締役CEO 鳴海禎造先生がご登壇。バイクと自転車を掛け合わせたような「GFR-01」、電動スクーター「X-SCOOTER LOM」が瞬く間に話題となり、クラウンドファンディングサービスで応援購入総額1億円以上という驚異の金額を達成しました。
多くの方から支持された本プロダクトは、一体どのように生まれたのでしょうか。
それでは、このふたつのスクーターはどのようにして生まれたのでしょうか。話はglafit設立前に遡ります。鳴海先生は10代の頃から車用品に関する事業を一貫して行っており、31歳になる2012年に、経営理念・100年ビジョンを見据えます。
その理念とは、「乗り物を通じて、世界中の人々に驚きと感動と笑顔をお届けする存在でありたい」。これを基に、当時の会社の新規事業として創ったブランドが「grafit」でした。
しかし、鳴海先生たちは車の製造ノウハウはありません。そこで、何もノウハウのないところから自動車メーカーになった本田技研工業(ホンダ)の研究をしたところ、ホンダが最初に作った乗り物は、自転車型バイクであることを知ります。そこでgrafitも、二輪から乗り物づくりを勉強しようとなり、二輪づくりがスタートします。
実は、鳴海先生は当初、二輪づくりにはあまりワクワクしませんでした。しかし、エンジニアの方が試作した自転車型バイクを見て「乗ってみたい」と思った時、「二輪に興味がない自分でもワクワクするということは、確実にこのマーケットを作れる」と確信したそう。
新たなマーケット開拓の成功のカギは、ノーマークな人も興味を持てるものづくりができるかどうか、と言えます。
次に鳴海先生は、市場の現状分析も行いました。原付バイクと電動自転車と比較して、glafit社のバイクのポジショニングを考えます。
電動自転車は外にバッテリーがついていて、デザイン性があまりよくありません。そこで、glafit社のバイクは「電池を見えなくする」と決め、電池はフレームの中に隠し、折りたたむ時に取り外せるように設計しています。
続いて、開発フェーズについてお話を伺います。実は、glafitはスペックを売りにしていません。「スペックで勝負をしていくと、家電と同じような競争が起こり、数カ月でプロダクトが古くなる」と鳴海先生。スペックよりも大切にしていたのは、「愛着が沸くもの」にすること。カー用品を作っていた経験から、カスタマイズして自分だけのオリジナル感を作れることが、製品への愛着に繋がることを知っていました。
例えば、メーカー独自の企画を入れれば入れるほど、カスタマイズはしにくくなるそうです。カスタマイズできる工夫を盛り込むことを意識して開発を進めた結果、想像以上のユーザーからカスタマイズのアイデアが届いたのだとか。
「引き算が一番難しい」と鳴海先生が話すように、ここぞというプロダクトにはアイデアを詰め込みたくなるものですが、ユーザーに愛着を持ってもらえる余白を作ることが大切なようです。
放送では、鳴海先生が受講生から寄せられた多数の質問に回答しています。「なぜ、乗り物が人を豊かにすると思いますか?」「身内だけで需要を考えると盲目的になりそうですが、気を付けた部分はありますか?」など、私たちのビジネスのヒントにもなりそうな質疑応答が繰り広げられました。鳴海先生の回答は、実際の放送でご確認ください。
Schooの連載企画『プロダクト・リアルトーク~愛されるプロダクトの作り方~』3回目の放送のダイジェストをお届けしました。過去の3回分の放送も、授業リストからご覧いただけます。コンセプト立案やブランディングに興味がある方の役に立つこと間違いなしです!
『プロダクト・リアルトーク~愛されるプロダクトの作り方~ 第3回 クラウドファンディングで1億円以上集めた、次世代モビリティが持つ共感力』
http://schoo.jp/class/7240/room
文=田中ラン
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コンセプトの話に入る前に、「GFR-01」と「X-SCOOTER LOM」についてご説明いただきました。GFR-01は自転車型の電動バイクで、X-SCOOTER LOMは電動キックボードのような、立ち乗りのスクーターです。X-SCOOTER LOMアクセル操作だけで30kmほどのスピードで走行できて、ワンタッチで折りたたみ可能。今までのスクーターの概念が覆される乗り物であることが分かります。