目次
- DXプロジェクト成功には計画と社内合意
- 社内の課題を見つけるうえで重要な2つの問い
- 3ステップで現状を分析し、解決策を策定する
- KPIを定めた定例会で推進力を高める
2022.11.08
あらゆる業種や業界でDX推進が進む一方で、『自社でも本腰を入れてDX推進に取り組んでいきたいけれど、どのように進めていいか分からない』という悩みは多いようです。社内のDXプロジェクトを企画だけで終わらせずしっかり進めていくにはどうするべきか。計画の作り方からプロジェクトが形骸化しないための社内プロセスの考え方を紹介します。
※この記事は、ディップ株式会社dip Robotics室長/人間中心設計専門家の亀田重幸さんが講師を務めたSchooの授業「いまさら聞けない『DX入門』」の第2回『実践者が解説するDX推進計画づくりの指南』を再編集したものです。
続いてはいよいよ本題、「DXプロジェクトの計画書の作り方」です。
計画書の内容は、以下の6つがあれば大丈夫です。
・課題
・現状
・企画
・運用
・体制
・スケジュール
DXプロジェクトだからと言って特別な見出しや要素があるわけではありません。通常のシステム開発などの計画書と基本的には同じです。ただし、特に目を向けるべきものがあるとすれば「ビジョン」です。「何のためにDXを進めるのか」と未来の方向性を示すことが求められます。
ビジョンを正しく提示するために重視すべきなのが、前半に位置する「課題」「現状」「企画」の要素。ビジョンに共感してもらえるように、納得してもらえるように意識しながら、ビジネスの課題や貢献度も考慮しつつ洗い出していきましょう。
そして、前半の中でも特に重要なのがやはり「課題」の設定です。間違った課題設定をしていると、その後のビジョンや計画、さらにはプロジェクト自体の方向性を誤ることになります。
課題を見つけ、設定する時に問いかけるべきは以下の2つです。
・ビジネス上の課題に紐づいているか
・誰が何にどのくらい困っているのか?
非効率な業務や眠ってしまっているデータなど、課題を見える化し、改善点を明確に提案します。それをもとに「ビジネスをどう変わるか、変えていきたいか」というビジョンを策定しましょう。
ここまでを明確に定めてからでないと、「運用・体制図」「費用対効果」「スケジュール」といった詳細の検討に進むことができません。
課題を見つけ深ぼるためにはアンケートをとってもいいですし、インタビューすることも有効です。できるだけ現場の人と同じ目線で考えて業務について深く理解し、課題を洗い出した後で、課題の大きさや改善の効果を比較し、優先づけしていきましょう。
DXの計画は、プロジェクト自体を一つの“ビジネス”と捉えるマインドセットが重要です。
課題の次は現状分析です。
ここで意識すべきなのが以下の3ステップ
・システムの現状を理解する
・データの現状を理解する
・あるべきシステムデータの理想の姿と現状のギャップを分析する
大事なのはシステムを全てつなげて見ること。例えばECサイトなら、買い付けた商品を登録してからそのデータをサイトに掲載し、購入につなげ商品を配信する。こうした流れを可視化します。
そうすると、業務プロセスと各ポイントでどのようなデータが得られるかが整理できるはずです。それと重ね合わせるのがシステム上の課題を探していきます。
「データ登録が面倒」「商品検索が遅い」など、課題とともに現状を書き出し、理想のシステムを導き出します。
課題とデータ、現状と理想がはっきりとしたら、やっと本格的に企画を立てることができます。ビジョンと照らし合わせながら、解決策の方向性を探っていきましょう。
企画が詰まったら、運用や体制図の作成に移りましょう。「やり方」をすり合わせるのは全社的な協力が欠かせません。ここもプロジェクトの成功のためにはしっかり押さえておかねばならないところです。
ROI、検索速度、削減工数などを盛り込んだKPIレポートを作成し、DX推進を目的とした定例会を設定しましょう。現場のスタッフに加えて、経営層を巻き込むことでプロジェクトは一気に加速します。
データを取得するためにrecolinやkintoneといったサービスを用いて売り上げ情報・顧客情報を収集し、そのデータを用いて営業DXに着手するという流れです。まずこのように先の展開を示しながらそこまでに踏むべきステップを説明することでビジョンは伝わりやすくなるでしょう。
さらに改善策をイメージしやすいよう具体的に整理していきます。たとえば 申込書の作成を効率化するために、使いづらいシステムを廃止し、取得したデータを顧客レコメンドや受注予測、最適なプランの提案といったさまざまな用途に活用していく、といった形でまとめていきましょう。
企画が詰まったら一安心……ではありません。運用のやり方や体制図の作成もプロジェクトの成功のためには押さえておかねばならないところです。運営のやり方をすり合わせるのは全社的な協力が欠かせません。
ROI、検索速度、削減工数などを盛り込んだKPIレポートを作成し、DX推進定例会を開きましょう。ここに現場のスタッフに加えて経営層を巻き込むことで推進が一気に加速します。
現場や経営陣を巻き込む際、費用対効果を明確にしておくことは効果的です。どれだけの工数削減やコスト抑制につながるのか、ざっくりとでよいので数字で求めておくこと。ここまでできたら、スケジューリングなど実施についての議論へ進むことができます。
DXを推進する際の大きなポイントは“全社を巻き込む”ということ。そこを強く意識した上で、課題や現状を把握するところから取り組みをはじめてみてください!
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DXプロジェクトが企画され立案まで進んでも、実際に動き出せないというケースは多く、まま、「あるシステムの導入やデジタル化だけで終わる」「全社レベルの大きな成果が出ない」といった声も聞かれます。
プロジェクトを形骸化させることなく、組織内に広く影響し、本来想定した効果を生み出すDXプロジェクトに欠かせないのが「社内合意」です。
DXとは、単なるデジタル化ではなく、会社の利益という結果まで見据えたもの。すなわち、システムを導入することでもなければ、単純な業務効率化だけでもないのです。デジタライゼーションはDXの一部にすぎないのです。
そして、会社や組織全体の合意を得るために必要なのが「実施計画書」。DXの関連書籍にはよく社内の組織体制や推進体制についての話が出てきます。さまざまな価値観や異なる役割を持つ人が集まっている以上、計画がなければプロジェクトは動かないものです。