目次
- アニメがヒットコンテンツの主軸となる時代に
- 『鬼滅の刃』に見るアニメ作品のヒットまでの道筋
- 2021年は新旧問わずアニメを基軸にした流行に注目
2021.02.08
アニメやゲーム、そこから生まれたキャラクターと共に成長を続けてきた日本のコンテンツ市場。特にアニメコンテンツは近年世界各国から注目されており、北米や中国での需要は根強いものとなっています。なぜ日本のアニメコンテンツは世界中に広まり、快進撃を続けているのでしょうか。
今回の授業は、ブシロード執行役員でありエンタメ社会学者の中山淳雄(なかやま あつお)先生に、アニメ市場の傾向や今後の流れについて聞きました。本記事では、メディアとヒットコンテンツの関連性についてまとめます。
現代のヒットコンテンツを象徴する事例として、2020年に大ヒットした『鬼滅の刃』を挙げます。『鬼滅の刃』は連載からアニメ化、テーマソングのヒット、映画化と約4年にわたって人気が高まり続け、その間コミックの売上は年々増え続けました。これほどのヒットは『ワンピース』や『進撃の巨人』といった過去作品と比べても異例です。
この歴史的ヒットを支えたのは、作品の普及に重きを置いた戦略です。『鬼滅の刃』のアニメは、テレビ放送開始と同時に14もの配信プラットフォームでの視聴を可能にしました。
さらに、アニメ放送終了直後の映画化も功を奏します。アニメで全話を描こうとすると長期間が必要になることを踏まえ、物語の中盤となる山場のストーリーを映画化したのです。常に話題の絶えない作品として注目を集めたことで、『鬼滅の刃』は一大ムーブメントとなりました。
このように、戦略的にメディアを選んで作品を届けることがヒットにつながるケースが、現代のコンテンツビジネスの潮流といえます。いわば、コンテンツは“プロダクト”ではなく“サービス”になりつつあるのです。
アニメからさまざまなメディアミックスを経てファンを増やし、コミックスで回収するモデルは、2020年からアニメ放送を開始した『呪術廻戦』などにも当てはめられます。今後、こうしたアニメ化をもとにヒットを生み出すコンテンツビジネスが主流になるでしょう。
また、アニメを主軸にしたメディアミックスは、新しい作品だけでなく古い作品でも期待できます。『ドラゴンボール』は現在も劇場版作品やアプリゲームなどを生み出しており、根強い人気を誇ります。
1990年代、一時期は“オタク”という言葉と共にネガティブなイメージを持たれがちだったアニメは、現在年齢層や性別を問わず多くの人々を魅了するエンターテインメントへと成長しました。コロナ禍で共通の話題として楽しめるという点も追い風になり、2021年はますますアニメ作品への注目が高まることでしょう。
文=宿木雪樹
今回は『2021年大予測シリーズ』から第1回『2021年のコンテンツビジネスの潮流——「2.5次元コミュニティ」が世界の主役に』の内容をお届けしました。今後どのような市場の変化が予測されるか、他の視点からも知りたい方は、他授業も併せてご覧ください。
『2021年大予測シリーズ 第1回 2021年のコンテンツビジネスの潮流——「2.5次元コミュニティ」が世界の主役に』http://schoo.jp/class/7465/room
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1990年代、コンテンツ市場を賑わすキャラクターのほとんどはゲームや玩具、コミックから生まれていました。2000年代、それに代わるように台頭したのがアニメです。この潮流は日本独自のものでなく、同じく多くのキャラクターを輩出する北米でも同じ傾向が見られます。『アナと雪の女王』や『鬼滅の刃』など直近のヒット作品を思い浮かべれば、アニメを主軸としたヒットのイメージがつきやすいでしょう。
とはいえ日本国内のアニメ市場は、2014年をピークに徐々に縮小しています。それでもなおアニメの影響力が高まっているのは、海外市場が大きくなっているからです。海外でアニメの人気が高まっている大きな要因は、ネット配信の普及です。配信プラットフォームの充実によって日本アニメをリアルタイムかつ字幕で楽しめる地域が増えたことで、2014年ごろから海外のアニメ市場は急激に成長しました。メディアの変化により、コンテンツビジネスの主戦場が変わったともいえるでしょう。