目次
- 怒らない技術はひとつではない
- 怒ったらどうするか? 対処法としてのアンガーマネジメント
- 怒らないためにどうするか? 体質改善のためのアンガーマネジメント
2021.04.30
怒りをコントロールする技術──アンガーマネジメント。
感情に振り回されてビジネスの場で失敗してしまわないために、すべてのビジネスパーソンが身につけたいスキルです。
Schooの授業シリーズ『怒りをコントロールするための「アンガーマネジメント」入門』では人づくり・組織作りに特化したスクール形式で日本一のビジネススクール『リーダーズアカデミー』代表であり、シリーズ100万部のベストセラー『怒らない技術』著者の嶋津良智先生を迎え、アンガーマネジメントのノウハウについてみっちり伺いました。シリーズ第二回のタイトルは「仕事でも家庭でも活かしたい怒りのコントロールのコツ」。
本記事で具体的なアンガーマネジメントの手法をまとめて学びましょう!
怒りをコントロールするために重要なポイントとして嶋津先生が掲げるの「反射しない(=間をおく)」。「約6~10秒の間をおくことで『感情系』から『思考系』に経路を移る作業ができると」と先生。それでは、間をおくためには具体的にどのような手段が取れるのでしょうか?
先生は対処法として以下のようなアンガーマネジメント技術を列挙します。
・タイムアウト(その場を離れる)
・ストップシンキング(思考を止める)
・スケールテクニック(レベルをつける)
・プレイロール(理想の人物を演じる)
・リフレーム(受け取り方のメガネをかけかえる)
・ポジティブフォーカス(良い部分に目を向ける)
・キープメンター(メンターを持つ)
・ファーストファクター(第一感情を探す)
・リロケーションアイ(目の前の景色を変える)
例えば会議などで議論がヒートアップして怒りの感情が湧いてきたときにいったん休憩時間を設けるのがタイムアウト。最近ハッピーだった出来事をいつでも思い出せるように用意しておいて「怒りが湧いてきたな」と自覚できたら、思考をいったんそちらに移すのがストップシンキングです。
先生は親向けのアンガーマネジメント講習において、「子供に対して怒りが湧いた時には何の意味もなくていいから台所にいって、冷蔵庫を開いてそこに頭をつっこんでください」と指導しているといいます。一見ばかばかしく思えますが、間をおいて、その場を離れ、思考を止めるという3拍子がそろった非常に理にかなったテクニックです。
3つめのスケールテクニックは先に述べたように怒りのレベル設定を利用し、ほかの場合に覚えた怒りと現在湧いてきた怒りを比較する手法です。怒りを比較することで客観的な視点を獲得し、「気にしない」という選択肢を選ぶことも容易になるということです。
客観視を別の方向性から実現するのがプレイロール。自身の尊敬する人物の視点を借りることで、怒りの感情をいったん横におくことができるのです。思い浮かべる人物は歴史上の人物やキャラクターなど自由に設定してみてください。
5つ目のリフレームも客観視の手法。例えば「上司から理不尽な怒られ方をした!」と感じるとついつい感情が乱されてしまいますが、「もしかしたら自分の行動にも誤解を与える余地があったかも……」と怒りにストップをかけることができます。
ポジティブフォーカスはその名の通り、ポジティブな思い出や思考に焦点を当てること。家庭内のもめごとが起こりそうな際も相手が良いことをしてくれたこと、楽しかった思い出に思考を切り替えてみることが肝心です。
キープメンターのメンターとは、怒りの感情を吐き出せる相手のこと。友人や配偶者だけでなく、ブログを読む不特定多数などでもかまいません。自分が、いかに腹が立ったかということを聞いてもらえるだけでもだいぶ楽になるものです。もちろん八つ当たりは厳禁。メンターには怒りを受け止めてもらえる感謝の気持ちを持ちましょう。心配な方は、宛先なしのメールなどでもOK。とにかくいったん別の場所で「吐き出す」ということが重要です。
「どちらかといえば対処法ではなく体質改善につながる」として先生が紹介するのが以下のアンガーマネジメント手法です。
・アンガーログ(怒りの記録を取る)
・ブレイクパターン(パターン回避)
・アクトカーム(怒らないと決める)
・チェンジコアビリーフ(価値観の書き換え)
みなさんは自分の体重と食べたものの記録を残す“レコーディングダイエット”というダイエット手法をご存じでしょうか。アンガーログはいわばその「怒りバージョン」。怒りの記録を取ることで自然と怒りのダイエットが進みます。また、記録を取ることで「自分が怒りを覚えるパターン」も見えてきます。パターンが見えたらその状況に陥らないための対策を事前に行うことが可能になります。それがブレイクパターンです。
非常にシンプルながら強力なのがアクトカーム。例えば「今日の午前中は絶対怒らない」などルールを決めて試してみることで「意外と怒らずに過ごせるものだ」という気付きが得られます。
「これらのテクニックは覚えたらすぐできるのは大間違いです」と嶋津先生。ピアノあるいはスポーツなどと同じく、ビジネススキルも日々訓練を重ねることでやっと身につくものだと断言します。 まずはひとつのテクニックからでも明日といわず今日から、ぜひ実践してみてください。
また、「そもそもなぜアンガーマネジメントが必要なの?」という基礎から学びなおしたいという方は、アンガーマネジメントの基礎編ともいえる第一回「価値観が多様な時代に学ぶ「アンガーマネジメント」のキホン」の録画授業を受講してみてください!
文=宮田文机
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怒らない技術には2つの方向性があると嶋津先生は語ります。一つは「対処法(怒ったらどうするか?)」で、もうひとつは「体質改善(怒らないためにどうするか?)」。
怒りは幅の広い感情であり、「0(穏やかな状態)」から「1~3(イライラする・不愉快・うっとうしい)」、「10(爆発)」までグラデーションになっています。人は「怒るか?/怒らないか?」という二者択一でついつい考えてしまいがちですが、段階があることを認識し、それぞれに対処法を準備していきましょう。
「アンガーマネジメントは怒りを『客観視』できるようになったら8割成功と言えます」と嶋津先生。客観視とは、「俺、今怒ろうとしてるな」「私今、怒りたいという感情を持ち始めた……」というように自分自身の感情を俯瞰して把握できるようにすることです。