目次
- “3つのズレ”から生じる、ダメ・コミュニケーション
- 離職を決めた人の約8割が、社内の人間関係に悩んでいた!
- ダメ・コミュニケーションは、傾聴で改善!
2022.03.10
新人や中堅層を一人前のビジネスパーソンに育てるためには、ただ業務を教えるだけでは不十分でしょう。彼らとコミュニケーションを取って人となりを知り、関係を構築することも必要です。
ただプライベートとは違い、何度も話しているからといって良い関係が構築できるわけではないのが、ビジネスコミュニケーションの難しいところ。きっと「まだ部下と関係を築けている気がしない……」「部下と面談しても本音を言っているようには思えない……」といった課題を感じている人も少なくないでしょう。
『60分で変わるダメ・コミュニケーション改善術』では、そんな新人や中堅のマネジメント層の育成や人材の育成に課題を感じている人におすすめのコミュニケーション改善方法が紹介されています。講師を務めるのは、国際キャリア・コンサルティング協会(ICCA)の代表理事・長井亮先生。
これまで数多くのキャリア・コンサルティングの普及に取り組んできた長井先生曰く、「部下との関係構築に課題を感じている人は、無意識に“ダメ・コミュニケーション”を取っているかもしれない」とのこと。“ダメ・コミュニケーション”とは、具体的にどのようなものを指しているのでしょうか?ここでは、授業内容の一部をご紹介。
一見、ダメ・コミュニケーションと離職はあまり関係がないように感じます。しかし先生が、転職活動中のビジネスパーソンに向けて転職理由の調査をおこなったところ、約8割が社内の人間関係の悪さをきっかけに転職活動を始めたとわかったそうです。
またその人たちの話を深堀した結果、転職活動を始める人は無意識に上司や部下とのダメ・コミュニケーションを積み重ねていることがわかったと先生は語ります。
「実際に、我々のところへキャリア相談をしにくる方もいらっしゃいます。最初はその人たちも『キャリア相談に来た』と言うんですが、最終的に行きつくのは、上司や部下との人間関係に関する悩み相談。そしてその多くが、ダメ・コミュニケーションを何度も取ったことで要因の悩みばかりなんです」
ただこうした現状は、ダメ・コミュニケーションを改善させるチャンスでもあります。先生も「ダメ・コミュニケーションに焦点を当てて対策を考えれば、改善できる可能性は十分にある」と語ります。
いよいよ先生は、ダメ・コミュニケーションの改善方法について触れていきます。最初に挙げられた方法は、相手の話に耳を傾け熱心に話を聞くこと、すなわち「傾聴」でした。先生曰く、傾聴こそがビジネスコミュニケーションにおいて最も重要であり、上司や部下と関係を構築するための第一歩になるとのこと。
ここでも先生は、事例を用いて解説を加えます。以下の会話はダメ・コミュニケーションが無意識に出ている悪い事例です。
1度読むだけで、Bさんの反応があまりにも薄くダメ・コミュニケーションにつながっていることがわかりますね。Aさんと関係を築くのであれば、彼の話を傾聴しつつ、言葉や気持ちに寄り添うような返答をするべきでしょう。
では、具体的にどのような返答がベストなのでしょう。先生は傾聴の姿勢をより強くするために「オウム返し」と「自分の意見・感想を付け加える」といった方法をおすすめします。以下はこれらを使った返答例です。
こちらの返答の方が、BさんがAさんの話を傾聴しているように感じます。「AさんはBさんのことを、話を聞いてくれて頼りになる存在として認識するでしょう。きっと、より良い関係を築きたいと思ってくれるはず」と先生は語ります。
もちろん、こういった手法は部下との定期面談や、ふとした時の会話の中でも活用可能です。部下との関係構築に課題を感じている人は、まずは部下の話を傾聴してみてはいかがでしょうか。また、必要であれば自分の意見や感想を付け加えてみましょう。
授業ではこの後、「今日から使えるダメ・コミュニケーション改善に適した3フレーズ」や、上司や部下とより良いコミュニケーションを取るためのテクニックが紹介されます。社内でのコミュニケーションに悩む受講生からの質問タイムでも、具体的なシーンを想定した質問が取り上げられ、先生が丁寧に解説していきます。詳細は、ぜひ授業で確かめてみてください!
文=トヤカン
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さっそく先生は「ダメ・コミュニケーションは、以下の3つのようなズレが要因となった場合に生じやすい」と語り、それぞれに関する具体例を提示します。
・コミュニケーションロス・共通認識のズレ
・価値観の違いによるズレ
・意識の違い・思い込みによるズレ
例えば、上司が部下に「あの件に関する調査を進めてほしい」とお願いしたが、部下が提出した調査結果は上司が進めてほしかったものとは異なっていたという場合。これは、コミュニケーションロス・共通認識のズレによって生じたダメ・コミュニケーションと言えるそうです。お互いにしっかりコミュニケーションを取り「あの件に関する調査」の具体的な内容を確認しておけば、ズレもダメ・コミュニケーションも生じなかったと考えられます。
また、上司が部下にクレームを受けたお客さんへ「早急にお詫びの連絡をするように」と指示を出したものの、部下は「そこまで怒っていないだろう」と判断し、お詫びの連絡を1週間後に入れたというケース。先生はこれを「上司と部下の価値観の違いによって生じたズレであり、ダメ・コミュニケーションの1つ」と語ります。上司と部下が、お客さんの怒り具合をお互いの価値観で測ってしまったため、「早急に」という言葉に時差が生じ、このような結果になったとのこと。
さらに先生は「部下に仕事を教えるとき『何度も教えたから、もう大丈夫だろう』という考えを持つと、意識の違い・思い込みによるズレが生じ、ダメ・コミュニケーションにつながる」と語ります。いくら自分では何度も教えたつもりでも、相手にとってはまだ不十分な可能性があるためです。
どの事例も、実際の仕事で実際に生じてしまいそうなズレばかり。新人や部下の育成に携わっている人は、こうしたズレが生じていないかを常に考える必要があるでしょう。ちなみに、先生は「ダメ・コミュニケーションが積み重なると“離職”という大きなリスクを生む」と語ります。