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2022.02.09

column

CMプランナーのキャッチコピー作りで学ぶ「論理と感性の使い分け」

CMプランナーのキャッチコピー作りで学ぶ「論理と感性の使い分け」

論理的な考えと豊かな感性、あなたはどちらが大事だと思いますか?

この問いに、絶対的な正解はありません。ただひとついえるのは、双方をうまく使い分けられることは、人生にプラスの影響を与えてくれる可能性が高いということです。

Schooの授業シリーズ『物事はすべてロジカルに決めることができるのか?』第一回のタイトルは、そのものずばり「論理と直感トレーニング」。永谷園「Jリーグカレー」や日本コカ・コーラ「ファンタ」など名だたるCMを手掛けてきた博報堂CMプランナー/コピーライターの井村光明先生による、「キャッチコピーを考える」ワークショップを通して、論理と感性の使い分けを学びましょう!

目次

  • 「選挙に行くこと」を促す5つのコピー
  • 2つの似たコピーを並べて、違いを考えてみる
  • 挑発的なコピー、「今」を感じさせるコピー
  • コピーを考えるときに行っていた「直感と論理の使い分け」

 

 

「選挙に行くこと」を促す5つのコピー

 

 

さて、さっそく「キャッチコピーのお題」を確認しましょう。今回井村先生が用意したのが「ラジオ」「選挙」「同窓会」の3つの選択肢、そこから受講生のリアルタイムの反応をもとに絞られたのは、「選挙に行こう」でした。ここから2分間で「選挙に行くことを促す」キャッチコピーを考え、タイムラインに投稿します。さらに授業は、「いいな」と思ったコメントに「電球マーク」で投票し、「気になるコピー」をピックアップする段階へ。

 

多数の投稿の中で投票数と井村先生の評価により選出されたのは、以下の5つのコピーでした。カッコ内は作者の投稿ネームです。

 

1.「1票のお値段。420万円」(長谷川さん)
2.「選ぶのは自分。さあ、手を挙げよう」(toriさん)
3.「行かないなら、文句ナシね。」(江村さん)
4.「誰が決める? 君が決める!」(村上さん)
5.「行きつけの居酒屋が潰れた」(岩崎さん)

 


2つの似たコピーを並べて、違いを考えてみる

「キャッチコピーは明らかに『違う』単語が入っていた方がいいんですね」と井村先生。その意味で目を引くのはやはり、一つ目の「1票のお値段。420万円」です。これは、国家予算を国民一人当たりで割った金額のようです。であれば、わかりやすくするためには「1票の420万円を捨てるのはもったいない」と書いてもいいかもしれないと先生は語ります。また、「ミスミス捨てるのはもったいない」と付け加えるというアイディアもピックアップされました。

 

 

 

反対に、ほかと「同じ」になってしまいがちだった単語は、「未来」「自分の意思を」など。このような単語を使ったコピーはやはり埋もれがちだったという事実は、ひとつの教訓となるはずです。

 

2番の「選ぶのは自分。さあ、手を挙げよう」と4番の「誰が決める? 君が決める!」を取り上げ、「(2つは)ちょっと近いなと思いませんでした?」と井村先生は尋ねます。いずれも、声に出して読むと「テンポがいい」という特徴も共通しています。

 

さて、では2番と4番のいずれかに投票しなければならないとなったら、あなたはどちらのコピーを選びますか?

 

 

 

先生が両者の「違う」ポイントとしてまず、指摘するのが「自分と君」という一人称。自分の方が軽やかで後者の方が強い印象を与えるという分析がなされます。どちらが良いかは好みの問題としつつ、先生は4番を支持する意見がやや多いタイムラインの風潮を受けて、「ちょっと強めの方が現在は好まれるのかもしれない」とコメントしました。

 

また、先生は2番の「手を挙げよう」という表現が「選挙」という言葉そのものから発想されたものであることに注目し、その言い回しに面白みを感じる可能性もあると評価します。

 

実際の広告会社でコピーを考えるときも、このように複数のコピー案を出して比較するそうです。類似するコピーを比較して、自分はどちらのコピーが好きだろうか、またそれはなぜだろうかと考えブラッシュアップを重ねるのはプロもビギナーも同じ。ご自身が文章やキャッチコピーを考えるときにもぜひ参考にしてみてください。

 


挑発的なコピー、「今」を感じさせるコピー

3番の「いかないなら、文句ナシね。」を見て「挑発的なのはドキッとしますね」と井村先生。また、作者の江村さんは最後に「ね。」と柔らかく占めることでかわいい印象を与えられるよう工夫したともコメントします。

 

井村先生曰く、これは「2番と4番の逆」。素直に「選挙に行こう」とメッセージを発している2番・4番とは逆に、3番では「行かないなら後から文句をいうな」と行かない人を挑発しています。先生は自分なら「今行かないと手遅れですよ」など、もっと挑発的なコピーを考えるかもしれないと語りました。

 

 

 

最後の5番目のコピー「行きつけの居酒屋が潰れた」。先生は、最もなぜ投票されたのかを聞いてみたいコピーだと語ります。一見選挙に関連するコピーだとわからないような文言ですが、政府の助成金問題を思い出すなど一番「今」を感じさせるフレーズでもありますね。

 

作者の岩崎さんは「政治を自分ごととして捉えられるタイムリーな話題。今日考えられると思ったので」と制作意図を語ります。それを受けて井村先生は「これ、直感で考えました? それとも論理的に考えました?」と質問します。その答えは、「今回は直感ですかね…。似たようなことをかんがえていたのでそれまでに論理的な土台があった気がします」というものでした。

 

先生はこのようなキャッチコピーを考えるときには必ずポスターになった姿をイメージしてみると語ります。「行きつけの居酒屋が潰れた 第〇〇回衆院議員選挙…」と実際のポスターにされている姿を想像すると、一見関連が薄く感じられるコピーもマッチして感じられるかもしれません。

 


コピーを考えるときに行っていた「直感と論理の使い分け」

さて、これまでの議論を経て、最終的に5つから1つに絞る決戦投票を行います。最終的に選ばれたものは──ぜひ、実際の授業動画でご確認ください。

 

さて、井村先生は実は、5つの中で最も票数の少なかったコピーに着目し、「このコピーを採用してもらえるよう説得しなければならないとすればどうしますか?」と課題を受講生に与えました。

 

最初に2分間で考えたコピーは「直感」あるいは「自分の中の常識」から生み出されたものだと先生は指摘します。それをブラッシュアップする作業は「直感から生まれたコピーのエッセンスを論理でわかりやすくする」工程でした。一方、常識から生まれたコピーは論理でわかりやすくしても当たり前に感じられてしまうことが多いので、そこからのジャンプが必要になります。

 

これが、コピーを通して習得できる直感と論理の使い分けです。自分も無意識にその作業を行っていたことに、みなさんも気づかされたのではないでしょうか。もう一度このことを意識しながら、アイディアを練り、ブラッシュアップしてください。今までにない頭の使い方ができるようになっているはずです!

 

文=宮田文机

今回取り上げたSchooの授業はこちら!
『論理と直感使い分けトレーニング』

 

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