目次
- 世界で最も偉大な発明をした人は誰?
- 言葉で企画するための武器、3つの接続詞
- 「I LOVE YOU」を実際に訳したら
2020.07.27
言葉を使って心を動かす。
仕事でもプライベートでもそのようなことができればどんなにいいだろう……と考える人は少なくないのではないでしょうか。
そんな望みを叶えてくれる「言葉の使い方」のスペシャリストが、「今でしょ! 」が話題になった東進ハイスクールのCM「生徒への檄文」篇の制作に携わるなど数々の名コピーを生み出した株式会社電通のコピーライター阿部広太郎先生です。
2020年3月に『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』を世に送り出した阿部先生。
「心をつかむ超言葉術」と題した全4回の授業で“人の心を動かす”企画書の書き方、贈り方をレクチャーします。
第一回のテーマは「『I LOVE YOU』の訳し方」。夏目漱石の有名な逸話を基にしたレクリエーションを通して、伝わる言葉を考えるためのノウハウを知りましょう!
具体的な言葉の企画として先生により挙げられたものの一つが「DJポリス」。
2013年サッカー日本代表がFIFAワールドカップ出場を決めたことで沸く渋谷のスクランブル交差点で円滑な交通を確保するためにDJポリスが行ったのが「サポーター→12番目の選手」と定義することでした。サポーターの見方を「12番目の選手」と定義し直すことが、交通整理という課題の解決につながったのです。
もう一つの例は自転車の違法駐輪を防ぐための看板。「放置自転車→不要自転車」といい方を改め、「不要自転車です(ここの放置自転車はご自由にお使いください)」と掲示することで違法駐輪の削減につながりました。「もう要らない自転車であれば勝手に使ってもいいはずだ」という新たな放置自転車の見方を企画したというわけですね。
「書くこと(Writing)は光を当てること(Lighting)でもある」と先生。現状をどうポジティブにとらえられるかを左右する「ポジティブ眼」を持ちましょう。「世界は変えられないけれど、受け取り方は変えられます」と先生は断言します。そのための手段が「言葉で企画する」ことなのです。
じゃあ具体的にどう企画するの?
そう疑問を抱いた人に向けて先生が授ける武器が以下の3つの接続詞です。
・そもそも
・たとえば
・つまり
まず企画の対象となるものや概念について「そもそもそれは何か?」という問いを抱きましょう。その時に助けとなるのが自分の中に蓄積された経験(例えば)です。「心の中にも辞書はあります。経験という名の辞書をひきましょう」と先生。最後に経験から導き出した本質を「つまり」と引き出して言葉にしましょう。そうして生まれるのがコピーです。
意識は氷山の一角に例えられる通り、その下には巨大な無意識が眠っています。「『無意識を意識化するのがプロ』であり、無意識に手を伸ばした回数を増やすことが成長のカギだと」先生はいいます。
授業の後半では自分の言葉で「I LOVE YOU」を訳すレクリエーションが行われました。
「夏目漱石は、弟子が翻訳してきた『我君ヲ愛ス』を読んで考えた。最愛の人にそう伝えたら、気持ちは伝わるだろうか?」
先生はそう想像を巡らし、「月が綺麗ですね」という共感の気持ちに漱石は愛を見出したのではないかと語ります。
授業で先生が提示した「I LOVE YOU」の翻訳例を見てみましょう。
・半分こにしようか (by ヤギワタル)
・あ、消しゴム落ちたよ。 (by 阿部広太郎)
・もうあとに戻れないな。 (by 東京スカパラダイスオーケストラ 谷中敦)
・長生きしてくださいね(愛とは“時間”である、と定義)
・あなたといる時はお酒が好きです(愛とは“食欲”である、と定義)
・月に行かない?(愛とは“未来”である、と定義)
「たとえば」と「つまり」でカメラのピントを広げ絞るように交互に言葉を考えていくことで、さまざまな視点から自分だけの言葉を紡いでいくことができます。
さあ、今から5分間であなたも自分なりの「I LOVE YOU」を考えてみてはいかがでしょうか。
ほかの受講生のみなさんが実際にどのようなコピーを考え、それに先生がどのような講評を送ったのかは授業動画で確認できます。
最後に先生は「すべての仕事の根幹は「I LOVE YOU」にあるのではないか?」と提起します。Iは、自分とは何かを考えること、LOVEは人と人との関係を考えること、YOUは自分から見た相手を考えること。続きはぜひ授業の動画や先生の書籍、SNSを見ながら考えてみてくだい。
この授業は『心をつかむ超言葉術』の第一回です。言葉での企画力をもっと磨きたい!そう思った方は第二回「忘れられない「自己紹介」のつくり方」や第三回「記憶に残る「名前」のつけ方」の授業も受講してみましょう。
『心をつかむ超言葉術 第一回 「I LOVE YOU」の訳し方』http://schoo.jp/class/6871/room
『心をつかむ超言葉術 第ニ回 忘れられない「自己紹介」のつくり方』 http://schoo.jp/class/6872/room
『心をつかむ超言葉術 第三回 記憶に残る「名前」のつけ方』http://schoo.jp/class/6873/room
文=宮田文机
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「言葉の企画とは何か」を伝えるにあたってまず阿部先生が提示するのが以下の2つの問いです。
【1】今、日本で一番流行しているものは?
【2】作家開高健氏が考える世界で最も偉大な発明をした人・それはどんな人?
一つ目の問いの答えは「僕は『日本語という言葉』だと思います」と先生。日本語はさまざまな流行を生み出しながら人々の意思を伝える手段として連綿と使い続けられてきました。「言葉=人々の心をつなぐライフライン」とも考えられると先生はいいます。
二つ目の問いの答えは「ライオンという言葉を発明した人」。自身もコピーライターの先輩からこの答えを教わったという先生。2度、3度とこの答えをかみしめるにつれて「言葉→概念→行動」という方程式が見えてきたということです。
強力な脚や鋭い爪を持つライオンは言葉がない時代、恐ろしい混沌の塊でしかありませんでした。しかし、ライオンと名付けることで「ただの四つ足の獣」という風に人々のとらえ方が変わります。
そうすれば、例えば「恐怖の塊→ライオン→闘える」や「恐怖の塊→ライオン→逃げる」といったように向かうべき行動も見えてくるわけです。
このように「みんなが扱う言葉にこうなってほしい、こう伝わるといいなという思い『ヤジルシ(→)』を加えること」が言葉の企画だと先生は定義しています。