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2020.09.27

Column

有名人のスキャンダルに潜む心理「モラル信任効果」の謎

有名人のスキャンダルに潜む心理「モラル信任効果」の謎

商品やサービスにあふれた現代。誰もが毎日、どんな瞬間でも、次々と「何を買うか」を考えて、選択しています。モノやサービスには値段があり、それぞれの特性がありますが、はたして人間は「合理性」のみで決断を下しているのでしょうか。実は、経済活動にも「心」の問題が大きく関わっているのです。

今回は、データサイエンティストであり『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』の著者である松本健太郎さんと、note株式会社の徳力基彦さんの対談を中心に、最新の行動経済学について解説します。

目次

  • 経済的合理性だけでは人は動かない

 

経済的合理性だけでは人は動かない

 

 

安い服と高い服があったとして、全員が「経済的合理性」から安い服を購入するとは限りません。また、靴に求められる機能として「頑丈さ」は重要ですが、「壊れやすく、雨の日に履けないような弱い靴」が売れていることも事実です。

 

モノの機能として劣っている「高い服や弱い靴」でも、「好きだから」買われることもあるわけです。

 

この簡単な事例からわかるとおり、人間は「経済的合理性だけで」行動してはいません。「なんとなく好ましいから」という感情が経済性を上回る可能性も十分にあります。

 

 

先日、黒人差別に端を発する騒動から、企業に対するバッシングに発展した事件がありました。過剰なまでに燃え広がったこのバッシング騒ぎには、行動心理学で言うところの「投影」の作用が働いていたとされます。

 

本来は企業と消費者個人とは別物ですが、企業に対して「なぜ動かないのか」と迫ってしまう理由は「実際には何も行動ができない無力な自分」へのやり場のない怒りです。

 

自分のマイナス面を直視したくない思いによって、「自分のイヤな面は自分のものじゃない。自分より大きな企業のイヤな部分だ」と、他者に押しつけてしまう心の働き、それが「投影」です。

 

 

現実の世界とちがい、SNSの世界では「自分と同じ意見のグループ」で固まることが容易です。

 

周りを見渡すと「みんなが同じ意見を言っている」。
私の気持ちに「みんなが賛成してくれている」。

 

この「似た者同士が集まり、似た意見のみが優先的に目に入る」サイクルが回ることで、怒りや悲しみといった「強い感情」は瞬く間に伝播し、拡散されることになります。

 

SNSのシステムとして「ユーザーの志向に合った広告やユーザーをサジェスチョンする」機能もあるので、それらのバイアスに自覚的にならないと偏った意見に振り回されてしまう可能性があります。

 

「みんな○○しているから」と思ったら、いったん立ち止まることが大切です。

 

 

「就活時の女性の髪型を自由に」とうたって、シャンプーの売り上げがV字回復したブランドがありました。

 

ブランドの姿勢に共感し、その「好ましさ」から商品を購入する流れは、ポジティブな心の動きといえます。しかし、それは裏を返すと、「買う理由作り」と言うこともできます。

 

人間は日々、生きているだけでさまざまな決断をしていますが、決断には責任が伴うため、かなりの精神的コストがかかります。そのため、知らず知らずのうちに「決めたことを翻したくない」「この選択が正しかったと思い込みたい」という心の働きが生まれます。

 

決断に至る精神的コストの省エネ化のためには、「数多くある選択肢をあえて見ないようにしてしまう」ことすらあるのです。

 

 

「あの人が、なんであんなことを」といった事例はよくありますよね。それも大抵の場合、有名人だったり、人格者と呼ばれていたり、ふだんは「やらかし」をするようなそぶりもない人ばかり。こういったスキャンダルはなぜ起こるのでしょうか。

 

それは一つに、「モラル信任効果」が働いているとされています。人間は、自分が他者に信頼されたときに、「信頼の貯金ができたから、少しくらいの無作法なら許されるのでは?」と考えてしまいがちです。「自分は「素晴らしい人間(貯金プラス)だから、やらかし(貯金マイナス)を相殺できる」という理屈です。

 

ただ、実際には「自分の思っているマイナス量」と「他者の感じるマイナス量」とのあいだに大きな差があるため、予想以上に評価がガクンと下がって取り返しのつかない事態に追い込まれてしまうわけです。

 

実際の授業では、徳力先生によるSNSやマーケティングの観点からの意見や、受講生からの具体的な質問に対する応答もありました。本記事で興味が湧いた方は、そちらもぜひご確認ください。

 

『仕事に活かすビジネス書『人は悪魔に熱狂する - 悪と欲望の行動経済学- 第4回 特別対談『人は悪魔に熱狂する 』(ゲスト:note株式会社 徳力 基彦)』http://schoo.jp/class/7148/room

 

文=加藤敦太

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