目次
- “監視のない社会”を目指す国家「エストニア」
- 国民の99%が持つ「個人認証ID」
- 日本の未来を先進国から学ぼう
2023.03.06
行政サービスを効率化するテクノロジーを意味する、政府(ガバメント)と技術(テクノロジー)を組みわせた言葉「GovTech(ガブテック)」が注目されてから数年が経ちました。
日本でもマイナンバーカードの申請率が70%を突破し、ようやく行政サービスのデジタル化が進んできましたが、既に海外では当たり前のサービスとなっています。特に東欧のエストニアは、「GovTech先進国」として知られ、好事例が多く見受けられます。
2017年よりエストニアにおいてeResidencyや政府機関のアドバイザーを務めるblockhive 代表取締役CEO日下光さんが講師を務めた『GovTech! -デジタルで変化する信頼と行政の近未来-』から、“電子国家エストニア”の現状を通して、ブロックチェーンをはじめとするテクノロジーが私たちの暮らしをどのように変えるのか学んでいきましょう!
電子サービスは学校教育の現場にも普及しています。
●e-school
教師と生徒、保護者をつなぐプラットフォーム。政府主導のプロジェクトとして2002年にスタートしたのちに民営化をしています。学習状況や宿題の進捗、出欠管理、三者間のチャットがすべてがここでできます。
これにより、教師、生徒、保護者の三者間による情報の透明性を担保。教育機関での利用率は85%、コミュニケーションコスト50%の削減を果たし、教師や親が相談し合えたり、教師が一人ひとりの生徒と向き合えたりする時間が増えたそうです。そのおかげで、過去10年間の退学率が80%改善しました。
e-schoolはデータをリアルタイムで享受する分かりやすい恩恵です。エストニアの電子サービスは、目の前の人間ともっと向き合うためにテクノロジーを活用するという視点で設計されているのです。
また、エストニアは世界に先駆けて医療分野のデジタル化を推進。個人の健康を高める取り組み「e-Health」の先進国でもあります。
病院やクリニックがそれぞれに保管している患者のデータベースを統合したポータルサイト「EHR」や電子処方箋「e-Prescription」、30秒以内に救急車の電話を検出して緊急救急車を必要な場所に迅速に向かわせる電子救急車「e-Ambulance」などのサービスも普及しています。
他にも、世界初の国政選挙のオンライン投票「i-Voting」や海外にいながらオンラインで会社設立の登記手続きが行える電子サービスもあります。 「デジタル後進国」とも言われる日本でも、国家主導で急ピッチでデジタル化が進んでいます。
世界最先端とも言われる電子国家「エストニア」の行政サービスの事例が示す通り、日本でも「行政サービスのデジタル化」は当たり前となり、いつしか「書面での手続き」は過去のものとなるでしょう。
編集・文=青野祐治
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エストニアは人口132万人で、面積が約4.5万平方km。これは九州+沖縄の国土に、沖縄県程度の人口が住んでいる計算で、日本で言えば「過疎」とも呼べる規模です。
1991年の独立からわずか28年と歴史の新しい国です。 エストニアが電子国家になったのは「やらざるを得なかった」から。過疎地域で行政の担い手と財源が少ない中、テクノロジーの力を活用して俗人的な作業を減らす方法しかありませんでした。
もうひとつの理由は、監視の厳しい旧ソ連からの独立により、「監視のない社会」を国民に示すため。政府のコミットだけではなく、仕組みを通してフェアな透明性を保つために、電子国家となったと言います。