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2020.02.03

interview

“札束で殴り合う世界”を、日本のスタートアップ企業はいかにして戦うべきかーー五嶋一人×加藤將倫×江原ニーナ対談

“札束で殴り合う世界”を、日本のスタートアップ企業はいかにして戦うべきかーー五嶋一人×加藤將倫×江原ニーナ対談

「日本発のグローバル企業はどうすれば生まれるか 」(出演者:五嶋一人 / 加藤將倫 / 江原ニーナ)

日々更新されるニュースや情報を貪欲にインプットすればするほど、世の中と自分の差(=GAP)が明白になり不安が募り続ける現代。

そこで生まれたGAPを埋めるために情報取得だけでなく、その文脈や意味を理解していくことを目指す新番組『Bridge the GAP』。第一回目の放送では、目まぐるしく変わるスタートアップの世界を間近で目にしてきたお三方を先生にお迎えしました。

オールジャンル・オールステージを対象に幅広く企業を支援する五嶋氏にモデレータを務めていただき、2018年8月より「Progate」のインド市場進出を行われている加藤氏、シードステージ企業の支援やスタートアップ情報の発信をする江原氏のお二人からゲストとして情報提供いただきながら、3つのテーマを深ぼっていきました。

ここでは、「日本発のグローバル企業はどうすれば生まれるか」をご紹介していきます。

五嶋 一人 先生

iSGSインベストメントワークス 代表取締役/代表パートナー

加藤 將倫 先生

株式会社 Progate FOUNDER/CEO

江原 ニーナ 先生

ANRI シニアアソシエイト

田原 彩香

受講生代表

学びノート

SESSIONとはいえ、日本からもグローバル企業はたくさん生まれている

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さあ、「どうすれば日本初のグローバル企業は生まれるのか?」というところなんですが。

先進国別で2019年のユニコーン企業数は、アメリカが78、次いで中国が22、そのあとブラジル、ドイツ、イギリス、イスラエル、インドといった企業が名を連ねております。

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この点でも日本がまだまだ苦戦していることが見受けられます。

ここで、現在国内で色んな企業をご支援されている五嶋先生にご質問なんですが、日本初のグローバル企業が生まれてくポイントって、何かありますでしょうか。難しいと思いますが。

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冒頭と同じなんですが、グローバル企業の定義って一体何なんだってとこがあって。

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例えば海外に複数拠点をもっていて、売り上げの50%以上が海外だったら、それはグローバル企業って呼んでいいのか、とか。

拠点は日本にしかないけど、インターネットを活用して世界中の100か国で使われているサービスだったら、それはグローバル企業と言えるんじゃないか、だったりとか。

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色んな定義があって、それによって違うと思うんですよね。

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確かに。

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それこそ、グローバル企業が生まれていないのか、生まれているかの議論でいくならば、それこそSONYだCanonだHondaだっていう、グローバルで愛されているブランドだってたくさんありますし。

もちろん歴史あるメーカーだけでなく、エンターテイメントでいうならば、任天堂やスクウエアエニックスといった、たくさんのブランドが生まれていますし、ユニクロもイギリスから撤退したと言われながらも、今もグローバルでの売り上げも大きいですよね。

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グローバルで大活躍している日本企業は古くから今まで生まれ続けているとも言えるし、例えば飲食でも海外の主要都市に行くと、どこに行っても吉野家があって、丸亀製麺があって、銀だこがあって、みたいな。

結構日本の会社さんの食べ物をどこでも食べられることができて、コンビニに行ったら日本の食べ物が並んでいて。

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こうやって考えてみると、日本発のグローバル企業が「生まれていない」わけじゃないなと思うところはあるんですよね。

いわゆるユニコーンだったりとか、スタートアップという文脈の企業だと、日本にはまだ生まれていないんじゃないかということで、誤解が生まれているのかもしれないけど...日本発のグローバル企業って既にたくさん生まれてはいるし、生まれ続けてもいると思うんですよね。

SESSION「日本発のスタートアップ」でグローバル企業が生まれにくい理由

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なので、そこは僕としてのグローバル企業がどうしたら生まれるのかという定義で言うと、全体として生まれていないっていう前提に立つんじゃなくて、生まれてるという前提に立っていいと思っていて。

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ただ、いわゆるスタートアップ、インターネットの文脈の中では残念ながら、まだ出ていない。これはどうやったらいいんだという課題はあるのかなと。

巨大な資本力のある企業しかグローバル展開で大勝ち来ないんじゃないのっていう仮説が今、残念ながら成り立っていると思っていて、じゃあそこをどうやっていくんだっていう。

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実際にAmazonもそうだし、Googleもそうだし、みんな結構、札束での殴り合いを制してグローバル企業になってるということがあるので(笑) 

グローバル企業がどうやったら生まれるかというのは、ニワトリたまごで、スタートアップ的な文脈で言ったら「この会社グローバルで行ったら絶対勝てるな」というようなサービスを持って、大胆な資金調達をするのか。

自社の利益でやるのかは別にして、やっぱり海外に行って札束で殴りあう勝負ができるような会社が生まれてくることが、どうしても大事かなという気がしています。

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身もふたもない話で申し訳ないんですけど(笑) でもそこはすごい大事。やっぱりグローバルで成功しているスタートアップは札束で殴りあうのを制して、その地域に根付いているので。

なのでそこは、ほんとにやらないといけないし、日本ではまだ世界の投資家だったり、消費者だったり、金融機関から支持され信用されるだけのスタートアップが生まれていないとするならば、やっぱり僕らみんなで頑張らないといけないですね。

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確かに。それってなんでなんですかね? 

IT系のサービスだと出ていないっていうのは事実としてあるじゃないですか。それに対して、昔からあるような大きな企業さんとかは、たぶんもっと難しかった状況で海外展開を成功されていて。

今はITってオンラインなわけなんでシンプルに考えたら、より簡単なのかなっていう気持ちしちゃうんですけど。

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それはさっきのインドの話と一緒で、モノとか食とかがあると、結局「トヨタの車壊れないじゃん!」っていう一言で済んじゃうところがあると思うんですよね。

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ああいう物理的に存在するプロダクトを持っていると揺るがないものがあって。

簡単に言うと、プロダクトをどうにかして物流に乗せて、お客様のもとに運べば売れる!みたいなことは少なからずあって、それがインターネットサービスに比べて逆にやりやすい場合ももある。

SESSION「インターネット」×「リアル」なサービスに、日本のスタートアップの勝機がある

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製造や物流のインフラを作るのはとんでもなく大変ですけど、そこをお金の力で解決すれば、意外といけるケースもある。

インターネットサービスってほんとにどこまでいっても人次第だし、事業の根幹をなす人のところが揺らいじゃうと、そりゃ厳しいよな、ってとこもありますよね。

人の問題って、例えば言語の問題だったり、文化の問題もあったりして、これはどれだけ資金を突っ込んでも解決できないことも多いです。

こういう「人の難しさ」もスタートアップ、インターネット領域では残念ながら今のところグローバルで成功に至っている会社は出ていない要因なのかなって。

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ただし、これからはインターネットの中で完結するサービスが新規でどんどん出てくるという時代ではなくて、たぶんProgateさんもインドでは人が直接人に教えるサービスもやってくだろうし。

時代は「インターネット×リアルなモノ・サービス」、になってくので、逆に日本のスタートアップはむしろ勝機が増えるんじゃないかなって、海外に限定すると、ある気はするんですよね。

2824

僕一個思っていることとして、昔の会社のほうがグローバル展開はしやすかったのかなみたいな仮説があって。

今みたいにあらゆる強い国があったりとか、口コミで情報が広がる中で、昔の経済大国だった日本がグローバル展開した時と今を比べると、より難しくなってるのかなって気もしますけど、その辺どう思います?

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今はネット系企業のグローバル展開で言うと、本当に札束の殴り合いなので(笑) 

たぶん昔はそんなこと無かったと思うんですよね。マーケティングで、例えばトヨタの車が良いと言ったらトヨタの車を実際に現地に届けて、現地の人に乗ってもらって、これ最高だよ、うちに売らせてくれよってという人がどんどん現地に増えてくようなやり方が一定通用していた時代がたぶん日本で言うと、戦争が終わって50年間続いていて。

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ただこの20年間に限っては、このギアが変わっちゃっていて、やっぱりオンラインマーケティングだったり、マスメディア×オンライン広告でマス広告をオンライン広告で回収する、みたいなパワーゲームになってきたので。

この20年でホントにに色んなゲームのルールがインターネットの破壊力で変わってきていて、日本の会社は残念ながらそこの勝負でまだ勝ててないというのが現状なのかなと思います。

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結局グローバルに展開するようになると、グローバルで売上利益が上がるようになるので、ますます研究開発費を増やすことができる、広告宣伝費を増やすことができる。

でも日本は日本のマーケットで閉じちゃってるので、広告宣伝費も、研究開発費も、増やせないままずっと来ちゃっている。

アメリカの会社でグローバルに成功した何社かは、どんどん研究開発費も広告宣伝費もどんどん増えていくので、ますます世界各地のパワーゲームに勝てるようになってきている、というのが裏側の実態、というか目に見えてくる実態なのかなという。

2824

今のところじゃあ日本はうまく波に乗れていないというか、サイクルに入れていないってことですかね。

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広告宣伝費の規模も、研究開発費の規模も二桁違うので、単純な話で難しかろうなと。

SESSION日本企業が、“札束で殴り合う”以外に勝つ方法はあるのか?

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札束で殴りあう以外で勝つ方法ないんですかね。

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それこそD2Cという言葉が正しいのか、今で言ったらOMOなのか。

みたいな文脈なんだけど、やっぱりリアルなサービスに結びつくと、日本発であることの本当の強み、みたいなのもまた出てくると思っています。

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まぁ「お・も・て・な・し」マーケティングはどうなのかと思うんですけど、一方でやっぱり日本の世界中で愛されてる文化で、既にお金になってるものもかなり多いと思うんです。

海外から日本に来てくださった沢山の方々が、、たくさんお金使って、喜んで帰ってくれていて。そういう日本のよいモノ・よいサービスがきちんと提供されて、お金の流れを創ることができている。

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いまはあらゆる産業でインターネットとの結びつきは不可欠だという世界になって来ているので、これから日本のスタートアップが勝負できる場所って、これから増えてくると思ってるんですよね。

シンプルにインターネットの中だけで完結するサービス×グローバル、ってなると、投資としては一旦置いといたほうが良いかな?って感じてます、個人的にですが。

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それから、札束で殴るみたいな話が出てきて、一瞬戻っちゃうんですけど、ってなるとやっぱり殴るために札束が必要になるわけで。

となるとベンチャーキャピタルだったりとか、色んな金融機関が、新しく世界で戦っていけるような企業が出てきたときに、どうやってサポートしていけるのかだったりとか。

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あとは、たぶん色んな起業にとってのハードルってあるだろうし、制度的なものもあるだろうし、例えば税制だったりとか色んなものがある中で、そういうのを例えば国とかで押し上げていけるようなものがあったりすると良いのかなって思ったりはしますよね。

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僕らベンチャーキャピタルだったり、民間はともかく、国でって言われると、AmazonもGoogleもFacebookもそんなに国に助けてもらってましたっけ?っていうところもあるので(笑)。

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僕は結構もう古い人間なんで、ベンチャー企業が国をあてにしたら終わりだろうみたいなところも若干ありまして(笑) 

そこは国からの後押しには期待しつつも、国からのサポートなんて関係ない、とはないところが大きくなっていくるんじゃないかなと思っています。

13

はい。では質問も入っていきましょうか。

結構、ほんとに札束の殴り合いのところがすごく盛り上がっていたと思うんですけれども。グローバルって一体なんだってとこから入りまして。

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やってる方は、別にグローバルってなんだって考えてないですよね。

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そうですね。

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当事者はあんまり考えないで、世界にも通用するビジネスをつくろうみたいな。

SESSIONスタートアップの存在意義。ヒントは「自分たちが“いない世界”」 を考えた先にある

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それはありますね。

日本発っていうよりは全世界で提供している中で、日本もその一つの国だしインドもその国の一つだしっていう感覚を持ちたいと思いますね、むしろ。

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たぶん、よりたくさんの人に会社のサービスを使ってほしいなっていう大前提があって、それは日本国内だけだと1億2千万人しかいないので、より多くの人に届けたいなってなったときに市場の選別が始まって、そこからじゃあインドがいいっていう話になってるのかなって。

別に初めから海外展開しよう、海外に行かなきゃいけないって想いで起業しているものの、グローバル展開ありきとはまた違うんだろうなって。

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僕らみたいなスタートアップのやる意味って自分たちのいる世界と、いない世界で、どれくらい差分を埋められたかだと思うんですよね。

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どれだけ世界が変わるか、変えてやるみたいな。

2824

そうです。

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そうなったときに、僕らみたいにtoCでやってる僕らからしてみたら、世界を変える指標って、影響を与えた人数、その人たちに与えた良い影響の平均の掛け算かなって思うんです。でも、その両方が大きいインドだったりとかはやれたら良いよねっていう割とシンプルなロジックでやってるのかなって思ってます。

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そうですよね。単純に市場が広がるから、それだけ使ってくれる人が増えるってことですね。

2824

そうですね。

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単純に考えても良いことあるなっていうところですもんね。

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そうですね。さっきもあったように、一人当たりの影響度合いも大きいなって思ったんで。それがただのばら撒きだったらやりたくないんですけど。

SESSION「国境を超えて必要とされるサービス」が世界を制する

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なるほど。

「そもそも日本はグローバル企業になりたいと思っているのでしょうか?」とか「宗教上の障壁をどう乗り越えればいいのだろうか」みたいなコメントも来てるんですけど、ただまあ日本はグローバル企業を輩出したいっていう思いはありますよね?

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起業家にしてみても投資家にしてみても。やっぱり日本以外で活躍する企業が増えることはうれしいことではありますよね。

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まあ海外旅行して日本のものがあったらシンプルにうれしいですもんね(笑)

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あ、これ知ってるみたいな(笑)

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たぶん起業するって、投資家もそうですけど、将来海外でやっていけるかどうかということは気にしますけど、一方でグローバルって定義がすごく曖昧なので、グローバルっていう言葉ベースでは、あんまり考えないかなって。

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ただ、より世界中の人たちに求められるようなサービスだったり、プロダクトだったり、要は文化だったり宗教だったり、いろんな垣根を超えて必要とされる、求められるようなサービスになりうるかなっていうところがほんとに大事かな。

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そうすればマーケットが日本だけに収まらず、自然と海外からニーズがあれば海外に拠点を作ろうっていう感じで、海外でサービスをローンチしようという話になってくると思うんで。

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そうですよね。今実際にスタートアップで働いてる方も、グローバル国籍の方も多くなっているんですよね?

エンジニアとかも日本じゃなくて海外からいらっしゃって、優秀な方、エンジニアとか多いと聞きますけど。

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やっぱりそれは、そのサービスが海外の人たちにも理解できるサービスだっていう前提があるんですよね。

海外の人から見て何のことかさっぱり分からないみたいなところって、やっぱり海外の方は働かないと思うので。そういうふうに国境を超えうるサービスってたぶんいっぱいあると思うので。

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そうですよね。なるほど、ありがとうございます。

2824

皆さん札束札束と(笑)

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ほんとに札束の殴り合いはありますけど、その殴りあう札束がないといけないという、そもそもがありますし。

そういったファイナンス力といったものも大切になってくるんじゃないかなというのはすごく思いました。ありがとうございました。

どうでしたか、今日、加藤先生は。実際にインドのお話をしていたと思うんですけど、なにかギャップはありましたか?

2824

ギャップですか?やっぱり札束なのかーっていうね(笑)

13

ギャップですね(笑)

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例えばProgateっていう会社がインドで展開していて、やっぱりインドの投資家からProgateに投資しようってなってもらうと、インド国内の札束はそこで準備できる訳じゃないですか。

やっぱりそういうサービスになってくれると良いなっていう。

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確かに。やっぱり札束ですか(笑)

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日本にいてAmazonの株買いたいって人いるけど、アメリカにいて日本企業の株買いたいって人あんまりいないと思うんですね。やっぱりサービスの浸透度というわけで。

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そうですねそうですね。

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確かにその辺のマーケティングだったりとか、そういう宣伝広告費にお金かけられるかというところもありますもんね。江原先生はいかがでしたか?

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そうですね、やっぱり加藤さんのインドの話とかはすごく面白いなと思いましたし、国内スタートアップどんどん出てきていますけど、実際に、例えばインドに進出しましたとかって、まだ実はそんなに出てきていないと思っていて。

2828

そうなるとProgate加藤さんの知見って今後すごく有用になって、今もそうですけど、今後もっと価値が高まっていくものなんだろうなって思って、すごく勉強になりました。

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ありがとうございました!

SESSION次回も一緒にギャップを埋めていきましょう。Bridge the GAP!

2020年02月03日 公開

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