目次
- 対人関係論、3つのレベル
- 適切な距離を保つ際に、やってはいけない4つのこと
- 受容的コミュニケーション」を用いて、適切な距離感を保とう!
2023.05.23
「この人、嫌いじゃないけど一緒に仕事するとなんか色々合わないな……」
もし職場でこのように思ってしまったとしても、プライベートのように一切の関係を断つことは難しいでしょう。否が応でも関わっていかなければいけません。
そんなウマが合わない人と、適切な距離でストレスをあまり感じずに付き合っていく方法をレクチャーしてくれるのが『ビジネスで使える賢い心理学シリーズ-第24回・ウマが合わない人との付き合い方-』という授業。講師を務めるのは、一般社団法人日本マインドリーディング協会理事の岸正龍先生です。
ウマが合わない上司・同僚との距離感がいまいちつかめていないビジネスパーソンは必見の授業です!
上述したようにウマが合わない相手に歩み寄ろうとする行為は、かなり努力が必要でとてもしんどいこと。きっと多くの人がレベル2のまま、すなわち適切な距離感を保とうとするはずです。その際、どんなことに気をつければ良いのでしょうか。先生は4つのやってはいけないことを提示します。
1つ目は「欲求の押しつけ」です。自分にとって不利益を被りそうな相手の行動に対し「○○してみたら?」「○○すべきじゃない?」とアドバイスを送ってしまう人は少なくないはず。ただこの行為、先生からすれば「相手への気遣いではなく自分の欲求を押し付けているだけ」とのこと。
2つ目の「評価の押しつけ」、3つ目「解釈の押しつけ」も同様。「○○した方がいい」「私だったら○○」といったのも、一見アドバイスのように思えますが、ウマが合わない人へのそれは、自分の枠組みや価値観でその人を評価しているだけにすぎないのだそう。結果として相手と適切な距離を保つどころか、溝を深める要因になってしまいます。
4つ目「対話の打ち消し」は、相手の考えや意見を途中で遮断し否定すること。これも禁止行為です。「まずは相手の話が終わるまでもしくは気持ちが落ち着くまでは、ひたすら聴き続けることが大事」と先生は語ります。
授業の中盤から後半は、ウマが合わない人との距離の保ち方がレクチャーされます。「保ち方として有効」と先生が掲げた方法は、受容的コミュニケーションというもの。以下の4つのステップで構成されているのだそうです。
各ステップの名称だけを見ると難しそうに感じますが、授業では、岸先生が一つずつかみ砕いて具体的に解説します。
まず「肯定的関心の表明」ですが、これは相手の考えや気持ちを傾聴して積極的にうなずくことを指します。たとえ「そんなことないだろう……」と思ってもこちらから意見を述べない、励ましやなぐさめも行わない、ただひたすらに聴くことが大切とのこと。
2つ目「共感的理解の伝達」とは、相手の気持ちがよく表れている部分に対して共感すること。ここでのポイントは「どんなことを言われても、まずは相手の気持ちに共感し、言葉を反復することです。そうすることでウマが合わない話し手も「この人はしっかり聴いてくれるんだ」と感じるのだそう。「まずはこの2つをウマが合わないと感じる人ほど、積極的にやってみてください。きっとそれなりにコミュニケーションが取れて関係性も維持できるはずです」と先生は語ります。
授業ではこの後、残り2つのステップに関する解説と、ウマが合わない人に自分の要望を通すための会話術「DESC法」について触れられます。
「DESC法」とは、「Describe(描写する)」「Express(説明する)」「Specify(特定する)」「Choose(選択する)」の4つを組み合わせた方法。ビジネスシーンでよくありがちな事例をもとに解説されるため、心理学の知識がない人でもしっかり理解できます。授業で紹介された事例はこちら。
上記スライドの内容は、ウマが合わないと感じている先輩からのお誘いです。正直行きたくない気持ちはあるものの「行きたくないです」と直接伝えたり、嘘をついたりするのは後々の関係悪化のリスクが高くなってしまいかねません。ただこれは「DESC法」を用いて断れば、適切な距離感を保ちつつ要望が通せるとのこと。
先生はどのように断るのでしょうか。詳細は実際の授業で確かめてみましょう!
文=トヤカン
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本授業では毎回、心理学の知識や理論が用いられ、それらをもとに授業が展開されていきます。今回用いられたのは対人関係論。この論理を用いることで「なぜウマが合わないのか」を探ることができると先生は語ります。
まず先生が提示したのは対人理解の3つレベルというもの。これは自己が他者と人間関係を構築していくにあたり辿っていくプロセスであり、「分析的理解」「評価的理解」「共感的理解」の3段階に分かれるのだそう。
レベル1「分析的理解」とは、関係を構築するための情報収集をする段階のこと。多くの場合、私たちは他者と初めて会ったとき「この人はどういう人なんだろう?」と思うはず。その上で会話の中から年齢、出身、所属、趣味、人格といった情報を引き出し相手の人物背景や特徴を推測します。
ただ先生曰く、この時点で「この人とウマが合わない」と感じることはあまりない とのこと。「ここはあくまで人間関係の第一歩でありあくまで表面的理解に過ぎないから」と語ります。
では、人はどの時点で「ウマが合わない」と感じるのでしょうか。授業では「レベル2『評価的理解』から感じることが多い」と語られます。「評価的理解」とは、自分の価値観や基準に照らし合わせて理解しようとする段階のこと。レベル1は手に入れた情報からのみの理解でしたが、ここからは個々の主観的評価を基準に判断されるのが特徴です。
またこの段階のポイントは、主観的評価である以上「ウマが合う、合わない」と感じるのは自分自身という点。したがってウマが合わないと感じる人に対して、より一層歩み寄るかどうかも自分で決められるのです。先生も「たとえ上司とウマが合わなくても無理する必要はありません。逆に合わせようとすると、かなり努力しなくてはいけない。一定の距離を保つという判断も可能」と語ります。
ちなみに、ウマが合わないと思った相手に歩み寄ろうとする段階がレベル3「共感的理解」に当てはまります。「自分がこの人の立場だったら……」と、相手の内面まで感情的に理解しようとする段階のため、焦点は自分から相手へと移るのが特徴。