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2020.09.10

column

イノベーティブとイノベーションはどう違う? Takram田川氏の考える「デザイン経営」とは

イノベーティブとイノベーションはどう違う? Takram田川氏の考える「デザイン経営」とは

近年、企業における「デザイン」の重要性はどんどん増しています。

デザイン思考を経営に生かす「デザイン経営」という言葉を見聞きしたことがある人も少なくないでしょう。

そんなデザイン経営の概念や始め方について、企業のブランド開発、商品開発、店舗開発などに携わり国内外100以上の賞の受賞歴を持つ株式会社エイトブランディングデザイン代表の西澤明洋先生から学べるのがSchooの授業シリーズ『できる!デザイン経営塾』です。

シーズン1の最終回である今回は経済産業省・特許庁の「デザイン経営」宣言の作成にコアメンバーとして関わり、現在はデザイン・イノベーション・ファームTakramにてテクノロジー・デザインの両面から新規事業プロジェクトやプレゼンテーション設計に携わる田川欣哉先生をゲストに迎えました。

田川先生の持つイノベーションデザインについての知見を学び、西澤先生と田川先生のディスカッションを通してBTC(ビジネス・テクノロジー・クリエイティビティ)の融合について考えましょう!

目次

  • デザイン経営とイノベーションデザイン
  • なぜ現代にイノベーションデザインが必要なのか?
  • イノベーションデザインの一歩目

 

 

デザイン経営とイノベーションデザイン

 

 

さまざまなデザインがあるなかでデザイン経営という視点から、ここまでの5回の授業では主にブランディングデザインについて取り上げてきたという西澤先生(画像左上)。今回は、イノベーションデザインについて取り上げると前置きがなされ、田川先生(画像右上)にバトンが渡されました。

 

日本ではまだまだ進んでいるとは言えない“デザインとテクノロジーの掛け算”にTakramでのプロジェクトや、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートにおける教育活動を通して取り組んでいるという田川先生。Takramにはさまざまな分野を越境するハイブリッド型のデザイン人材が集まることで新しいものをつくろうという考えがあるのだといいます。

 


なぜ現代にイノベーションデザインが必要なのか?

田川先生が掲げる最初のテーマが「なぜ現代にイノベーションデザインが必要なのか?」。

 

そもそも論として「イノベーションとイノベーティブは違う」と田川先生。イノベーティブは、何か世の中にない新しいものの状態を指しますが、イノベーションは“新しい概念が世の中に実態的に浸透して人々の生活を根本的に変えてしまう結果”までを指すのだといいます。

 

 

また、イノベーティブな研究・開発が社会に実装される(イノベーションを起こす)までの間には死の谷が存在します。マイナンバーのようにその谷に落ち込んで十分に浸透しきらなかったプロダクトは少なくありません。

 

そして、その谷を越えるための橋渡しの役割を担うのが「デザイン」だといえるのです。

 

素晴らしいものを生み出しても使いづらいものや使う気にならないものは社会に浸透しません。

 

そこで、ユーザーがどうふるまうのかどうすれば使い続けてくれるのかをコントロールし、社会実装を促進するのがデザインです。

 

ここで意識すべきなのが“ユーザーの意識は変化するもの”だということ。例えばこのコロナ禍でオンライン勤務に目覚めたユーザーは、仕事のために都心に住むというこれまでの行動様式を一変させるかもしれません。だとすれば例えば住宅メーカーは、ユーザー像を改める必要が生じるでしょう。それ以前にも、スマホの登場で人間の在り方は大きく変わりました。

 

 

このように刻々と変化するユーザーをデザインは常に捕捉し続けなければなりません。コンピューター以前、人間は「指でボタンを押す」といった単純な操作で機械とコミュニケーションを取ることが一般的でした。しかし、コンピュータ・スマホが普及した現在はスクロールや拡大、ドラッグ&ドロップなど無数の操作が求められます。

 

そんななかで商品を使い続けてもらうにはUX(ユーザーエクスペリエンス)を高めるしかありません。これも近年デザインに注目が集まる理由のひとつといえるでしょう。

 


イノベーションデザインの一歩目

「テクノロジー志向の身につけ方は?」「日本においてデザイナーよりエンジニアの地位が高い傾向にあった理由は?」などの質疑応答を挟んで、テーマは「イノベーションデザインの一歩目」へと移行しました

 

「デザイン思考の起源はコンピューターと人間の関係をうまく調整するものだと理解しています」と田川先生。前述の通り、人間とコンピューターのコミュニケーションの取り方は無数に存在するため、想像でコントロールし尽くすには限界があります。そこで生まれたのが、ユーザーテストを繰り返してPDCAを回していくという考え方。

 

例えばUberのドライバーの評価画面にチップの金額を選択するボタンを設置し、ドライバーから高評価を得たいユーザーにチップの上乗せを促すという仕組みは、設計者自身がユーザーになり切らなければ思いつくことは困難です。

 

デザイン思考の基本プロセスは「ユーザー観察と共感→仮説構築→プロトタイプ→テスト」という流れで定義されています。スタート地点である「ユーザー観察と共感」において“「自分自身がユーザーである」あるいは「ユーザーになり切る(憑依する)」”ことがデザインには求められると田川先生。

 

 

テクノロジーとユーザー理解の両方を持っているチームとそうでないチームでは成功確率が圧倒的に違うということです。

 

そんな中、ユーザー理解の概念も進化を繰り返しておりもはや「使いやすい」ことは当たり前、「使うことに意義を感じる」UXが模索される段階となっていると田川先生はいいます。

 

授業の後半では、西澤先生と田川先生により、イノベーションデザインを生み出すためのTakramにおける具体的な取り組みやBTC型の組織の作り方について質疑応答・ディスカッションがなされました。

 

その内容については、ぜひ実際の授業動画をご覧になってください。

 

『できる!デザイン経営塾 第6回 これからのデザイン経営の話をしよう!』

http://schoo.jp/class/6977/room

 

「外部コンサルの提言を上層部ができない理由を挙げて無下にしがち」というリアルタイム受講生の悩みを発端とした議論など、その内容は必見です!

 

文=宮田文机

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