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2020.03.26

interview

“つくりたい!という最初の欲求を失速させない”ーー信楽焼を使ったBBQヒット商品「TOBAN」誕生秘話

“つくりたい!という最初の欲求を失速させない”ーー信楽焼を使ったBBQヒット商品「TOBAN」誕生秘話

プロダクト・リアルトーク -信楽焼でBBQのヒット商品が生まれるまで-

目次

  • 偶然と必然。「TOBAN」はこうして生まれた
  • 世の中に無い商品を生み出す苦難
  • 購入者の顔が「20人イメージできるか」が成功の鍵
  • 始めたときの気持ちを失速させない。チームでプロダクトを生み出すために大切なこと
  • クラウドファンディングはPRの場でもある
  • アイデアを形にするためのしたたかさ
ヒットプロダクトには、企画者と生産者のアツい話があります。そんな商品開発の裏側に迫る授業企画。『プロダクト・リアルトーク』。

今回の授業で迫るのは、最近流行しているバーベキュー界でヒット商品となっている『TOBAN』。

この授業では、クリエイティブ会社「MEETING」のクリエイティブディレクター・代表の三村氏と製造者である滋賀県・信楽にある陶器メーカー「明山」から石野氏を先生としてお迎えして、TOBANが生まれるまでのプロセスに迫ります。

三村 恵三 先生

株式会社MEETING 代表取締役

石野 啓太 先生

信楽焼 明山/ブランドマネージャー

中田 有香

受講生代表

学びノート

SESSION偶然と必然。「TOBAN」はこうして生まれた

27

お二人の商品「TOBAN」について簡単に教えてくださいますか?

2852

はい。

皆さん陶器はコップとかお皿とかを使っていると思うんですけど、これは土でできているんですが、それを板状としています。

世界でもあんまりないと思うんですけど、網でも鉄板でも無く、陶器で作ったアウトドア用の板です。

そこから、TOBANというネーミングになったんです。

2852

なので網で焼くとか、鉄板で焼くというのはみなさんしたことがあると思うんですけど、これを使うことによって信楽焼の400年の技術を入れた商品になっています。

これで焼くと遠赤外線で非常に火の入り方が優しくなるので、じっくり中まで火が通ってすごくおいしいんですね。

特に網とかで焼いて、野菜がぱさぱさになった経験ありませんか?

27

なります。おいしく作れないです(笑)

2852

なりますよね。

パプリカがこんな感じで食べれるんだとか、かぼちゃとかもこびりつかずホクホク食べれるとか。

そういった商品を僕らは作りました。

じつはこれは開発まで2年くらいかかったんです。

27

最近アウトドアブームじゃないですか、今注目されている感じですか?

2852

そうですね。

これは偶然で生まれたようなものなんですけど、元々は、石野くんが経産省の予算でひな人形とか、節句の兜とかを陶器で作るっていうプロジェクトをされてて。

それのムービーとか全体のブランディングのトーンとかを僕がクリエーターとして依頼されたところから物語ははじまりました。

2852

その撮影時に見つけたことなのですが、陶器を焼くときに支える棚板というのがあるんですが、それを見たときに、この板でBBQをしたらおいしそうだなという話を石野さんとしたんですよ。

27

え、その時にしたんですか!

そこからBBQに繋がるのがすごい発想ですね。

2852

石野さんに聞くと、職人の中ではやっていたんですよね?

2853

小さい時の記憶では、みんなでBBQをやってた思い出があって。

やってますよという話を三村さんにしたら、すごいおもしろそうだということで実際商品化に繋がったという流れですね。

2852

職人さんがされていたことを僕らはやったことが無いし、普段土鍋とかでもそうですけど、すごく優れた陶器なので。

これでBBQの時にじっくり焼けたりしたらすごくおもしろそうだなということで、なんとなくおいしさは見えていたんですよね。

2852

でも実際に世の中にあるだろうと思って検索したらなかなか無くて、じゃあ何かそういったものを作ったら皆さん喜んでくれるんじゃないかと。

27

生産者の方は当たり前にされていますけど、外から見るとそれ商品化してほしいっていうのよくありそうですよね。

SESSION世の中に無い商品を生み出す苦難

2852

とはいえ世の中に無いものを、頭の中に見つけることって難しいと思っていて。

職人さんたちは使っていた、でも商品化はされていなかったというのは、僕らにとって一つの発見でした。

石野さんは普段から窯元にいて当たり前のものだったんですけど、僕からするとそういった商品を焼く下のものも土で出来てるんだと思って。

2852

石とか煉瓦(れんが)とか違うもので支えているものなんだと思っていたら違うんだと分かって。

ちょうどキャンプとかグランピングとかが注目されているときに、なんかかっこよくも見えたんですよね。

あまり施されていない板自体がかっこよくて、これこのままグランピングとかで出しても良いなと。

でも実際作るとそのままでは使えないというか、皆さんに使いやすくするというのはありましたね。

2852

あとはキャンプとかBBQとかって不思議で、なかなかカップルの時には行かなくて、結婚して子供が生まれたりすると結構キャンプに行きたいとかっていう声を周りですごく聞くんですよね。

27

確かに!そうですね。

2852

でもやっぱりアウトドアとかに得意じゃない方で言うと、ちょっとキャンプってハードルが高くて。

焼くのも鉄板だと難しいし、家でやっている料理の流れのままでキャンプに持っていけるようなものはないかなとはずっと僕の中でも何年から引っ掛かっていて。

2852

それが一つきっかけになったかなと思います。

ずっと頭の中にあったんですけど、窯元の前に行った時に、それが繋がったっていうのがありましたね。

SESSION購入者の顔が「20人イメージできるか」が成功の鍵

27

「消費者のターゲット像、ペルソナをどのくらい明確に描けるのかな?」とコメントが届いておりますが、描いていたんですか?

2853

話していましたね。

2852

ね!でも実際販売してみたら、僕らが描いていたペルソナと購買層は結構違ったな、という印象があったんですよ。

2852

というのは、このプレート自体が使いやすいし、持ち運びもできるし、もっとビギナーが使うものというイメージを描いていたんですよ。

でもアウトドア好きの人たちって、ギア不足というか、次に新しいモノがあればとにかく欲しいし、結構コアな方に飛びついてもらったという印象がありましたね。

2852

でも商品を作るときって、どの商品もそうだと思うんですけど、やっぱりペルソナが無かったら絶対だめで。

僕らはクラウドファンディングをする上で、今までずっとやってこられた方とお話すると、とにかくこの商品が世の中に出た瞬間に、周りの人で買う人の顔が20人以上浮かばないと絶対失敗するって言われていたんですよ。

27

えー!

2852

だから周りも良いなと思わないと、たぶんそれはあまり良いもんじゃないと思いますね。

それはすごく意識していました。

27

石野さんはいかがですか?

2853

僕は自分で使って楽しいかなと、そこの意識はありました。

あとは三村さんと話していたのは、ファミリー向けっていうのと、女子同士とかをイメージしていて、子供でも作れるとかっていうイメージを持っていました。

2852

だから商品を作った訳でもあるんですけど、商品の周りにいる人たちのイメージっていうのはすごくしていました。

アウトドアとかでキャンプとかしていても、これは極端な話ですけど、大人とかが焼いていて子供とかは食べるのに飽きてどっかに行っちゃって、いつの間にか大人と子供がばらばらになっているかなと思っていて。

2852

で、アメリカのBBQには三種の神器っていうのがあって、そのうちの一つに水鉄砲っていうのがあるんですよ。

これはどういうことかっていると、火が上がったときに子供が火を消すっていう役を与えられるんですよ。

やっぱりそれがおもしろいんで、子供は近くにいるんですよ。

27

おー!

2852

これをTOBANで考えたときに、ハンバーグとかをこねるときに、こねるのは子供の役目とか、それを焼くのは大人の役目とか。

そういったコミュニケーションとかがもっと出来たらいいなと。

2852

元々この信楽焼っていうのは火鉢がメイン商品だったんですよ。

火鉢っていうのは昔はどの家庭にもあったし、それが信楽焼で90%くらい作られていたと。

今時代が変わって、火鉢は姿を消したんですけど、キャンプだとこの信楽焼が家族の真ん中にいるみたいな状態を作れたら、それはそれで信楽焼の新しいコミュニケーションの形かなって思ってました。

27

なるほど、素敵ですね。

SESSION始めたときの気持ちを失速させない。チームでプロダクトを生み出すために大切なこと

27

コメントで「企画者と制作者のコミュニケーションが大切なのでは」と来ていますが、いかがでしょうか?

2852

そうですよね。やっぱり目指しているところが同じなのかどうかっていうのはすごく大事ですね。

これは僕たちも、テストの段階で焼いている時に、色んな人の意見を効いちゃうんですよね。

27

聞いちゃいますよね。

2852

そうなると段々、油が落ちるように波型にした方が良いとか、どんどん話を聞いていくとホットプレートでいいんじゃないかなと(笑)

2852

やっぱり世の中にあるものになったり、それはアイデアをくれている方が悪いんじゃなくて、僕らに筋が無いからどんどん分からなくなってくるというのは正直作っている時にありました。

2852

これがコミュニケーション力というか、二人で意思疎通が出来ていなかったら行きたい方向からどんどん離れていって、上手く一つにならなかったんじゃないかと思いますね。

周りの人の意見を聞くことも大事だし、僕は二人で作るんだったら、二人のわがままで作った方がいいと思います。

2852

売りたいとか、世の中に出しての反響っていうのもめちゃくちゃ大事なんですけど、始めの作りたいって気持ちは失速させないようにっていうのはめっちゃ考えましたね。

2853

最終的にそこしか無いですもんね(笑)

2852

そこで当たるかというのは別の話で、怖かったというのはありましたよね(笑)

27

なるほど。

三村さんのアイデアを石野さんがどう捉えるかっていうので意識されていたことはありますか?

2853

そこは結構コミュニケーションできていたと思うので、すんなり受け入れられたかなと。

2852

コミュニケーションする時には、サスティナブルによりよくできるか、よりシンプルにできるかっていうところをよくしていましたね。

2853

技術的な話とかは色々あると思うんですけど、繰り返し試していったという感じですね。

SESSIONPRの場所でもある。クラウドファンディングはただ資金を集める場所ではない

27

クラウドファンディングでは2300%の達成という結果だったんですけど、どうしてここまで支持されたんでしょうか?

2852

ファクトとしてどう面白いかを伝えることと、どこが作っているんだろうという信用性が大切だと思っていて。

信楽焼の窯元で作っているっていうのが大きかったと思います。

2853

なんだろう。

写真こだわったとか、僕らが考えていることをどうアウトプットするかを三村さんに丁寧に作っていただけたので、しっかりとお客さんにも届いたのかなと。

2852

皆さんもクラウドファンディングという手法を使うのであれば、やった方が良いなと思っていて。

2852

クラウドファンディングというのはPRの場所でもあるし、実は商品をリサーチする場所でもあるんですよね。

ただ資金を調達するだけの場所ではなくて。

元々黒と茶色みたいなものを作っていたんですけど、テストマーケティングをした結果、圧倒的に黒しか売れなかったんですよ。

27

そうだったんですか?

2852

9:1くらいかな。

なので一旦黒で展開していったり、そういったテストマーケティングとしてもいいし。

あとはどういうところのコミュニケーションで雑誌の方とかウェブの方がどこを面白がっているのかがすごく参考になっていて。

こういうところを世の中の人は面白いと思っているんだとか。

2852

あとはクラウドファンディングの会社さんと直接会って、たくさん話をしたんですよ。

この商品のどこがいいと思いますかっていうこともしゃべったり、どういう文脈で語った方が良いプロダクトなのかっていうこともかなり話して。

そのイメージがすごいヒントになったんですよね。

2853

第三者の目線っていうのは参考になりますね。

SESSIONアイデアを形にするためのしたたかさ

27

最初に考えていた売り出し方と、メディアの人が面白がるところの違いってありましたか?

2852

ありましたね。

僕らはアウトドアの中での新しいBBQプレートがあるってこと自体が面白いと思っていたんですけど、伝統のある信楽焼がっていうところが編集者たちから面白がられましたよね。

2853

そうですね。

2852

僕らはこんなBBQプレート世の中に無いよ!ってとこから始まりましたけど、相手の方はそれよりも「伝統的」なものがこういうことをやったっていうようなところでしたね。

2852

だからプランニングより、信楽焼で新しいものが生まれたというところが面白がられました。

最初のものとは違ったけど、今はそこを大事にしていますね。

27

当初考えていたものと違ったところが面白がられたら、そこは臨機応変に変えていくんですかね?

2852

やっぱりそうですね。

脱線はしていないんですけど、強弱とかはなるべく信楽焼の方に向けましたね。

レッドオーシャン、ブルーオーシャンを意識しすぎないことが大事だけど、思いついたものって大抵ほぼ世の中にあるんですよね。

2852

だから一回思いついたら、ちゃんとリサーチをすることが大事で、僕らも他にあったら作っていなかったと思うんですよね。

でも無かったものを作るっていうのがすべてではないと思うんで。

どんどんこれからは世の中にあるものでも、どうより良くできるかっていうことを2人でやれたらなと思いますね。

2853

そうですね。

27

なるほど、素敵なストーリーですね。

三村先生、石野先生、今日はありがとうございました!

2020年03月26日 公開

この授業の動画をSchooで観る

2020年02月21日 放送分
プロダクト・リアルトーク -信楽焼でBBQのヒット商品が生まれるまで-

プロダクト・リアルトーク -信楽焼でBBQのヒット商品が生まれるまで-

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