目次
- 仮説を立てる際、ゴールはどこに設定すべき?
- 「価値ある仮説」を立てるために押さえるべき3つのポイント
- 「価値ある」仮説は「自社ならでは」のものになる
2022.01.29
営業職にとってデータが強い武器となるということをみなさんはご存じでしょうか。
コミュニケーション力や論理的思考力だけでなく、「データを上手に活用できる技術と仮説力」が、営業という職種で働く皆さんが結果を出せるかどうかに大きくかかわってきます。
とはいえ、これまでにデータをあまり使ってこなかった、仮説の立て方がわからないという人も多いはず。
Schooはそんな人たちに向けて、統計解析や、Python/GASを利用した業務改善を得意とするtoBサービスのマーケティング・セールスマネージャー中島佑悟先生を講師に、授業シリーズ『売り上げ増加、葬式の成長に繋げる 営業のデータ分析』を開講しています。
本記事ではその第一回『営業課題を改善する仮説のたて方』の内容をご紹介します!
例えば商品が売れない原因をあなたが「金額がボトルネックになっている」ことに求めたとしましょう。そして、その意見に同僚も、トップセールスも、部長も同調する意見を示します。すると、「金額がボトルネックになっている」という仮説がいかにも確からしく思えてきます。
しかし、それは検証されなければ“ただのアイデアだし”に過ぎません。“合議”は仮説検証ではないのです。
ただし、仮説を立てるときは、完全に勘で問題ありません。むしろ、データをもとに仮説を立てようとするのでは本末転倒。まず仮説を立てて、そのあとにデータ集めをして検証するという流れを守るべきです。
これを踏まえて中島先生は「ビジネス力や業務経験から発送される『検証できたら有益な主観』に対し、検証を経ることで客観性を付与することが仮説検証の目的であるはず」とまとめました。
さて、ここで一つの問題が出されます。みなさんは、「受注率を上げる」という課題があるとすれば、どんな仮説が考えられますか?
先生が営業のデータ分析において仮説をたてる際の大事なポイントとして挙げるのが、以下の3ポイントです。
1.検証する価値のあることか(自明でないか)
2.検証方法までイメージできるか
3.オープン・クエスチョンになっていないか
例えば、先ほどの問いに対し「営業力に問題がある」という仮説を立てたとしましょう。その仮説が立てられたとして、おそらく社内では自明の事であり、そもそも検証する価値がありません。また、「営業力」という言葉にはっきりとした定義があるわけではないため、検証方法も考え難いです。そして、「営業力に問題がある→どうやって高めるべきか?」という問いは「はいorいいえ」で答えられないオープン・クエスチョンです。
すなわち、上記の3ポイントを満たせていないダメな仮説、あるいは仮説未満の疑問と判別されます。
では続いて、「お客様が社内稟議をする際に導入メリットを伝えられていないのではないか」という仮説を立ててみましょう。これは想像ではどちらとも断定できないことであり、検証価値があるといえます。また、お客様に尋ねる、資料を配布してその効果を配布していない群と比較するなど、検証方法も容易に思いつきます。そして、もちろん「はいorいいえ」で答えられるクローズド・クエスチョンになっています。
もちろんこれが唯一絶対の答えではありません。仮説は無数に立てることができます。しかし、だからこそ上記の3ポイントで仮説の質を確かめることが不可欠でしょう。また、有力な仮説を見極めるためには、「仮説を深堀りする」というプロセスも重要です。
例えば「価格判断のできる他者比較・リターンの試算ができていないのでは?」という仮説は「価格が見合わないと判断されているのでは?」という仮説に、さらに「値引きをするとよいのでは?」という仮説にまで深堀りすることができます。
このように「なぜ?」を繰り返すことで「価値ある仮説」にたどり着きやすいと中島先生は語ります。
「価値ある仮説」の特徴として、中島先生は「商品の弱み、チームの人間関係、ターゲットの特性といった「自社ならでは」から発想される」というポイントを挙げます。
逆に、どの企業にも当てはまりそうな仮説ならば、もう少し思考を深めて、自社ならではのポイントに当てはまるまでブラッシュアップすべきでしょう。
ここで「仮説・原因・対策がなんだかわからず頭がぐちゃぐちゃになります」というリアルタイム受講生からのコメントが。「僕もすごくわかります」と中島先生。そして、理想と現実のギャップが問題であり、その元となっているのが「原因」、原因に対して「じゃあどうするか」と取り組むのが「対策」、自分の主観で編み出した「原因」や「対策」が「仮説」と考えればよいとアドバイスを送りました。
特に営業において、データ分析はひとつひとつの仮説検証を積み重ねるようなものだと先生は語ります。それはAIやシステムにデータを渡せばOKというものではなく、むしろ非常に地道で人間にしかできないプロセスです。
では、どのように考えればいいのかについては授業の後半「仮説の立て方(発展編)」にて詳しく取り上げられました。興味がある人は、ぜひ実際の録画授業を受講してみてください。
文=宮田文机
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営業がデータを使う目的は「『売れる』ことへの解像度を高め、その情報をチーム、会社で共有するため」だと中島先生は語ります。そして、営業のデータ分析とは「『売れる』という出来事を、数字(数式)で表現すること」を意味します。
それでは、仮説を立てるゴールはどこに設定すべきでしょうか?
先生は「データによって何を検証したらいいかを決める」ことに仮説を用いることがゴールになると語ります。
「勘の積み重ねでは“自分の見たい世界”に傾きやすい」と中島先生。先生はビジネスでときに勘がプラスに働く場面もあることは否定しません。しかし、その勘が間違っており、さらにそのことも検証されないとしたらどうでしょうか。「~だろう」が積み重なった結果、行動はビジネスの実態から大きく乖離してしまうことになるのです。
特に「環境変化が速い」「人それぞれで嗜好がバラバラ」と言われる今の時代、自分の見たい世界と現実にずれが生じてしまうリスクは非常に高くなってきているようです。
「仮説は検証されることが前提」ということを肝に銘じておきましょう。