目次
- 他者から学びを得るための方法は「問い」に集約されている
- 知識や経験を引き出す「問い」は相手が答えやすくする工夫を
- 質問したときの相手の反応も学びにつながる
2022.02.11
生活のさまざまなところに「学び」はありますが、その中でも一番身近な学びは、人との出会いと、そこから生まれる対話なのではないでしょうか。
Schooの授業「他者から学ぶ ―職場・地域・友人から学びを広げる―」では、より深く他者から学びを得るための「問い」について、議論を軸としたコミュニティ「議論メシ」を主催する黒田悠介(くろだ・ゆうすけ)先生が解説します。本記事では、その一部をお届けします。
では、「問い」を立てるときの具体的な工夫のポイントを解説します。まず経験について質問するときは、「Why」ではなく「How」を中心に掘り下げると良いです。
例えば、登山家に「なぜ山に登るんですか?」と訊いても、「そこに山があるからだよ」というような抽象的な答えが返ってきてしまうでしょう。これは、質問された側も回答するのが難しいからであり、「Why」に紐づく経緯を説明するのは面倒だからです。一方、「どうやって厳しい登山を成功させるんですか?」といった問いであれば、本人が登山で意識していること、具体的な経験などを話しやすいです。
一方知識について質問するときは、相手の興味があるものからたどって質問を掘り下げていくと効果的です。ハマっていること、最近よく話題にすることなどを訊いて、そこから出てきた知識から関連付けて質問していくと、詳細な知識を聞き出すことができます。
こうした質問から得られた経験や知識は相手が得たものですが、これを自分の学びに落とし込むためには、その知識や経験を抽象化し、自分が抱いている疑問や課題に照らし合わせることも大切です。
また、相手に質問すると、回答以外にもさまざまな反応が返ってきます。例えば「テンションが上がる」、「感情が変わる」、「問い返される」といったものがそうですし、「沈黙される」というのもひとつの反応と考えられます。
これらの反応もまた、自身の学びと捉えましょう。例えば、沈黙が返ってきた場合は、相手が質問に回答しづらい、または回答できない状態になっているかもしれません。これは、自身の問いの立て方が誤っていたという学びにつながります。また、ときには相手を怒らせてしまうこともあるでしょう。これも、真摯に受け止めて相手へのフォローを忘れなければ、失敗を経て「問い」の技術を磨くための学びと捉えることができます。
質問に対する回答だけに集中するのではなく、こうした相手の細かな変化も読み取り、自分自身の学びに結びつけていく意識をもちましょう。
授業内では、こうした「問い」のテクニックを踏まえ、受講者に「学ぶ意味」を問う時間も設けられました。受講者一人ひとりの回答からどのような学びを得たか先生がフィードバックする時間が、まさに「問い」から得られる学びの実践として伝わるものでした。気になる方は、ぜひ授業動画を見てみてください。
文=宿木雪樹
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まず、学びを得る対象である「他者」とは、自分より優れていたり、年上だったりすることが条件ではありません。赤ちゃんから老人まで、性別や経歴を問わず、自分以外のすべての人は学びの対象となります。彼らは皆、多かれ少なかれ自分にはない考え方や経験を持っているからです。
他者から学びとなる発言や行動を引き出すためには、その他者とコミュニケーションを取る必要があります。そのときに重要になってくるのが、「問い」です。相手に質問を投げかけるときは、その質問の仕方を工夫すると、得られる情報量や反応が変わってきます。