目次
- 林外務大臣の訪中リスクと中国への直接投資について
- 「オミクロン株」がもたらす世界と日本経済への影響
2021.12.09
Schoo人気授業の1つ『田中秀臣の最新経済ニュース』シリーズでは、毎回最新のトピックが取り上げられ、経済の視点をベースにその全容がひも解かれていきます。講師を務めるのは経済学者の田中秀臣先生です。
11月26日(金)の授業でトピックとして挙げられたのは「林外務大臣の訪中リスク」「オミクロン株がもたらす世界と日本経済への影響」「補正予算の経済効果と乗数効果」の3つでした。先生は、これらトピックを経済の視点からどのように解説していくのでしょうか。
先日、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」が南アフリカで発見されました。(2021年11月30日、日本への帰国者からオミクロン株の感染者が初確認)
このウイルスの感染力や重症化率などは、本授業が放送された時点ではまだ不明でしたが、「世界経済には大きな変化が生じた」と田中先生は語ります。
まずもたらされたのが、世界各国の株式市場の大暴落です。先生曰く、本授業の放送日11月26日(金)、ヨーロッパ各国の市場や香港株式市場の株価は2~3%の暴落があったとのこと。
ちなみに今回のような株価暴落は、インド株(デルタ株)の蔓延時にも起こりました。そのため先生は「今後も新しい変異型のウイルスが蔓延すれば、インド株のときのような株価暴落が起こる可能性は十分にある。100%起きないとは言えない」と語ります。
また「もちろん日本にもリスクがある」と述べる田中先生。実際にオミクロン株の発見によって日経平均株価は700円超下がったそう。このことからも、インド株(デルタ株)の蔓延時のような経済停滞の時期が再び起こる可能性は否定できません。
では、日本はどうすれば良いのでしょうか。田中先生は「一刻も早い水際対策を強化」「その間に医療提供体制の脆弱性の解消」の2点を対策として挙げました。
「日本は島国。その利点を最大限活用するべき。せめてオミクロン株の正体がはっきりと明確になるまでは海外の出入国を禁止するくらい厳格化した方が良い」と語ります。
(11月29日、海外からの入国は原則禁止となりました)
ここまでの内容は、授業内で語られたことのほんの一部に過ぎません。授業後半からは、先日閣議決定された補正予算の経済効果と、乗数効果についてわかりやすく解説されていきます。乗数効果についてあまり知らない人はもちろん、補正予算の割り振りに対する先生の考えを知りたい方も、実際の授業を視聴してみましょう!
文=トヤカン
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授業の最初、先生が取り上げたのは「林芳正外務大臣の訪中リスク」についてです。近年、中国に対する国際社会の目が厳しくなりつつあるのは誰もが感じていること。直近では中国のテニスプレイヤー問題で、国際テニス連盟を中心にさまざまな国が人権に関して声をあげました。
そんな中、中国側から林外務大臣に届いたのは訪中の要請。その要請に林外務大臣は「前向きに考えている」とメディアで発言したそうです。そんな林氏の発言に、田中先生は「日本にとって非常にリスクが大きいこと」と語ります。さまざまな問題が挙げられている国にいま訪問することは、他国との関係性にも亀裂が生じる可能性があるためです。
しかし、日本側の中国への投資熱については「依然高いまま」と語る田中先生。
コロナ禍をきっかけにサプライチェーンの再編成が世界的に行われ、商品を生産する場が中国からタイやシンガポールといったASEAN地域に移りつつありますが、日本はいまだに中国への直接投資が増えているそうです。実際に授業内で先生が用いたスライドを見ると、2014年から2020年にかけて中国への直接投資が増えていることが分かります。
なぜ、中国への直接投資が増えているのでしょうか?田中先生は、その理由を以下のように語ります。
「直接投資が増える理由は単純で、それだけ中国の投資に旨味があるからなんです。依然として投資によって得られる収益性が高いということなんですね。
ASEAN地域もここ数年で伸びていますが、それはサプライチェーン再編成によるものが大きいから。ポイントとなるのは、サプライチェーンの再編成が行われているにもかかわらず、中国への直接投資も増えているという点にあります」
当たり前ですが、田中先生はこのような財界の中国投資熱を安全保障の面からきわめて厳しく批判しています。