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2023.05.11

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うまく状況判断ができない...。判断を誤らせる「無意識の思い込み」とは?

うまく状況判断ができない...。判断を誤らせる「無意識の思い込み」とは?

ビジネスシーンでは様々な悩みや迷いが生まれます。
そんな悩みにどのように対処していけばいいのでしょうか?

「ビジネスで使える賢い心理学」シリーズは、そうしたビジネスシーンならではの悩みへの一助となる、人の心の動きにフォーカスしたビジネス理論を学ぶ授業シリーズ。
日本マインドリーディング協会の理事である岸正龍(きし・せいりゅう)先生を講師に迎え、実際の場面で使える心理学の知識を教わります。

Schooの授業「大事な状況で自分の判断に自信を持つには」の内容をお届けします。
「他人と認識がズレてしまいがち」「うまく状況判断ができない」といった方、必見です。

目次

  • どうして判断を間違うのか?
  • 議論の流れを予測して、意見を事前に整理しておく
  • 自分のスタンスを決めて、会議の進行をシミュレーション

 

 

どうして判断を間違うのか?

ビジネスシーンに限らず、人生では状況判断が欠かせません。「このプロジェクトを続けるべきか」「いま自分は相手の興味のある話ができているか」「この人が自分に適した結婚相手か」...。様々な状況について、正しい判断を下すことは非常に重要なことですが、往々にして人は判断を誤ります。ではなぜ判断を誤るのでしょうか?

 

そこに密接に関わってくるのが「認知バイアス」です。

 

「同じものを見ているのに、人によって捉え方が違う」ということはよく起こりますが、その時作用しているのが認知バイアス。バイアスとは偏りや偏見のことですが、人が知らず知らずのうちに無意識に信じ込んでしまっている信念によって、事実認識が偏ってしまうことを「認知バイアス」と呼びます。

 

 

例えば血液型。人の血液型を聞くとその人がどんな人であるかに関わらず、その人を血液型に基づいた偏見=バイアスで捉えてしまうということが起こります。

 

A型の人のことは「几帳面な人」とか、O型の人は「大雑把な人」といった無意識の思い込みは、正しい判断を阻害してしまう要因に。たとえ普段は気にしていなくても、時に自分の失敗をこうしたバイアスによって認識できず「この問題はあの人が几帳面すぎるせいだ」といった誤った判断によってコミュニケーションが失敗することもあるでしょう。

 

この「認知バイアス」の罠からはどのように抜け出せるでしょうか?
重要なことは認知バイアスは脳の一つの機能であり、性格や頭の良さなどに関わらず誰しも持っているということです。

 


誰もが持っている「認知バイアス」の罠

認知バイアスは元々脳に備わった機能に伴う、「脳の癖」です。どういうことでしょうか。

 

認知バイアスを理解するために分かりやすい例として挙げられるものに、「ウェイソン選択課題」というものがあります。

 

 

「赤」「青」「2」「5」の4つのカードがある状態で、「カードの片面が偶数なら、その裏面は赤い」というルールを確かめるときに、どのカードを裏返す必要があるか。

 

ほとんどの人は直感的に「赤」を裏返すべきだと考えますが、実のところこのルールでは「赤の裏は偶数でも奇数でも構わない」ため、「赤」と「5」のカードはルールに無関係であることを見落としてしまいます。

 

これは脳の2つの機能の違いが関係しています。
脳には「じっくり考える機能」と「早く答えを出す機能」があり、瞬間的に答えを出そうとすると、どうしてもじっくり考えるより無意識の思い込みを利用することになります。それが認知バイアスです。

 

赤信号を見て止まるときにじっくり考える人はいません。直感的に早く答えを出そうとするときは無意識の信じ込みによって状況を判断しているからです。

 

つまり認知バイアスとは瞬間的に答えを出そうとする脳の1つの機能に伴う、ある種の「脳の癖」であり、人格などに関わらず誰しも逃れられないものなのです。

 

それでも「もしかしたらこの判断は認知バイアスなのでは?」と自分で意識できれば、バイアスをなくすことはできなくとも、誤った判断をするリスクを軽減することができます。


自分が宇宙の中心と勘違いする「スポットライト効果」

認知バイアスには様々なものがありますが、その中でも自己意識と強い関わりを持つのが「スポットライト効果」です。

 

スポットライト効果とは「自分が周りから注目を浴びているはずだ」という認知バイアスです。

 

例えば大勢の前で自己紹介やスピーチをするとき、みんな自分の話に注目しているはずだと思いがちですが、実際のところはみんな各々「自分の自己紹介はどうしようかな」などと考えている、といったことがよくあります。

 

自分自身も他人の自己紹介を聞きながら同様に自分の自己紹介の内容を考えているにも関わらず、いざ自分の番となると「みんな自分の話に注目しているはずだ」と考えてしまう、その認知の偏りがスポットライト効果です。

 

 

このことを心理学者のトーマス・ギロビッチ氏は「私たちの誰もが自分自身の宇宙の中心にいる」と表現しました。

 

面白い実験があります。本人は恥ずかしいと思っているTシャツを着て、大勢のいる部屋に入り、本人の周囲の人がどの程度そのTシャツに気がついたか、「本人」「周囲の人」そして実験の外から「状況をビデオで見ていた人」それぞれに聞ききました。

 

 

その結果、「本人」と「周囲の人」との認識には倍近い差が生じたにも関わらず、「状況をビデオで見ていた人」と「周囲の人」との差はほとんどありませんでした。

 

つまり状況を客観視できていれば、他者の認識とほとんどズレが生じない状況にも関わらず、自分のこととなると他者の認識と大きくズレてしまうということです。

 

スポットライト効果によって、自分の認識と他者の認識に差が生まれてしまい、コミュニケーションにおいて自分と相手の距離が測れなくなっていくことで、状況判断に誤りが生まれてしまいます。

 

例えば、「もっと注目を浴びるために焦って話を過剰に盛ってしまう」とか、「失敗に過剰に反応してしまって自信をなくし、新しいことに挑戦できなくなる」といった問題は、典型的なこのスポットライト効果の罠と言えるでしょう。良くも悪くも、他人は自分が思っているほど自分に注目してはいないのです。

 

スポットライト効果は自己意識が強い人ほど大きなバイアスとなってしまいがちです。そうした傾向がある人は、一歩引いて「自分の意識が考えているのか、スポットライト効果がそう考えさせているのか」と考えることで、この罠を回避することができます。

 

岸先生はスポットライト効果に限らず、「どんな判断にも認知バイアスがあるということを知っておくことがなによりもまず大事」と言います。大事な状況で自分の判断に自信を持つために、まず自分の「脳の癖」を理解してみることから始めませんか?

 

授業ではこの他にも知っておくべき重要な認知バイアスとして「コンコルドの誤謬」や「自己奉仕バイアス」といったものが紹介されました。これらのバイアスについても興味を持たれた方は、ぜひ実際の授業で続きをご覧ください。

 

今回取り上げたSchooの授業はこちら!
『大事な状況で自分の判断に自信を持つには』

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