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2023.01.12

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質問は最低限でいい。百戦錬磨のインタビュアーが教える「聞く技術」

質問は最低限でいい。百戦錬磨のインタビュアーが教える「聞く技術」

インタビューだけでなく、面接や商談、日常生活などあらゆるシーンで求められる「聞く」コミュニケーション力。テクノロジーの発達によって聞き手が介在せずコミュニケーションが実現する場も増えてきましたが、そんな現代社会こそ、聞く技術の需要は高まっています。

今回は、累計2万5,000人以上に話を聞いてきたインタビュアー・ライターの宮本恵理子さんにインタビューの現場で培ったノウハウをお聞きしました。

※この記事はSchooの授業「行列のできるインタビュアーの聞く技術」を再編集しています。

目次

  • 簡単に発信できる時代に高まる聞き手としての価値
  • 話し手の言葉を「解釈」し、本質を探る
  • 話を深めるのは「質問」とは限らない

簡単に発信できる時代に高まる聞き手としての価値

誰でも気軽に、無料で発信できる時代に、わざわざ聞き手を介在させて思いを伝えることにどんな意味があると思いますか。私は、むしろ今だからこそ「聞き手」が求められていると思います。

 

心の内側にある意見や感情を、自ら掘り起こしながら発信し続けていくことには限界があります。自分自身では気づけない潜在的な部分の表現をお手伝いするのが、聞き手の役割であり価値なのです。

 

昨今は業務効率化やAIの技術が発達していますが、「聞き手の役割がテクノロジーによって代替されるのではないか」と考える方もいるでしょう。 確かに、正確かつスピーディに書き起こすだけのレポートなら、AIに任せたほうが優秀です。

 

しかし、人間同士の共創からしか生まれないものもあります。予定調和ではなく、「予測不能なコミュニケーションを紡ぎ出せることが、聞き手の介在する価値」であり、それこそが聞き手にしかできないことなのです。

 

「自分の話をじっくり聞いてほしい」という気持ちは、人にとって普遍的な願いであり、今後も聞き手は変わらず求められる存在です。だからこそ、私たちは聞く技術を身につけ、聞き手としての価値を高めていく必要があります。

 

 

話し手の言葉を「解釈」し、本質を探る

 

そもそもインタビュアーとはどんな仕事なのでしょうか?私が考えるインタビュアーとは、「自力で言えない思いを伝えるお手伝いをすることが仕事」だと思っています。それと同時に「無色透明な存在でいたい」と胸に秘めつつ、日々色んな方にお話を聞いています。

 

特に意識しているのは、話し手側におもねることなく、話し手と読者をつなぐこと。聞き手として個性を出さねばとは考えずに、ニュートラルな気持ちでお話を聞くのです。内容をコントロールしようなどとは一切考えません。

 

インタビューは1対1のコミュニケーションと思われがちですが、実は1対nの場。私が読者を代表してお話を聞いている感覚です。ただ、書き手としての個性は自然に出てしまうものなので、聞くときと書くときは別物と割り切っています。

 

また、インタビューの中で大事にしていることは、相手の話を『翻訳』するのではなく『解釈』すること。言葉は便利ですが、万能ではありません。例えば、話し手が言葉で表現している内容と、表情から読み取れる内容が逆の場合もあります。

 

だからこそ言葉だけにはとらわれず、話し手が本当に言いたかったことは何なのか、解釈の「キャッチボール」を通じて本質を探るようにしています。

 

 

話を深めるのは「質問」とは限らない

では実際にビジネスの現場ではどのようにして、相手の話を聞くと良いのでしょうか。私がインタビューの現場で培ってきた仕事で使えるノウハウをご紹介します。

 

1、「あなたのこと、ここまで知っていますよ」をさり気なく伝える

2、事前に用意する質問事項の数は最小限に絞る

3、質問より言い換えや解釈のリアクションを多めに

4、安心と信頼を何より大切にする

 

相手の話を聞くときは「事前準備を見える化」することが大事です。私は「視点合わせ」と呼んでいますが、あなたのことをここまで知った上で私はここに来ている、ということをはじめにお伝えすることで、その後の話の密度が大きく変わってきます。

 

これはなにも難しいことではなく、事前に相手のインタビュー記事やSNSなどを調べるなどするだけでも、十分な準備が可能です。 インタビュー時には「余白」をつくることを意識しています。事前に細かな質問は用意せず、これだけは聞いておきたい!という最低限の質問リストしか用意していません。

 

余白を残すことで、話を聞いていくうちに新たな質問が生まれ、その場でしか聞くことができない独自性のあるお話を引き出すこともできるのです。 また、質問よりも有効なのが「言い換えや解釈のリアクションを多めにする」こと。話し手が言ったことに対し、『つまりこういうことですよね?』と、言い換えたり解釈を伝えたりすることを意識しています。

 

その解釈が正しければ安心して続きを話してくれますし、誤っている場合でも訂正してもらうことで、理解が深まっていくのです。 以前、取材を受ける機会が多い方に対し、どんなインタビューだと話しづらいかを聞いたところ、「矢継ぎ早に質問される取材」という答えがありました。

 

『質問はたくさんしなければいけない』という考えている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その思い込みは、一度捨ててみてもいいかもしれません。 インタビューも会話のキャッチボールを意識することが大切です。

 

共同作業で、その場をいい時間にしていく意識で取り組んでいくと、話し手も安心してその場を楽しむことができ、お互いに有意義な時間となるでしょう。

 

ぜひ、ここでご紹介した「聞く技術」を日々の会話に活かしてみてください!

 

 

今回取り上げたSchooの授業はこちら!
行列のできるインタビュアーの聞く技術

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