目次
- コロナ禍で有効求人倍率はどれだけ低下した?
- コロナ禍の影響を大きく受けた職種、受けなかった職種
- 2021年の有効求人倍率はどうなる?
- 2021年の転職市場、3つのポイント
2021.02.03
2021年はいったいどんな年になるのか?
2020年は新型コロナウイルスの大流行により世間に大きな変化が生じた年でした。だからこそ、2021年はどうなるのかと不安を覚える人は少なくないはずです。
特に転職市場の動向は景気に大きな影響を受けることもあり、そろそろ転職したいと考えていた人の関心は高いでしょう。
そこでSchooの授業シリーズ『2021年大予測』ではパーソルキャリア執行役員兼doda編集長の喜多恭子先生を講師としてお招きしました。転職を考えている方は、ぜひご一読ください!
次にグラフは「職種」に移りました。全体の中でも求人数を減らしたのが「販売・サービス系」「事務・アシスタント系」。これらの職種の求人数は生放送時点ではいまだ回復が見られません。
一方、「技術系(IT・メディカル)」「建設土木系」の減少幅は緩やかという状況でした。コロナ前から生じているDX化の流れから、「事務・アシスタント系」の求人はコロナ後も戻ることはないという見方が支配的だということです。
転職希望者のデータに目線を移すと、「販売・サービス職」への転職希望者数の増加が目立ちます。求人数が多く、働き方を見直したい・よりよい労働環境に移りたいという方から人気が集まることで、これらの職種の転職希望者数は伸びたと考えられるとのこと。
全体をまとめると、コロナ禍前から生じていた産業構造の変化が加速し、転職市場は急激に買い手市場に変化しました。リーマンショックのときよりも求人の減り幅は少ないものの、ポテンシャル採用から経験者採用へと急速にシフトしているのが現状のようです。職種別では、DXへの注目度の高まりとともにIT技術者の活動が活発になっています。
「今回、ある意味強制的にコロナ禍以前から“やらなきゃ”といわれていたテレワークやデータ活用が進んだ」と喜多先生。コロナ禍により企業のデジタル活用が進んだ状況に合わせて転職者も意識を変えなければならない局面といえるかもしれません。
2021年の国内転職市場は「求人数は緩やかに回復し、秋口から求人倍率上昇の兆し」と予測されています。ただし、コロナ禍以前に2.5倍近くに達していた求人倍率が元の水準に戻ることはなく、最大でも2.27倍程度というのが現実的なラインとのこと。
ただし、5年近く買い手市場が続いたリーマンショック時よりは回復は早く、3年程度で緩やかに回復するのではないかと考えられます。また、DXと親和性の高いIT・エンジニア職は他の職種に先駆けてコロナ前の水準に回復するかもしれません。
つづいて予測されるのが「HRテック」による定量的なデータに基づいた人事戦略。HRテックは「データを活用した最終選考官の選別」や「入社後のミスマッチ解消」「バーチャルなコミュニケーションの場を利用したエンゲージメント向上」などに役立てられます。
また、ジョブ型雇用への移行、フリーランス社員の活用、副業社員の増加といったトレンドは進むと喜多先生。転職希望者はそれぞれの価値観にあった働き方を希望しており、優秀な社員を確保するために企業のルールも変化していくことが予想されます。パーソルキャリアでもマーケットデータに基づいた「ジョブごとの報酬水準データの提供」を開始したところ、転職者だけでなく企業から反響があったとのことです。
ここまでの内容を喜多先生は「求人数の回復」「データ活用格差」「働き方バリエーション格差」の3つにまとめました。
求人数については、職種・業種別に相違はあるものの、2021年は徐々に求人数が回復していくとのこと。しかし、選考期間は過去の1.5倍程度長くなるそうです。また、転職希望者は積極的に中途採用を行う方とコロナ禍の収束を待つ方で二分されているとのこと。2021年度のコロナ禍の状況は誰にも予測できませんが、だからこそ積極的に準備することを先生はおすすめしています。
また、2021年度はオンラインで取れたデータを使って社員の評価やミスマッチ防止に努める企業が増えたり、働き方をジョブ型に移行させたりフリーランスを活用したりする企業が増えるとのこと。そのような状況下では今まで以上に自律自走できる人材の価値が高まります。
2021年以降は1989年~1995年生まれのミレニアル世代が全世界で働く人の4分の3を占めるようになり、1996年~2000年代生まれのZ世代も労働人口に加わり始めます。柔軟性や自由、満足感を求めるこれらの世代に対峙するために企業も変化していくことは押さえておきましょう。AIによるジョブの変化も今後どんどん加速していくといわれています。
文=宮田文机
喜多先生の2021年の転職市場大予測のポイントは以上です。コロナ禍という予測不能な出来事があったものの、世の中の向かう方向性はそれほど大きく変わっていないのかもしれません。転職市場で価値を発揮できるようなキャリアを築くために、これからもSchooで得られる知見をどんどん活用していきましょう!
『2021年の転職市場を大予測シリーズ 第4回 2021年の転職市場を大予測——コロナ影響とニューノーマル時代のキャリア形成』http://schoo.jp/class/7537/room?ref=pencil
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まず授業では国内をマクロで見たときの転職市場の変化を概観するところから始められました。2020年9月、有効求人倍率(1人当たりの求人の数)はコロナ禍を境に6年9か月ぶりの低水準を記録。正社員だけで見ると1人当たりの有効求人数はすでに0.78と1.00を割り込みました。
すなわち、1つの正社員の求人に1人が就職するとすると、余ってしまう人が出てしまうという状況です。2019年9月から2020年9月にかけて有効求人数は大幅に減少して74.5%に、一方有効転職希望者数は増加して114.3%に到達しました。つまり、転職市場は「買い手市場」に変化しているのです。
業界別の変化も見ていきましょう。コロナ禍以前からの日本の傾向としては、「サービス系」「IT/通信」「メーカー」の順に求人数が多いという状況が続いていました。コロナ禍を経てほぼすべての業種が求人数を減らしています。そのなかでも顕著なのが「メディア」「商社/流通」「メーカー」の大幅な減少です。一方、「IT/通信」「金融」「メディカル」は相対的に減少幅が少なく持ちこたえていると喜多先生。
「メディア」が減少した背景には、外食産業が打撃を受け広告出稿が減らされたことで広告系の求人が減らされたという事情があると先生は分析します。