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2021.05.29

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マーケティング戦略を用いて学ぶラーメン二郎。ラーメンに留まらないその提供価値とは?

マーケティング戦略を用いて学ぶラーメン二郎。ラーメンに留まらないその提供価値とは?

みなさんはラーメン二郎がどうして誰もが知る繁盛店の一つとなったと思いますか?

その秘密を経営学・そしてジロリアン(ラーメン二郎をこよなく愛するファン)の目線から分析し、2010年に『ラーメン二郎にまなぶ経営学』(東洋経済新報社)を著した牧田幸裕先生。その講義を直々に受け、たっぷりのラーメン二郎愛と経営に役立つ実践的な戦略を摂取できるのがSchooの授業シリーズ「ラーメンですべてがわかるビジネス教室」です。第二回『ラーメン二郎から学ぶ「マーケティング戦略」(後編)』は奇しくも「二郎の日」である26日に開講されました。

本記事では、ラーメン二郎に学ぶマーケティング戦略実践編ともいえるその内容の一部をわかりやすくご紹介します。

目次

  • 「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の違いとは?
  • マーケティング・ミックス(4P)はどう考えるべきか
  • ラーメン二郎の巧みなマーケティング戦略の秘密

 

 

「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の違いとは?

 

 

「マーケティング戦略はどうやってつくられていくのか」と問いかける牧田先生によって提示されたのが、以下の「マーケティング戦略策定プロセス」の図です。

 

 

 

世界で一番使われているマーケティングの教科書、P・コトラー著『マーケティング・マネジメント』の1,000ページ分の内容を無理やりA4一枚にまとめると上図の通りになると先生は話します。

 

ここで理解しておきたいのが「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の違い。下図において、でっぱりのない左側のブロックがセグメンテーションで、複数のブロックが出っ張っている右のブロックがターゲティングだとまず先生は説明します。

 

 

 

「例えばみなさんが合コンに行ったと考えてください」と先生。ここで参加者が横並びになった状態が左側のセグメンテーションです。一方、合コンの終わりには「この人に誘いをかけよう」といった思惑が生じています。この誰かを選ぶ意思決定が右側のターゲティングです。「合コンで全体を攻めてはいけませんよ」と先生。

 

なぜなら、一人一人に好みがあり、全員が好きになる人というのは存在しがたいからです。この状況を指して先生は「成熟市場において顧客ニーズが細分化している中では全体を攻めるというのは得策ではない」と表現します。つまり、ビジネスでもまずはターゲット顧客を設定しなければなりません。

 

 

 

設定できたら、次に考えるのがターゲット顧客のニーズです。ニーズが明らかになったら、それに合わせて我々は競合との違いを明らかにしてアピールしなければなりません。そのために行うのが「ポジショニング」なのです。ポジショニングにおいて重要なのがターゲット顧客のニーズに対して整合性が取れていること。相手にとってメリットではない部分で独自性を発揮できても選ばれることはないのです。

 


マーケティング・ミックス(4P)はどう考えるべきか

ターゲット顧客とポジショニングの軸が定まったとしましょう。そうなったタイミングで行うのがマーケティング・ミックス(4P)。「製品戦略」「価格戦略」「チャネル戦略」「プロモーション戦略」4つの戦略を策定するのです。

 

製品戦略に活用すべきなのがポジショニングの軸。軸にそって強みを実現できるような製品やサービスを開発することが求められます。製品戦略が定まれば原価が求められます。それとターゲット消費者が支払ってくれる上限価格を照らし合わせて価格戦略を練ることになります。

 

製品・サービスを売る場所を意味するチャネルを左右するのはこれまたターゲット消費者です。彼らが一番手に取りやすいところにチャネルを設定しましょう。プロモーションはコンテンツとプロモーションチャネルの2つに分かれます。いずれもターゲット消費者を起点に考えることができ、ターゲット消費者にどのように、どのような媒体で訴求すればプロモーションの効果を最大限に発揮できるのかを考えることからはじまります。

 

 

 

ターゲティング、ポジショニング、マーケティング・ミックスの流れに求められるのは整合性です。そして、ラーメン二郎が成功し続けている秘密も、これらの整合性を軸に考えれば解明できると牧田先生は話します。

 


ラーメン二郎の巧みなマーケティング戦略の秘密

ラーメン二郎の本店があるのは慶応大学のキャンパスを擁する三田。最初のターゲット顧客は慶応大学の運動部でした。練習後の腹を満たしたい、という学生のニーズに応えるため、ラーメン二郎はどんどんボリュームを増やしていったのです。そのころの二郎の提供価値は“おなかが一杯になる”でした。

 

しかし、現在の二郎の顧客は学生ばかりではありません。30代、40代以上の人々もたくさんファンとして足を運んでいます。既存顧客の高齢化問題が二郎に起きているのです。そして、彼らに共通するのが中間管理職として組織や社会の荒波の中でもまれていることだと先生は分析します。

 

 

 

そんな彼らに二郎が提供しているのが、大盛りのラーメンをすべて食べ切ったという“達成感”。達成感は一人では得られません。横並びのカウンターで同時に提供されるラーメンを一緒に食べるジロリアンたちとの一体感を感じながら食べるという体験も二郎でしか得られない価値なのです。

 

もちろん達成感を得られるよう、ぎりぎり完食できるくらいの量を設定するという気遣いも欠かせません。また、ラーメン二郎の多くの店舗は大学から何度も足しげく通える場所で営業されています。かつての学生たちは大人になって社会にもまれる中で、二郎に懐かしさを覚えるようになります。

 

そうした状況を指して牧田先生はラーメン二郎を「第二のお母さんの味噌汁」と表現します。これはラーメン二郎の経営者が最初から意図していたことではないでしょうが、期せずして巧みな製品戦略となっているのです。

 

 

 

ここでリアルタイム受講生から「ラーメンを通して達成感を得られるってかなり満足度の高いコンテンツですよね」とコメントが。先生は「すごく良いポイント」と応答し、今の日本の産業のほとんどが成熟市場になっており、技術や機能の向上がほとんど限界に近付いていることに言及します。このような市場で自社製品を選んでもらうには、モノだけでは不十分。コト、すなわち体験をセットで提供することが不可欠なのです。

 

ラーメン二郎もラーメンというモノだけでなく、達成感や一体感、ノスタルジーといったコトを提供することで現在も選ばれ続けているということですね。

 

本記事で紹介する授業の内容は以上です。身近な例を用いた先生のマーケティング講座はまだまだ続きます。ぜひ、録画授業でご確認ください。また、二郎の“ポジショニング”について詳しく取り扱った授業の前編や、第三回『ラーメン二郎から学ぶ「競争優位性」』もおすすめです!

 

文=宮田文机

今回取り上げたSchooの授業はこちら!
『ラーメン二郎から学ぶ「マーケティング戦略」(後編)』

 

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