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2020.09.08

column

なぜテーマパークでは朝から風船を売っている? 夢の国に学ぶマーケティング術

なぜテーマパークでは朝から風船を売っている? 夢の国に学ぶマーケティング術

テーマパークに朝から並んで入場すると、ゲートに近くで風船を売っているキャストさんをよく目にします。しかし、あの風船朝から買う人はほとんどいません。一日中風船を持ちながら遊ぶのは煩わしいと考える人がほとんどだからです。

それではなぜ、テーマパークではなぜ朝から風船を売っているのでしょうか?

その答えを持っているのがテーマパークコンサルタントで株式会社スマイルガーディアン代表の清水群先生です。

ディズニーランド・USJの二大テーマパークで10年近く働いていた清水先生。そこで学んだビジネスノウハウをまとめた『なぜテーマパークでは朝から風船を売っているのか? テーマパークで学ぶビジネスの教科書』(河出書房新社)を下敷きに、全3回で講義するのがシリーズ『テーマパークで学ぶビジネスの教科書』です。

一説には600種類近くの職種の人々が働いているともいわれるテーマパーク。そこで使われているノウハウにはエンタメ産業のみならず、どのような業界でも共通する要素があります。

目次

  • なぜテーマパークでは朝から風船を売っているのか?
  • テーマパークに人が集まる10の理由
  • テーマパークではなぜいらっしゃいませと言わないのか?

 


なぜテーマパークでは朝から風船を売っているのか?

 

 

みなさんの多くが気になっているであろう、テーマパークで朝から風船を売っている理由、それは“帰りの購買をうながすため”です。

 

お子さんと一緒にテーマパークにいったと想像してみてください。朝入り口で風船を見た子供たちは必ずと言っていいほど「欲しい!」と無邪気におねだりします。でも、先に挙げたわずらわしさがあるのでそこでは子どもに我慢してもらうことになります。

 

しかし、散々遊んだ帰りには、もう風船が邪魔になることはありません。そこで子どもに「欲しい!」「朝『あとで』っていったじゃない」といわれたら財布のひもが緩んでしまうという方は少なくないのではないでしょうか。

 

「今度テーマパークに行ったら風船を売っている人数を朝と夕方以降で比べてください。絶対に朝より夕方の方が増えています」と清水先生。

 

このように“「売れる必然」を作ること”がマーケティングだと先生はテーマパークでの仕事の中で学んだそうです。

 

 

この手法は例えばカフェやレストランのショーウインドウにも共通しているでしょう。実物を見ることで、知らず知らずに購買意欲が高められているのです。

 

アメリカのディズニーランドでは入社時に「ディズニーランドってどういう会社ですか?」と質問されることがあるのだと先生はいいます。

 

その答えは「夢を見させてくれる魔法の国」……ではなく「営利企業」です。
しっかりとした戦略があるからこそ大勢の従業員を抱え、来場者に夢を見せることができる。

 

テーマパークにマーケティングの秘訣が詰まっているのも必然といえるでしょう。

 


テーマパークに人が集まる10の理由

マーケティングの定義につづいて清水先生がレクチャーするのは「テーマパークに人が集まる10の理由」です。

 

ここではそのうち7つ目までをご紹介します。

 

一つ目は非日常性。

 

遊園地の来場者は基本的に男性よりも女性が多いと先生。その理由は飲み会や釣り、ゴルフといった男性のレジャーに対し、まだまだ女性にとって非日常性を感じられる場が少ないからだといわれているそうです。

 

そのため、観覧車やジェットコースターといった日常にはありえないアトラクションを楽しめるテーマパークは女性を惹きつけているのです。

 

二つ目は食。これは単に食べるものがある、という意味にとどまらず生きるために必要なものをきっちりと取り揃えているという状態を意味します。オクトーバーフェストなど食にまつわるイベントは毎年大盛況を迎えていますよね。それは、衣食住といった生きるために必要なものは万人の興味を引き付けるからなのです。

 

三つめはオリジナル性。そこでしか買えない商品を目当てにテーマパークに足を運ぶ人は多く存在します。

 

四つ目は限定品・季節商品。オリジナル性と似ていますが、さらに季節という要素を加えることでリピート率を高めるという意図があります。

 

五つ目はフックの多さ。興味がわくポイントは人によって違います。そのため、引っかかる点はできる限り多く用意した方がいいというのは単純ながら真理といえます。

 

六つ目はデートコース。「やはりカップルで行ける場所は本当に人が集まります」と先生。地方の遊園地でイルミネーションが始まったとき「やっと○○(その土地)にも2人で行ける場所ができた」と来場者のカップルがこぼしたという話があるそうです。集客を狙うなら、2人(カップル)で行ける場所になっているのかどうかは念頭に置くべきポイントです。

 

七つ目は家族や仲間の絆。非日常性はスマホやゲームを通しても味わうことができますが、リアルな空間で感じられるつながりや絆はそこにしかないものです。現在コロナウイルスでなかなかつながりを持つことが難しくなっていますが、だからこそ求められているのかもしれないと清水先生。

 

 

以上、「テーマパークに人が集まる7つの理由」でした。残りの3つについてはぜひ実際に授業動画で確認してみてください。「こんな要素もあったのか」ときっと驚かれるはずです。

 


テーマパークではなぜいらっしゃいませと言わないのか?

最後にレクチャーされたのは「テーマ―パークの接客に学ぶ関係性の深め方」です。

 

ここで先生から以下の質問が。

 

Q.多くのテーマパークではなぜいらっしゃいませと言わないのか?

 

 

「非日常性を演出するため」「フレンドリーな関係をつくるため」など、リアルタイム受講生のみなさんからさまざまなコメントが寄せられました。

 

そのどれもがある意味当てはまるといいつつ、先生が用意した答えが「双方向のあいさつによって会話につなげやすくなる」です。

 

「いらっしゃいませ」というあいさつは一方方向であり返答がきまっていません。しかし「こんにちは」「ようこそ」といったあいさつならば、会話のきっかけとなりそこから相手を深く知ることにつながります。

 

これからは接客において会話の双方向性も意識してみてはいかがでしょうか?

以上、『テーマパークで学ぶビジネスの教科書』第一回の講義のまとめでした。第二回の講義は「ジェットコースターから学ぶリーダーとしての姿勢」。9月15日(火) 20:00 - 21:00に公開予定です。ぜひチェックしてくださいね!

 

『テーマパークで学ぶビジネスの教科書 第1回 なぜテーマパークでは朝から風船を売っているのか?』

http://schoo.jp/class/7075/room

 

『第2回 ジェットコースターから学ぶリーダーとしての姿勢』

http://schoo.jp/class/7075

 

文=宮田文机

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