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2021.04.23

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なぜ人は感情が乱されてしまうのか? 『怒らない技術』著者が教えるアンガーマネジメントのコツ

なぜ人は感情が乱されてしまうのか? 『怒らない技術』著者が教えるアンガーマネジメントのコツ

自らの「感情」をコントロールすることはすべてのビジネスパーソンに求められるスキルです。特に制御したいのが「怒り」。みなさんは仕事でついついイライラしてしまった経験はありませんか?

昨今、怒りをコントロールする技術、アンガーマネジメントに注目が集まっています。2010年に出版されたシリーズ100万部のベストセラー『怒らない技術』(フォレスト出版)は、アンガーマネジメントの概念を伝える先駆的な書籍。Schooではその著者であり、(社)日本リーダーズ学会代表理事・リーダーズアカデミー代表を務める嶋津良智先生を講師として迎え、アンガーマネジメントの手法について「なぜ必要なのか?」という基礎から伺いました。

本記事ではその一部をテキストでお届けします!

目次

  • 感情は“自ら選べるもの”
  • 良い/悪いが存在するのは「感情」ではなく「表現」
  • 感情が乱される原因はあなたに「○○」があるから

 

 

感情は“自ら選べるもの”

 

 

嶋津先生が最初に取り上げたのが第二次世界大戦中のドイツにおける収容所の体験記録を記した「夜と霧──ドイツ強制収容所体験記録」(みすず書房)という書籍です。その一節「あらゆるものを奪われた人間に残されたたった一つのもの、それは、与えられた運命に対して自分の態度を選ぶ自由、自分のあり方を選ぶ自由である。」を引用した先生は、「感情は選べるものだ」と語ります。よく「瞬間湯沸かし器」などといった表現を用いて怒りの感情は制御できないものといわれます。しかし、それは間違いです。なぜなら、人は自分の感情を選んで生きているから。

 

例えば部下にかっとなって頭ごなしに怒りをぶつける上司も、自身の上司やクライアントに同じ態度をとったりはしません。それは、感情をコントロールできる何よりの証拠です。また、“人間は年を取ると丸くなる”という言葉があります。嶋津先生曰く、これは「感情の選び方を覚えた」ということ。相手の立場や状況によって人は感情を選ぶ生き物だという前提を押さえ、感情の適切な選び方──感情マネジメント──を身につけましょう!

 


良い/悪いが存在するのは「感情」ではなく「表現」

「怒りの感情に良いも悪いもない」と嶋津先生は断言します。ただし、その表現には「良い/悪い」が存在するとのこと。要するに、怒らない技術は決して「怒っちゃダメですよ」ということではありません。人間の感情を肯定したうえで、その伝え方を間違えないようにするテクニックなのです。その目的は「感情のダイエット」と先生。

 

怒りの感情をふくらまし過ぎず、否定して全くなくしてしまうのでもなく、身体を適正体重に保つように、適切なサイズにとどめることが重要なのです。そのために意識すべき数字が「8:2」。「人が表に出している怒りの感情の『8割』は不必要な自己満足の感情だといわれています」と嶋津先生。そのため、余計な8割をカットし必要な2割は肯定するというのが理想的な状態だと考えられるのです。

 

 

 

感情の取り扱いを考えるうえでもう一つ覚えておきたいのが「右手に理論、左手に感情」というスローガン。ビジネスにおいてロジカルであることは欠かせません、とはいえ、それだけで動かない場面があるのもまた事実。理想的なリーダーとなるには、理論と感情の両方を掌握し、両立させることがかかせません。

 

だからこそ「感情のコントロール=成果のコントロール、感情のコントロール=人生のコントロールと言っても過言ではない」と先生は語ります。ビジネスを進めるうえでの片輪が感情なのです。そして、感情のなかでもマイナスな結果を引き起こしやすい怒りの取り扱いは最重要事項のひとつ。怒りを上手にコントロールできると「年収が約2倍」「平均寿命が7年ほど長くなる」という研究結果も存在します。

 

アンガーマネジメントを身につける意義が十分に伝わったのではないでしょうか?

 


感情が乱される原因はあなたに「○○」があるから

とはいえ、どうしても怒りに支配されてしまう場面はある、と感じる方も多いでしょう。そもそも人はなぜ感情が乱されてしまうのでしょうか?

 

「人間はそれぞれ枠にとらわれていますね?」と先生。その枠には自身の期待や価値観、思い込みなどが当てはまります。例えば毎回ぎりぎりの時間で会議に参加し、ときには遅れることもあるAさんがいるとします。それに対し、時間にきっちりしているタイプの人は「どうして時間を守れないんだ?」とイラっとするかもしれません。他方、それで感情が乱されない人もいます。

 

「両者の違いは、時間にきっちりしていない人という事象が、『感情が乱されない』出来事として消化する自身の枠に含まれているかどうか」だと先生は分析します。つまり、自分の枠を広げることができれば、容易に感情が乱されてしまう事態は防げるはずなのです。

 

言い換えれば、「それってムカつく!」「普通○○でしょ?」など「こうあるべき!」と決めつけるマイルールが怒りの原因ということになります。怒りっぽい人は、自分のマイルールを相手も普通に理解していると勘違いしてしまっているのかもしれません。

 

 

 

感情を乱されないためには、まず自身の感情が乱される原因(=マイルール)を見つけましょう。例えば以下のような考えはマイルールに含まれます。

 

・雑用は後輩がやって当たり前
・少しくらい体調が悪くても熱があっても出社すべき
・上司/先輩から飲みに誘われたら必ず参加すべき
・上司は部下におごるべき
・自分に与えられた仕事は最後まで責任をもってやり遂げるべき
・同僚が困っているなら助けるのが普通

 

あなたにも抱いているマイルールがきっとあるはず。「普通」「当たり前」と自らが考えていることをまずは客観視してみましょう。

 

 

 

ただし、押さえていただきたいのがマイルールは決して悪いものばかりではないということ。例えば「法律は守るべき」というのもマイルールですが、現代日本においては誰もが持つべきです。良い・悪いの判断は別にして自身の中にマイルールがあるという事実に気づくことが、アンガーマネジメントにおいては重要なのです。この講義を受けてリアルタイム受講生からは以下のような「マイルール」が報告されました。

 

・お客さんを大事にすべき
・空気を読むべき
・誤字脱字は完ぺきにチェックすべき

 

当然と思えるものもあれば、実はいつ何時にも当てはまるわけではないと感じられるものもあるのでは?みなさんもぜひ、自身のマイルールを考えるところからアンガーマネジメントをスタートしてみてください!

 

『怒りをコントロールするための「アンガーマネジメント」入門』はシリーズ授業です。第二回では「仕事でも家庭でも活かしたい怒りのコントロールのコツ」と題し、より具体的な「怒らない技術」についてレクチャーがなされます。第一回の録画授業とともに、ぜひご覧になってみてください!

 

文=宮田文机

今回取り上げたSchooの授業はこちら!
『怒りをコントロールするための「アンガーマネジメント」入門 第1回 価値観が多様な時代に学ぶ「アンガーマネジメント」のキホン』

 

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