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2020.11.04

column

【UXデザイン思考とは?】プレゼンやマネジメントにも活かせる重要性と事例

【UXデザイン思考とは?】プレゼンやマネジメントにも活かせる重要性と事例

ヤフーでデザイナーとしてのキャリアをスタートさせ、サイバーエージェント、リブセンス、弁護士ドットコムなどの企業で数多くの事業・プロダクトの立ち上げに携わってきた金子剛(かねこ・つよし)先生。

現在は無人コンビニ事業のスタートアップ600(株)でハードウェアのUX設計を行いながら、副業で多くの企業のデザイン顧問・採用顧問や新規事業立ち上げサポートに携わっています。

11月5日(木)20:00からSchooにて、金子先生を講師として迎えた授業シリーズ『UXデザインのはじめ方』がスタートします。 みなさんは、UXデザインはデザイナーだけが知るべき考えだと思っていませんか。金子先生曰く、UXデザインはこれからビジネスの当たり前となる思考法とのこと。

経営者、営業、マーケター、エンジニアなどあらゆる職種の方が押さえておいて損はありません。 今回はUXデザインの基本的な考え方やプレゼンやマネジメントなど日常の業務における活かし方について、金子先生にお話を伺いました。

「UXデザインという言葉は使わないようにしている」と話す金子先生。まずは、その理由は何か、というところからUXデザインを学びはじめてみましょう。

目次

  • UXデザインとは"ユーザーエクスペリエンス(顧客体験)を最大化すること
  • 一般ビジネスパーソンがUXデザイン思考を生かせる事例
  • なぜUXデザインは重要なのか。プロダクトマネージャーとして働く中で気づいたこと
  • UXデザインのフレームワーク“OODAループ”とリモートワークでの活用法
  • UXデザイナーという仕事はこれからなくなる?
  • 金子先生がご登壇された「UXデザインのはじめ方」は授業はこちらから視聴!

 

UXデザインとは"ユーザーエクスペリエンス(顧客体験)を最大化すること

 

 

──早速ですが、金子先生は「UXデザイン」という言葉をどう定義されていらっしゃいますか?

 

金子剛先生(以下、金子):UXデザインとは“ユーザーエクスペリエンス(顧客体験)を最大化すること”、すなわちいつもの事業づくりの延長線上にあることだと思います。そのため、実は仕事の場ではUXデザインという言葉をあえて使わないようにしています。

 

これまでビジネスモデルやソリューションを中心としていたものづくりが、どんどん“ユーザー中心・人間中心”に変わってきています。その環境にあわせて「顧客視点から考える」など、当たり前のことをちゃんとやることを大事にしています。

 

――“ユーザー中心・人間中心”の考え方を金子先生はどのように活用されているのでしょうか?

 

金子:例えばスタートアップの場合は「どうプレゼンすれば出資者の心をつかめるのだろうか」と考えることもUXデザインのひとつだと考えています。相手の立場に立って徹底的に考えるということですね。

 

提案を通すためにプレゼン資料をつくったり、トークスクリプトを作ったりする際に、どのようにストーリーテリングすれば伝わるだろうかということを、UXデザインの考え方を活かして検討しています。

 

ほかには、受託案件をいただいた際、なぜお客さまが自分たちを頼ってくれたのかを考えるために使ったりもしています。

 


一般ビジネスパーソンがUXデザイン思考を生かせる事例

――UXデザインの考え方を一般のビジネスパーソンが生かせる事例はありますか?

 

金子:例えばパワポの資料作成で“自分たちの思いをどれだけドラマチックに伝えられるか”を左右するのは、相手のことを考え抜くことからはじまる適切なストーリーテリングです。

 

スティーブ・ジョブズのプレゼンが人の心を動かすのも、どのようなストーリーで訴求すれば響くのかが考え抜かれているからではないでしょうか。

 

一枚目のスライドで何を伝えるかについて考えてみましょう。 プレゼン相手が自分たちの商品について詳しく知らない一般の方々であれば、興味を引き付けるようなキャッチーな内容が望ましい。一方、検討段階のリード顧客であれば、他社に対する強みを真っ先に押し出すべきかもしれません。

 

また、投資家が相手のプレゼンでは「本当に計画が実現可能なのか」について訴求することも必要になるでしょう。最初に疑問に思うことを理解し、資料がそれに完璧に応えられているとすれば、それは完璧なUXデザインがなされているからだと思います。

 


なぜUXデザインは重要なのか。プロダクトマネージャーとして働く中で気づいたこと

――金子先生はどのようにしてUXデザイナーというキャリアをスタートされたのでしょうか?

 

金子:UXデザインについては社会人になってから学びました。新卒でヤフーに入社し、デザイナー兼Flasher(デザインをしつつコーディングも担当)としてGYAO!など動画コンテンツ事業の立ち上げに携わりました

 

そこでスタートアップの面白さを知り、サイバーエージェントの新規事業開発部やリブセンスなどのベンチャー企業で働くことになります。プロダクトマネージャーとしてチームをマネジメントするなかで、チームのマネジメントと人間中心的な思考法は切り離せないと気づいたことが、UXデザインを本格的に学ぶようになったきっかけです。

 

――なぜそのような気づきを得たのでしょうか?

 

金子:新規事業のビジネスでうまくいかないことがあって、その原因を探る中で“もはや自分が良いと思うものを作るだけでは結果がついてくる時代ではない”ということを痛感しました。現代のビジネスは、インターネットの発展によってグローバル化した環境下で無数の顧客の「24時間」を奪い合う必要があります。

 

そんなことを考えていた5年ほど前、書籍『リーンスタートアップ』(日経BP)を読み、顧客の課題から事業づくりをはじめるリーンキャンバスの思考法を知ったんです。その考えは“人間中心”という点からはじまる事業づくりです。そして、デザイナーの自分がその考えを突き詰めるならUXデザインだなと思ったんです。

 

――UXデザインの考え方はチームマネジメントにおいてどのように役立ったのでしょうか?

 

金子:メンバーが中心となって、向かうべき方向へ自発的に動くチーム作りに役立ちました。強制して120%の能力を生み出すことはできません。一人ひとりが本当にやる気を抱いていなければ、自律的な共創は生まれないはずですね。

 

例えば、声掛けひとつでチームメンバーの動きは変わります。その際、人間中心に考えることで見えてくるものがあります。相手の言葉をそのまま受け取らず、その先にあるインサイトに思いを巡らせることが重要で、それは相手を知らなければ分かりません。

 

また相手から本音を引き出すための信頼関係(ラポール)形成も重要です。そのために、普段から雑談を増やすなどして意識的に接点を増やすように心がけています。

 


UXデザインのフレームワーク“OODAループ”とリモートワークでの活用法

――UXデザインのフレームワークで先生が普段から活用しているものはありますでしょうか?

 

金子:OODAループ(※)を思考する際のベースにしています。まず顧客やそれを取り巻く状況について深く観察し、行動を決め、試してみて振り返るというループです。顧客の観察からはじまるという点で、UXデザインと通ずるところがありますよね。

 

 

自分の企画ではなく対象となる人間の観察を入り口に考えるのがPDCAサイクルと異なる点です。

 

ニーズが多様化した現代、プラン通りに結果が得られることはほとんどありません。そこでまず相手や状況を観察することからはじめるOODAループは効果的です。これから意思決定方法としてよりポピュラーになるでしょう。

 

※…「Observe(見る)→Orient(わかる)→Decide(決める)→Act(動く)」のループを回す意思決定のフレームワーク。アメリカの軍事戦略家であるジョン・ボイド氏により提唱された。

※画像は、Schooの授業『直観で動くOODAループ思考』入江 仁之先生作成のスライドより引用。

 

――コロナ禍でリモートワークが増えました。そんな状況下でUXデザインの思考法が役立つ場面もあるかと思います。

 

金子:そうですね。コロナの影響で、チャットを通したテキストベースの会話が多くなったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでも人間中心の考え方は重要だと思います。

 

チャットのやり取りできつい言い方をしているように見える人っていますよね。UXデザインの観点から“相手はどう受け取るか”を考えれば、そのような文章を書いてしまう事態は防げるはずです。

 

ちょっとした書き方で相手を委縮させたり真剣みが伝わらなかったりするのがテキストベースのやり取りです。相手の気持ちを探ることを怠って損をしないようにしたいですね。

 


UXデザイナーという仕事はこれからなくなる?

――UXデザイナーという職業は今後どうなると思いますか?

 

金子:(今のままの形という意味では)今後なくなっていく職種なのかなと考えています。UXデザインの考え方は誰しもに必須のものになると思うからです。例えばロジカルシンキングを専門に行うロジカルシンカーという職業の人はいないですよね。

 

UXデザイナーは人間という抽象的な概念から事実を分解するという、見えている事実を積み上げていくロジカルシンキングとある意味逆のアプローチの思考法を扱う仕事だと思います。

 

今はその考え方が広まりつつある過渡期です。将来的には“人間中心に考えること”ものづくりのとなるでしょう。

 

――これからUXデザインについて学ぶ人、マネジメントに悩む人など幅広いビジネスパーソンにお願いします!

 

金子:UXデザインの思考は、新しいモノづくりの現場でも取り入れられはじめているところです。ぜひ今のうちに学びはじめていきましょう!

 


金子先生がご登壇された「UXデザインのはじめ方」は授業はこちらから視聴!

 

授業への参加は会員登録(無料)が必要になります。金子先生に直接質問をすることもできますので、これからUXデザインを学んでみよう・UXデザインに興味があるという方は、ぜひ授業に参加してみてください!

 

文=宮田文机

 

 

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