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2022.05.30

column

全てのビジネスパーソンはデザイナーになる、なぜ今「デザイン力」なのか

全てのビジネスパーソンはデザイナーになる、なぜ今「デザイン力」なのか

ビジネスの現場でも、デザインの重要性が注目される昨今。デザインツールの進化やデザイン思考の普及により、あらゆる職種の人がデザインに関わる場面が増えつつあります。

いわば、「全ての職業にデザイン力」が求められていると言っても過言ではない昨今。「デザインを学びたい」と考える人も多いのではないでしょうか。
そこで、プログラミングスキルとデザイン思考を備えたUI/UXデザイナーであるSchooデザインユニット部門長の井上誠さんに「なぜ今、デザインが重要なのか」について、聞きました。

※Schooでは、6月から「デザインのカードをもとう」をテーマに、現代のビジネスパーソンに必須のスキルとして「デザイン」にまつわる授業群をパワーアップさせていきます。
 

あらゆる企業で、デザインの重要性が叫ばれている理由

──近年、ビジネスの現場でデザインの重要性が高まっているのはなぜでしょうか?

 

井上誠さん:サービスやプロダクトを機能のみで差別化することが難しい時代になったからだと思っています。例えば、スマートフォンひとつとっても、各社大きな差はないですよね。

 

ひと昔前は「機能を作る」方に焦点が当てられていましたが、今は「機能を使う」方、つまり、商品、サービスの見せ方や使い方が重要であり、その「設計」をいかにうまく行うかの時代になっていると言えるのではないでしょうか。

 

デザインの時代と言われ始めて実はすでに10年ほど経っていますが、ようやく日本にも浸透してきている印象です。より一層UXデザインやブランディングの重要性が高まってきていると感じます。

 

私は新卒で入社したDMM.comに在籍していた2013年頃からUXデザインを学び始めましたが、当時は経営陣がUXの重要性を理解していない場合も多く、どうやって経営陣に理解してもらえるかがよく話題になっていました。

 

しかし、ここ5、6年で、潮目が変わったと感じています。逆に経営側から「UXを学んで来てほしい」というミッションを与えられた人たちが学んでいる印象で、その重要性が理解されつつあると実感しています。

 


モノやサービスに「意味を与える仕事」。変わる、デザイナーの役割

──デザインの重要性を理解する企業が増える中で、デザイナーの役割にも変化はあるのでしょうか?

 

「つくる仕事(制作職)」から「企画する仕事(企画職)」に、デザイナーの仕事の質が変わってきていると思います。

 

ひと昔前ではデザイナーといえば、「絵を描く仕事」というイメージが強く、センスが求められていました。しかし近年、専門職としての絵を描く部分がツールによって置き換えられ、必ずしもデザイナーの専売特許ではなくなってきていますよね。

 

例えば写真のレタッチはスマホアプリでカンタンに行えますし、Canvaなどで、カンタンにバナーが作れます。「5分でサイトが作れる」をうたったTVCMなんかもやってますよね。

 

SNSの普及によりビジュアルを通した発信の機会も増加しているため、デザイナーのみのリソースでは足りず、結果ノンデザイナーがデザインを作る場面も増えてきていることも背景にあるのかもしれません。

 

また、UX、サービスデザイン、デザイン思考、デザイン経営など、ビジネスにクリエイティビティを持たせる考え方も増え、企画営業職や、経営者もデザインを学ぶ必要性が出てきています。

 

カメラマンや通訳などの専門職の方も、同じことが言えるかもしれませんが、今はプロとノンプロの境界線が曖昧になってきていますよね。

 

制作職としてのデザインは誰でもできるスキルになってきている中で、デザイナーは企画職としてのデザイン領域に移行していかないと、これからの時代を生き抜いていくには難しい時代と言えるのではないでしょうか。

 

──井上さんが考える「デザインの価値」とは?

 

モノやサービスに「意味を与える」。それが、デザインの価値だと考えています。

 

機能がコモディティ化し、デザインの時代になっている今。商品、サービス、ひいてはブランドに対する「意味付け」のクリエイティビティが求められていて、今後ますますデザインニーズは高まっていくかと。

 

例えば、「Appleの企業姿勢に共感したからiPhoneを買う」など、ある商品を手に取ったり、使ってみたり、そこに愛着を感じたり。ほとんど機能に差がなくなってきている中でその商品を選んだということは、何かしらの意味を感じているはずです。

 

そういったブランドらしさや意味付けを、デザインやコピー、UXに織り込んで、落とし込んでいく作業がデザインの価値であり、仕事だと思っています。

 

──では具体的に、デザインはどんな役割を果たしているのでしょうか?

 

2つの役割があると思っています。

 

1つ目は「ユーザーの期待値に添う意味」を与えること。これはUXやUIの役割で、データや行動調査などで、ユーザーニーズを的確に捉え、よりよい体験になるようプロダクトを最適化していきます。サービス改善や、ユーザーニーズが明確な新規サービスに向いた方法です。デザイナーはユーザー課題を分析/理解しそれを解消するデザインを企画し実装まで伴走していきます。

 

2つ目は「これまでとは全く異なる意味」を与え、これまでの価値観をガラッと変えることです。これはサービスデザインの役割でイノベーションとも呼ばれる領域ですね。 ユーザーニーズが明確にあるわけではないので、いかに自分たちのバイアスを取り払い、この世にないアイデアを発想できるかの勝負です。

 

イノベーティブなサービス開発だけでなく、明確なニーズがない新機能などもこの対象になります。

 

デザイナーはステークホルダーを巻き込み、ワークショップや、議論の可視化を通して共創を促していきます。 デザイナーが一人で企画するわけではなく、舵取りの役目を担います。

 

必ずしもこれらは二者択一ではなく、同一プロダクトの中でもバランスをとることが重要です。

 

 


経営者、営業職、企画職...。ノンデザイナーがデザインを学ぶ意義とは?

──これからデザインを学び始めたいと考えている方が、学ぶべきことは何でしょうか?

 

2つあると思っています。

 

1つ目が「デザインの制作スキル」。2つ目が企画の思考法としての「企画のデザイン」だと考えています。

 

まず、「デザインの制作スキル」について。

 

SNSなどでの発信機会やプレゼンの場が増えている中、あれもこれもとデザイナーに制作を依頼するのは難しいですよね。ある程度自分で作れる方がいい。そういった意味で、ノンデザイナーも、デザインの制作スキルを身につけるべきだと考えています。

 

ノンデザイナーの方は本業がメインですので、人に効果的に伝える基礎を学びつつ、実制作はツールやテンプレートを活用して行うイメージですね。

 

「企画のデザイン」については、「デザイン思考」 を学ぶことでUXやサービスデザインの基礎を身につける事ができます。

 

絵を描く要素がないため、学びのハードルは低いかも知れませんね。意味付けにクリエイティビティが求められている今の時代、デザイン思考を学ばない理由はないですよね。

 

──これからデザインを学び始めたいと考えている方が、学ぶべきことは何でしょうか?

 

「デザインの制作スキル」に関しては、基礎やツールの使い方を学ぶことに加え、自分がイケてる!と思う、デザインをトレースするのがオススメです。

 

「企画のデザイン」についても、プロセスについて学ぶことに加え、全く異なるものの「共通点」を探すトレーニングをオススメします。

 

デザイン思考では、具体的なデータを抽象化して解釈したり、似ている事象をグルーピングしたりと、共通化と抽象化のスキルが必須になります。 知識としてプロセスを学んでも、ここでつまづく人を多く見てきました。

 

家でぼーっとしているときに目に飛び込んできたもので考えてみてください。例えば、時計とお菓子が目に入ってきたとして、その共通点を探します。

 

すると「お菓子は3時に食べるもの」「時計は3時を差している」ことに気が付けば、お菓子と時計の共通点は「時間のバロメーター」では?などと考えられるわけです。

 

トレーニングを重ねることで瞬時に物事の共通項を見つけ抽象化することができるようになります。

 

また、デザインを学ぶ際に、まずは本を読むという選択肢もあると思います。ですが、本を読むだけでは、デザインは上手くなりません。デザインは、ケースバイケースであり、本の通りにいかないことがほとんどだからです。

 

しかし、インプットの量が少ないと良いアウトプットも生まれません。本でインプットしたことを実践してどんどんアウトプットしていく。その反復作業を行っていくことが大切かと思います。

 

 


「デザインスクー」で学べること

──6月からスタートする、「デザインスクー」ではどんなことが学べますか?

 

ここまでお話してきた「デザインの制作スキル」と「企画のデザイン」です。「デザインの制作スキル」については、デザインツールの使い方だけでなく、デザインの基礎的な考え方や、見せ方のテクニックを一流の講師陣から学べます。

 

「企画のデザイン」については、デザイン思考やUXだけでなくデザイン経営など、ビジネスにデザインの力をインストールする方法が学べます。

 

また、昨今のビジネスの現場では、デザインを理解する企画者と、企画を理解するデザイナーの双方が必要だと考えていて。「企画のデザイン」を学ぶことでビジネス職とデザイナーの間に共通言語を持てます。事業の成長という共通目標に向かって、コラボレーションできるようになります。

 

僕の周りにもSchooで学んでデザイナーになった人たちがいます。普段デザイナーの面接をしていてもSchooで勉強してましたという人は多いですね。

 

答えがなく、「ケースバイケース」が多いデザインを学ぶにあたっては、先生から一方的に学ぶのではなく、受講生代表や他受講者の質疑応答の中で、ケースバイケースが学べるSchooの授業スタイルは非常に有効です。本では書いてある以上のことは学べませんよね。

 

意味づけが重要な時代において、様々な職種同士で、ビジネスを共創していくことが求められています。デザインスキルは共創文化を作っていくのに最適なスキルです。

 

まずはSchooで学んでいただく方の中から、デザインを理解した人々を増やしていきたいと思っています。

 

 

【プロフィール】

井上誠(いのうえ・まこと)

2005年、DMM.com入社。各種サービスのUX改善やUI制作だけでなく、 デザイン組織の立ち上げなどマネジメントとしても活動。 2020年、Schooに入社し、デザイン部門責任者に。井上氏率いるデザインユニットが「モチベーションアワード2022」を受賞。

Schooでは、デザインのプロフェッショナルたちが語る生放送イベントを実施します。

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