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2021.08.26

column

ホームレス事情に、生活保護制度……。複雑化していく、現代日本が抱える問題とは

ホームレス事情に、生活保護制度……。複雑化していく、現代日本が抱える問題とは

日本国憲法第25条で定められた「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するために制定、1950年に改正された“生活保護制度”。

昨今は新型コロナウイルスの影響により、失業者が増加し、本制度に対する関心が高まりつつあります。SNSでもこの生活保護に対してさまざまな考えが述べられており、近年注目のワードとなっています。

今回の「田中秀臣の最新経済ニュース-2021年8月号 第1回-」では、そんな生活保護制度や現代のホームレス事情について触れられました。講師を務めるのは、経済学者の田中秀臣先生。

雇用も経済も先が読めない不透明な時代へと変化を続ける今。だからこそ、生活保護制度について事前に学びを深めておくべきと言えるでしょう。本制度についてまったく知らない人でも、田中先生の授業を受ければ、学びへの第一歩が踏み出せるはず。ここでは、そんな授業の一部をご紹介します。

目次

  • 現代日本のホームレス事情
  • 日本のホームレス問題は複雑化しつつある?
  • 生活保護制度の基本を解説
  • 田中先生が考える生活保護制度、1番の問題点は?

 

 

現代日本のホームレス事情

まず授業内で触れられたのは、日本のホームレス事情についてでした。一般的にホームレスという言葉から連想されるのは「住所がなく公園や河川敷で暮らしている」「働いていない」「年々人数が増えている」といったイメージがほとんどでしょう。

 

しかし先生曰く、ホームレスの実情は、働いている人の方が多いとのこと。ただ、その働きに見合う賃金が得られず、所得が低水準のため住む場所が確保できないそうです。また人数についても「年々減少傾向にある」と先生は語ります。

 

 

では、ホームレスの人数はどれくらい減少しているのでしょう。先生の調査によると、2021年の東京都のホームレスの人数は約860人。

 

2020年度と比べると約30人減少しており、ホームレスの増加が社会問題化されていた2003年度と比べると、約5,000人減少しているそうです。全国規模でも、2021年度は2020年度と比べて4.2%減少しているとのこと。

 

一体、その要因は何なのでしょう?先生が挙げたのは、以下の2つでした。

 

・自立支援政策(一時的な住居・求職支援)によってホームレスに助け舟が出始めた

・アベノミクスによる雇用情勢の改善で、ホームレスも就業しやすくなった

 


日本のホームレス問題は複雑化しつつある?

一方で、日本のホームレス事情にある2つの問題についても触れます。先生は「これらの問題は、いまの日本のホームレス問題を複雑化させつつある」と語ります。

 

まず挙げられたのは“長引くコロナ禍による雇用状態の不透明化”でした。現にコロナ禍の経済悪化によって、改善されつつあった雇用状態が今後どうなるかわからなくなってきています。先生も「新型コロナウイルスの影響が長引くほど、雇用情勢はどんどん見えなくなるでしょう」とのこと。

 

続いて挙げられたのは、ホームレスの高齢化。先生は「これは見過ごせない問題」と語気を強めます。理由は、ホームレスが高齢になるほど就業・求職意欲が減退するため。また、高齢化にともなう病気の罹患率上昇も就業意欲減退に拍車をかける恐れがあり、見過ごせないとのこと。

 

 

どちらも簡単には解決できそうにない問題。だからこそ、状況に応じた明確な対応策が必要になるのかもしれません。

 

 

生活保護制度の基本を解説

続いてのテーマは「生活保護制度」です。先生がまず触れたのは、生活保護対象者の基準について。一般的に以下のような状態の方が対象になると語ります。

 

・不動産、自動車、預貯金などのうち、ただちに活用できる資産がない

・就労できない、又は就労していても必要な生活費を得られない

・年金、手当等の社会保障給付の活用をしても必要な生活費を得られない

※これに加えて、各自治体が定める細かい規定をクリアする必要あり

 

続いて、触れられたのは各世帯に支払われる生活保護費の算出方法について。基本的には各自治体が定めた最低生活費が大きな基盤になるとのこと。

 

「基本的には、各自治体で定められた“最低生活費”というのがあるんですよ。そこから自身の収入となるもの(年金、児童扶養手当など)を引いて、不足分があれば生活扶助費として払う仕組みになっているんです」

 

 

また、扶助される項目は他にも数多くあり、必要に応じて合算されて支払われます。

 

上のスライドに載っているのは、給付される扶助の種類。これを見ると衣・食・住にかかるお金を給付する「生活扶助」の他に、「住宅扶助」や「医療扶助」といった扶助があります。もし生活保護を受ける人に、これらの項目に該当する支払いが生じた場合、必要に応じて扶助として支給されるのです。

 


田中先生が考える生活保護制度、1番の問題点は?

生活保護制度の話題がSNSやメディアで取り上げられると、よく見かけるのが「外国人の生活保護受給を廃止しよう」や「不正受給をもっと是正すべき」といった問題提議です。きっと生活保護制度の問題は何かと考えたとき、これらを思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。

 

田中先生も上記の問題に対して触れており、以下のようなスライドを用います。

 

 

先生がまず語ったのは「生活保護制度の問題を考える上で、外国人受給者や不正受給の問題も大事だけど最重要ではない」ということでした。

 

理由としては、外国人の生活保護受給世帯数が平成23年を境に頭打ちになっていること。また不正受給者の人数も2016年を境に年々減少しつつあるためだそうです。ちなみに外国人受給者が減ったのは、景気が良くなり、外国人も生活保護を受けずに生活が送れるようになっているからとのこと。

 

では先生が考える、生活保護制度における1番の問題点は何なのでしょうか。授業内では、受講生から「確かに納得」や「現代の日本だからこそ挙げられる問題点だ」といった共感の声が多数寄せられます。どのような点が問題なのか、気になる方はぜひ受講してみてください。きっと生活保護制度の見方がより多角的になるはずです。

 

ここまでは、授業内容のほんの一部にすぎません。他にも、受講生からの「ベーシックインカムと生活保護はどっちがいい?」に対する詳しい回答や、メンタリストDaiGoさんの発言問題について、第二のセーフティネット、新型コロナウイルス・デルタ株の拡大に関する話など語られる内容は盛りだくさん。ぜひこちらも併せて視聴してみましょう。

 

文=トヤカン

 

今回取り上げたSchooの授業はこちら!
『田中秀臣の最新経済ニュース』(2021年8月号 第1回)―メンタリストDaiGo氏の発言、デルタ株感染拡大、ワクチン接種問題を考える―

 

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